映画評「メランコリア」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年デンマーク=スウェーデン=フランス=ドイツ合作映画 監督ラース・フォン・トリアー
ネタバレあり

6月に入って憂鬱になりそうな映画ばかり続いている。その名も「メランコリア(憂鬱)」という本作で留めを刺された感あり。カンヌ映画祭の季節なものだからWOWOWさんもカンヌ受賞作特集を先月からやっているのだが、大体ここ20年くらいカンヌで誉められる映画にはやりきれない作品が多すぎる。先日やっと心療内科を卒業したもののまだ薬を服用している僕には精神衛生上誠にヨロシクない。ただ、有難いことに、映画的に手応えのある作品が多いので、かなり相殺されている。

本作はラース・フォン・トリアーの例の如く奇妙な作品でありまして、鬱病にかかっている監督がその精神状態を表現しようと作り上げたらしく、正に憂鬱な若しくは厭世的な気分に満ちた作品になっている。

第一部はトリアーが中心となって始めたドグマ95の名を世に知らしめた「セレブレーション」(1998年)を思い出させないでもない結婚披露宴で起こるゴタゴタを、新婦キルステン・ダンストの鬱病らしい無軌道な行動を中心に描き、集まった人々も愛想をつかして上司ステラン・スカルスゴードも結婚したばかりの夫アレクサンダー・スカルスゴードも会場となったシャルロット・ゲンスブールとキーファー・サザーランドの姉夫婦の屋敷を後にしてしまう。父親ジョン・ハートも例外ではない、という一幕。

これだけならいかにもドグマ95らしいリアリズム描写でそれほど問題ではないが、やはり問題は姉の名前を冠した第二部に入ってからである。

突然現れた浮遊惑星メランコリアが地球に衝突するか否かという不安を、キルステン、姉夫婦とその息子(キャメロン・スパー)の反応だけで描き、終末論的映画が流行的に少なからず作られる中にあって、本作はパニック劇の様相を避けた。監督の関心は寧ろ個の不安を描くことであって、人々が恐怖や不安を伝播させていくことにはないことがこれにより理解できる。

しかも、第一部の殆どがちょっとした狂騒であるとしたら第二部は正に沈鬱であり、まるで躁鬱病の対照を観るが如し。トリアーは自分の憂鬱を映像にして他人に見せる壮大な贅沢を敢行、幕切れで地球を消滅させてしまう辺り相当病んでいて、観客を同病相憐れむ仲にしたいのではないかと思えてくる。
 というのは半分冗談であるが、数本の枝だけで作られた奇妙なシェルターに先に自殺した夫君を除く三人が坐り、奥に次第に近づき大きくなって来る惑星を捉える様子は得も言われぬ美しさがあり圧巻である。

幕切れの二人の主演女優の演技も見応え十分。キルステンが不美人であるという日本での定評はどうも理解できない。寧ろ(名前から推して)ドイツ系若しくはその近隣民族系らしい貴族的な雰囲気のある美人で、僕は非アメリカ人的な美を持っている貴重な女優であると思っている。

トリアー氏にあっては、憂鬱が映画を撮るモチヴェーションになっているようだ。

テイク・シェルター」と二本立てで行こう。by 名画座支配人

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