映画評「ファミリー・ツリー」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督アレクサンダー・ペイン
ネタバレあり

妙に評判が良くて日本版リメイクまで出来てしまった「サイドウェイ」の脚本・監督を担当したアレクサンダー・ペインの7年ぶりの長編たる本作は、新味という点で少々不満を覚えた「サイドウェイ」より総合的に上手く行っている。こちらも絶対的新味があるわけではないが、扱いの良さでぐっと好感を覚える。

舞台はハワイ、ハワイ人の血が少々混じっている弁護士ジョージ・クルーニーが、モーターボート事故で妻パトリシア・ヘイスティが昏睡状態に陥るという憂き目に遭い、10歳の次女アマラ・ミラーや寮制私立高校に通わせている長女シャイリーン・ウッドリーとの接し方に当惑する。仕事にかまけ妻に全て任せて来た付けが顕在化したわけで、加えて舅からは妻にお金を使わせなかったことが事件の遠因であると批判されてほとほと困惑の体。
 しかし、医師から見込みがないと言われて悲しんでばかりもいられない。百数十年に渡って一族に任され信託期間が残り7年となった広大な土地をどう処理するかという一族代表兼弁護士としての責任も果たす必要がある。一族郎党の為には売るのが一番だが、開発されて景観が壊されても良いのかというハワイに生まれ暮す者の義務感も底流にないわけではない。
 そんな折長女が反逆の形で母親の浮気を告げる。大いに精神的に混乱を来たした彼は娘の記憶から遂に相手の男を探し当て「病院に逢いに来てくれ」と告げるが、本音かどうか。クルーニーによりぐうの音が出ないほどへこまされた男の代わりにその細君メアリー・バードソングが訪れ、怒りながらも反論も出来ない浮気相手を許す。そして、妻が死んだ後クルーニーは遂に土地を売らない決意をする。

ペインの脚本・監督作品らしく神妙になり過ぎないのが良い。
 次女は姉の真似をしてちょっと突っぱねたり悪い言葉を使ったりするが、基本は可愛らしい。長女は反抗期らしく序盤のうちは手のつけられない感じで、しかもいかにも頭の悪そうなボーイフレンド(ニック・クラウス)を連れて来る。最初は非常に感じの悪い今時の若者である彼が徐々に一族の間の緩衝材的存在になって来る辺りが人物の配置では特に上手い。

作者が作劇において重心としたのが伝統である。今の家族があるのは先祖がいたからである。その先祖が守ってきた土地をハワイの(人々の)為に大事にしようと彼が最後に下す判断は伝統のある家族とその未来を大事にしようという思いに通底するように設計されている。

細かいところでは、婿に何かと厳しい注文を付ける舅が病室で見せる娘への愛情をガラス越しに見せるショットと、残った家族三人が妻に掛けていたハワイアン・キルトに一緒にくるまるラスト・シーンの味わいが抜群。

といった次第で、非常に辛いお話を辛気臭くせず、心温まるお話に仕立てたのが殊勲と言うべし。

最近は家族=ツリーという公式が出来つつあるようで・・・。原題を直訳すると“子孫”となる。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年05月06日 19:43
ジョージ・クルーニーはとぼけた味わいのある俳優で好きですね。
アメリカは家族をあつかった作品が多いですが、現実には離婚が多く、家族崩壊しているケースの方が多いですね。
映画としては上出来ですね。
オカピー
2013年05月06日 21:48
ねこのひげさん、こんにちは。

>ジョージ・クルーニー
「素晴らしき日」という映画が秀作で、初めて印象を残した作品と思いますが、出演作品の選択もなかなか面白いですね。
監督としても有望と思いますので、益々期待しております。
主演をする映画俳優たちも自分より年下が多くなりました^^;

>家族をあつかった作品
多いですね。
統計は取っておりませんが、9・11を受けて余計増えたと思います。

>上出来
作為的なところが少しあるのが、却って良い結果を生んでいる気がしました。

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