映画評「テイク・ディス・ワルツ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年カナダ映画 監督サラ・ポーリー
ネタバレあり

少し大仰に言えば、長編劇映画監督デビュー作「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」で端倪すべからざる才能を示した女優サラ・ポーリーの第二作。見かけ以上の純文学でぐっと奥深い人間観照作品である。

女性ライター、ミシェル・ウィリアムズが飛行機の中で男性ルーク・カービーと知り合って意気投合するが、何と彼が隣組と判明した為心穏やかならぬものを覚える。結婚五年目に入った料理家の夫セス・ローゲンとはふざけ合って一見うまく行っているように見えるが、彼が子供を作ろうとせず、深刻な会話も避けるので心のすれ違いは深刻になっている。合間を見て設けるカービーとの逢瀬は小学生のようなデートの繰り返しで、優しい夫への思いからその先には進めない。が、ある朝溜めた思いは決壊し、ローゲンの許しを得て、彼の待つダムへと向かう。

僅か数十年前まで日本にも姦通罪があって浮気もとい不倫(不貞ですな)を働くと罰せられた。死罪であった時代もある。時代こそ違え、姦通に関する意識の推移は欧米も同じで、重い罰を受けた。ホーソーンが17世紀北米を舞台に描いた名作「緋文字(ひもんじ)」は姦通をテーマにした代表的な小説であるが、本作冒頭でヒロインは姦通への罰則を見せるショーに無理矢理参加させられる。この時二人は初めて遇いまみえているわけで、実に意味深長な冒頭であることがこの後解る仕組み。

本作にはこのような布石・伏線・暗示・繰り返しがたくさんあって、中盤遊園地の回転系乗り物にカービーと乗った彼女が、彼と結ばれた後、幕切れでは同じ乗り物に一人で乗っているのもその一つ。これは彼女がまた別の男性を求めていることの暗示である。
 正に現代的女性の権化のようになっていくわけだが、その一方で、彼女は、色情狂的に男性を求めているのではなく、(或いは潜在的に)より良い子孫を残そうとする原始的欲動により動いているだけであることに気付く必要がある。姪を可愛がる様子から言っても、夫が子供を作ろうとしないことが彼女をして彼から別離せしめた、と言っても過言ではなさそうで、実際には潜在意識どころかそれが最大のトリッガーであったことは否定し切れない。シャワー、プール、ダム、小用といった水に拘る場面が多いのは出産⇒羊水に絡むイメージだろうか? 

夫の料理がチキンばかりであることに、アルコール中毒の義姉サラ・シルヴァーマンが子供のペットとしてヒヨコを携えてくる終盤のエピソードが皮肉っぽく共鳴するといった仕掛けもある。

が、彼女が夫に彼への懸想を切り出してから、(上述した)アル中が再発してヒヨコを持ってくる義姉が酔った勢いで彼女を「自分と同類だ」となじるに至るシークエンスは少々シーンの繋ぎがぎこちなく、一人合点になっている印象を禁じえない。全体的に策士策に溺れた感が強く、デビュー作のほうを買う。

女優としても見たい サラ・ポーリー(上毛かるた風)

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年10月06日 18:21
これは未見で・・・・ちょっと疲れそうだな~で見なかったのですが、やっぱり見ておくべきだったかな?
と記事を読んで思いましたです。(^^ゞ
オカピー
2013年10月06日 21:00
ねこのひげさん、こんにちは。

疲れるかもしれません^^;
悪い作品ではないと思いますが、敢えてお薦め致しかねます(笑)

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