映画評「今日、キミに会えたら」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ドレイク・ドレマス
ネタバレあり

またやってしまった。日本劇場未公開とな。観たからには書かざるを得ないので書くが・・・などという書き出しに反して、昨今の日本公開恋愛映画の水準より余程魅力的な恋愛映画である。

アメリカの大学に留学した英国美人フェリシティ・ジョーンズが卒業前に同級生のアントン・イェルチンと意気投合して滞在を勝手に延長したが為に、後でひどい目に遭う。逢いたくていても立ってもいられないのに、不法滞在の過去がたたって彼女の米国再入国が不可能になってしまうのだ。
 互いのキャリアが順調に進むある日、遂に結婚をすることで解決するかに見えたこの問題は思わぬ座礁を見る。入国制限解除と結婚ビザ発給は部署が違う云々かんぬん・・・保育園と幼稚園の違いのように縦割り行政なのでござる。一般庶民からすると理不尽な、こういう行政は日本だけではなかったのねえ。
 イライラした二人は結局自国で別々の生活を送り、互いの同僚と懇ろになる。やがて制限が解除されて彼女は順調に出世していた雑誌編集の仕事を辞めて渡米する。

東京時代に見た「コンペティション」(1980年)というクラシック音楽をモチーフにした恋愛映画があり、ハッピーエンドであるという僕に対し高校時代からの映画友達のYK君は「そうじゃなかろう」と反論。映画評論家の故・南俊子女史もハッピーエンドと言っていたから僕の意見が正しいと思うが、本作の幕切れが同じような感じである。
 仕事を放り出して渡米したからには完全に和解した筈なのだが、一緒にシャワーを浴びる二人の表情が苦り切っている、不和時代に生れた気持ちのすれ違いは本当に解消されているのだろうか・・・という余韻を残して終わるのである。

設定だけ与えた即興演出ということだが、かなり上手く行っている。台詞を少なめにしたのが功を奏したようで、一部で評価の高い日本の諏訪敦彦監督作品などより素直に見ていられる。

撮影に使ったデジタル一眼レフカメラは、固定カメラで早回しによる時間経過を表現するシーンで効果を発揮しているが、その他ドレイク・ドレマスなる監督による本作はシチュエーションに応じて時間経過をそれとは別の色々な手法で表現していて若々しい。前述の例は二人の“寂しさ”を表現する時間経過であるが、別の例としては彼女の結婚を知らぬ同僚から彼女がプロポーズされた後に起きる顛末を(同じ構図のシーンの)フェイドアウトの畳み掛けで表現、強い印象を残す。

配役陣では、日本映画にも出たことのあるイェルチンのふわふわしたエキセントリックな魅力も捨てがたいが、フェリシティ・ジョーンズは英国女優らしい清潔な感じが良い。

一眼レフカメラで映画が作れる時代になったとは、デジタル恐るべし。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年05月09日 02:12
言葉で全部説明しては意味ないじゃん!・・・というのが最近の日本映画のようで。
表情やしぐさ・・・光景で語ってこその映画のようでありますけどね。

もうビデオはいらんな~と思われるくらい優秀でありますよ。
オカピー
2013年05月09日 17:24
ねこのひげさん、こんにちは。

>最近の日本映画
やはりTV局が中心となって映画を作っているからでしょう。
何年か前にある大学の教授が、最近の学生の中にはあれほど親切に言葉で説明してくれるTVドラマの筋さえ追えないのがいると、嘆いていらっしゃいましたよ。

>もうビデオはいらんな~
自社のデジタル・カメラで撮影した素材をCMに使っていますね。
画質的にはHDビデオとどこか違うんじゃいという感じです。

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