映画評「プロメテウス」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり

先月何にも知らず「エイリアン」(1979年)を観たのは何かの啓示だったのだろうか。今月こうして前日譚を見るのは不思議な気がする。ギリシャ神話によれば、プロメテウスは人類に火を授けた神様。人を作ったという言い方をされることもある。パンドラの箱も彼に由来する。本作を観て行くと、宇宙船の名前から付けられたこのタイトルが実に意味深長なのが判る。

21世紀末、世界各地で人が空を指差す古代壁画が発見される。人類学者ノオミ・ラパスとローガン・マーシャル=グリーンは、それを地球外生命体の招待状と理解し、巨大企業ウェイランドの出資による宇宙探査船で彼らのいる地球に似た惑星を目指す。
 4年後人工冬眠から目覚めた彼らは、他の科学者と共に探索に出、“ピラミッド”の中に入って招待者たる“エンジニア”をミイラ化した状態で発見、地質学者ら二人が馬鹿らしいと先に帰った直後に嵐が起こり一行はやっと探査船に帰着するが、先に出たはずの二人は結局中に籠って蛇のような生命体に襲われ、マーシャル=グリーンも謎の感染症を発症して企画統括者シャーリーズ・セロンに焼殺されてしまう。やがてノオミは憶えのない妊娠を告げられ、自動手術機により割腹して中の生命体を取り出して殺す。
 ウェイランド社の老社長が実は探査船に乗っていて、その目的も判明、生存していた“エンジニア”一人が思わぬ行動に出て地球の人々は修羅場を迎える。

というお話の構成自体は「エイリアン」をもじっているが、前日譚故に同作の単純明快さは求められず、散漫である感は否めないものの、とんでもない説が発明されていて、世評(勿論、世評を知ってから観たのではなく、観た後世評を調べた)より楽しめた。その説とは、一言で言えば、宇宙人が地球人に叡智を授けたという説よりさらに一歩進めて、大胆にも、地球の生命を作ったのは宇宙人であるというものである。自分の姿に似せて人類を生み出したというキリスト教的解釈を取るならば、宇宙人=神ということになる。さすがに宇宙人=神はためらわれたか、宇宙人も神により作られたという言が述べられているが、とにかく、進化論よりキリスト教の立場に近い着想と理解できる。

この地球人型惑星人が大量破壊兵器(生物兵器=俗にエイリアンと言われる生物)に滅ぼされたという設定には我々の社会への皮肉も感じられるし、人間の不死への欲をまじえたり、随分欲をかいている作劇だなあと苦笑も洩れるが、散漫さにも拘らず興味を喚起する目的は十分果たしている。所謂突込みどころは、上手く転ぶと、楽しみをもたらす。
 その代り、よく解らないことが多々あるのも事実。本作でも「エイリアン」でもエイリアンの子供が人間から出てくると親と全く違う形になるのは遺伝子をすぐに取り込む性質でも持っているからであろうか? 幼生と成体との差と思うにはどうも無理がある。

プロローグは観ている時点では全く意味不明ながら、最後まで観ると理解できる。僕は録画したものよりプロローグだけ見直して解った次第だが、映像記憶の優れた方なら観返さなくてもピンと来るだろう。

いずれにせよ、お話に不満のある向きも、映像には満足できる可能性大でござる。監督だから最終責任を負わされるのは仕方がないにしても、このお話を考えたのは別の人物二人なのだから、お話だけをもってしてスコット御大についてどうのこうの言うのは早計だろう。ご老体にはもっと優しくしてやってよ。

35000年前の洞窟壁画は先日「世界最古の洞窟壁画」で観たショーヴェ洞窟がモデルみたいだねえ。

この記事へのコメント

vivajiji
2013年08月10日 13:43
酷暑お見舞い申し上げます。
当地はザンザン雨降りちょこっと
現在只今室温28℃なり。
分けてあげたいくらいの涼しさ。^^

劇場でも観ましたしWOWOWでも鑑賞。
世論に反して(笑)、迫力の映像も含め
私にはけっこう楽しめましたがね~

オカピー
2013年08月10日 22:13
vivajijiさん、有難うございます(どう返事したものか迷った挙句)。

昨日と今日、日中は38℃近辺でうろちょろ。
明日も暑いらしいです。
最近は慣れて、湿気の少ない時の32℃は涼しく感じられるくらいですよ。
我が家は多少山地にありますので、夜になると街よりは大分良いんですが、それでも暑いですねえ。

というわけで、涼しさ、分けてください(笑)

>世論
何だか色々と突っ込まれていますけど、当方も、変なところは変なりに楽しめました^^
ねこのひげ
2013年08月13日 03:07
期待が大きかっただけに辛口の評価が増えたんでしょうね。
ねこのひげもそうですが・・・・(^^ゞ
リアル感に関しては、凄まじいものがありましたけどね。
三部作の予定だそうですから、さてどうなるか?と期待しております。
オカピー
2013年08月13日 22:29
ねこのひげさん、こんにちは。

確かにお話には色々問題が多いのですが、僕にはそのでたらめさが楽しめる映画でしたよん。

>三部作
脚本家は変えた方が良いかもしれませんなあ^^

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