映画評「桐島、部活やめるってよ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・吉田大八
ネタバレあり

去年直木賞受賞作家になった朝井リョウのデビュー小説を吉田大八が映画化。1970年代以降の文学は余り読まないので当然原作は知らないが、最近我が国で妙に流行っている連作短編小説再構築映画(?)のグループに入れられそうだ。

ある高校で、桐島というバレー部主将が突然部活を辞めたという噂と共に音信不通になる。この“事件”により、彼と仲の良い野球部の幽霊部員・菊池(東出昌大)以下の男子数名、バレー部員、彼の恋人の沙奈(松本茉優)が動揺、それが取り巻きたるバドミントン部のかすみ(橋本愛)以下の女子数名に伝道し、そうしたグループには関係のない映画部の前田(神木隆之介)やブラス部部長の亜矢(大後寿々花)まで巻き込んでいく。

と、ストーリーを書いても、僕の文才では、うまくこの映画の感じを伝えられない。

それはさておき、まず、この作品の最大の特徴は、桐島と言われる高校のカリスマ生徒が一切姿を見せないことである。こればベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を彷彿とし、一種の不条理劇を構成する。桐島をマクガフィンという人もあるが、姿を見せない狂言回しと言った方が近いように思われる。

もう一つの特徴は、同じ場面を違う者の視点から別に描く「羅生門」手法の構成を取っていること。あるいは同作手法のヴァリエーションであると僕がずっと言っているタランティーノの「パルプ・フィクション」的であり、映画部の前田君がタランティーノに言及する箇所などにより、パルプフィクションならぬメタフィクションの要素も内包している。
 ただ、お話が部活動による階層意識の中で自分の居場所を手探りに探す高校生の多様な生態を描いているだけに、僕はストレートに展開した方が逆に新鮮に思えたような気がしている。あたかも20年前「櫻の園」を観た時のように。もう「パルプ・フィクション」手法は手垢がついていて逆効果ではないだろうか。

従って技法的には世評ほど買えないが、一部否定派から放たれる「普通のことしか描いていないからつまらない」とは映画ファンと思えない発言でがっかり。映画鑑賞において大事なのは“映画的に”面白く出来ているかどうかを判断することであって、素材そのものに評価を下すことではあるまい。

映画愛好会に入ろうとしたけど結局帰宅部に決めた我が高校時代。進学率100%の男子普通高だったから、本作が描いているようなことには縁がなかった。学力差という一目瞭然の階層はあったものの、ヒエラルキーと言えるほどのものではなかったと思う。僕らの多くは過去の自分がライバルだった。生涯を通じて校舎の屋上に上がったこともないなあ。

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この記事へのコメント

vivajiji
2013年08月17日 13:02
>素材そのものに評価を下すことではあるまい。

はい。センセ~
よ~くわかってはおります。
わかってはおりますが~もじもじ。(- -)
これはどうも選択の錯誤拙記事持参です。;

>過去の自分がライバルだった。

その通り!!
時系列いじくり手法なんぞ
どうってことないと思いましたし
本作のように何気な~く日々楽しめて
見える彼らの若さとノーテンキさ、
ああ過ごせなかったあの時期の自分に
腹立たしくもあり、やはりこういう邦画は
苦手。まず先に勉学ありき、と考える私・・
ああ~このように自らに引き寄せて観ては
真の映画ファンではないですね~
はい、ごめんなさい。(^ ^);
オカピー
2013年08月17日 21:41
vivajijiさん、連日のトラコメ有難うございます。

とんでもないです。
姐さんはきちんとダメな理由、嫌いな理由を述べているのではないですか。
若い人みたいな表現で言いますと、説得力ありまくりですよ^^
僕が想定したのは、映画がそもそも人間を描くものだ、
という認識すらない輩です。

>時系列
時代遅れの感すらあり。ちょっと白けました。
余りに色々な作品がトライしすぎて、もう賞味期限が過ぎたと思います。

>勉学ありき
僕らの学校には女性は事務員と図書館司書しかいなかったので、学校ではひたすら勉強。休み時間も、体育で校庭や体育館に移動する時の会話も殆ど勉強の話でした。それが楽しかったんですよね。
男女共学にも憧れましたが、当時の群馬県(の公立普通高校)では無理でした。今でもわが母校は男子校ですが。
ねこのひげ
2013年08月18日 04:40
先月、取引先の人と待ち合わせした場所が、男女共学の高校の正門のそばで、車の中から通学してくる男女の生徒を見ていたら、手をつないでくるのが何組もいました。
周りの生徒は気にしている風もなかったですね。
我々の時代なら、からかいの対象になったでしょうけど・・・・
うらやましいような・・・・ある意味つまらないような・・・・
帰宅部という部が本当にあるそうですよ。
オカピー
2013年08月18日 20:42
ねこのひげさん、こんにちは。

学生時代の恋なんていうのは、こっそりやるから良いのであって、余り露骨にできるのは味気ないと思いますねえ^^

>帰宅部
何をするんでしょう?

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