映画評「ボディ・ダブル」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1984年アメリカ映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり

デビュー当時からヒッチコッキアンであることが解るブライアン・デ・パルマ監督であったが、「殺しのドレス」(1980年)で「サイコ」(1960年)にオマージュを捧げた後本作で本格的にその思いを集大成して見せた。

同棲相手の浮気を知って家を飛び出したB級映画俳優のクレイグ・ワッスンが家を空ける間だけグレッグ・ヘンリーから面白い造形の豪邸をただで貸して貰えることになり、去り際に望遠鏡で美人のお隣さんの色っぽい踊りを見る楽しみを教えて貰う。彼女に夢中になって追いかけるうちに彼女が自分とは別の何者かに追われていることに気付き、やがてそれは彼女が自宅で殺されるという事件に発展する。

お話しの始まりは「裏窓」(1954年)だが、骨組みは主人公がある女性を別の女性に仕立てる「めまい」(1958年)をリバースしたもので、余り言いすぎると未鑑賞の人が興醒めしてしまうのでアウトラインに関するところはこの辺りで止めておきましょう。
 勿論主人公が閉所恐怖症で肝心なところで役に立たないのは「めまい」のジェームズ・スチュワートの高所恐怖症から戴いたもので、抱擁シーンや車での追跡シーンも同作のテクニックを踏襲している。

ボディダブルとは、有名俳優の代わりに後ろ姿や体の一部を披露(時には代役)する無名俳優のお仕事で、有名女優のヌードにはかつてこの手法が多用された模様。「殺しのドレス」でアンジー・ディキンスンの裸が見事と話題になったが、後年あれは別の女性のボディダブルと分ってがっかりさせられたわけで、本作の幕切れでデ・パルマが同作でやったことを見事に再現している。

その他「舞台恐怖症」という単語を出したり、「」「マーニー」の主演女優ティッピ・ヘドレンの娘メラニー・グリフィスを準主演に起用したのもオマージュの一つに数えてよいだろう。

WOWOWで解説している入江悠監督と俳優・斎藤巧はこの時代の映画を担当するには若すぎて無理があり、デビュー当時からデ・パルマを知っている僕らと齟齬感がある。デ・パルマは決してA級大作の監督ではなかったのだよ。僕などは、寧ろ「スカ―フェース」(1983年)や「アンタッチャブル」(1987年)を作った時遂に大物監督になりたくなったんだねと少々失望した口である。

映画館で見逃したので高い金を出してレーザーディスクを買ったが、今では重いだけの無用の長物。アナログ・レコードなら売れるだろうけど。

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この記事へのコメント

2013年04月04日 13:23
私もデ・パルマは大作向きではないと思います。
この「ボディ・ダブル」ですが、小林信彦がなんだこれは!とコラムで怒っていましたが、デ・パルマらしい映画ですよね。ちょっとファン向けに自分の趣味を出し過ぎているようなところがあるので、しらける人が出るのも仕方がないのかもしれません。
「ブラック・ダリア」もファン向けでしたね。セルフパロディを楽しんでいるようだった。
ドラゴン
2013年04月04日 18:15
おひさしぶりです。

新社会人として、右も左もわからない状況です笑

デ・パルマに限らないですが、やはりリアルタイムで、知っているか知らないかでは、捉え方が変わってきますよね。僕は昔の映画で好きな作品が多いので、そこらへんの問題についても考えることあります。


僕もデ・パルマ作品は好きなのですが、大作然としてない作品のほうにお気に入りが多いですね。
個人的には『愛のメモリー』が一番気に入ってますが、『ボディ・ダブル』にもデ・パルマらしさを感じますし、Frankie Goes To Hollywoodの曲が好きなので、印象に残っています。
オカピー
2013年04月04日 20:27
nesskoさん、こんにちは。

趣味出しまくりですねえ(笑)
大作に走った「アンタッチャブル」でも「戦艦ポチョムキン」から拝借していましたから、そういう部分を本質的に持っている映画作家なんですね。

その意味ではタランティーノに近い映画観を持つ人なんでしょう。そう考えると、タランティーノがA級指向に走らないのは立派と言えば立派。しかし、B級趣味のくせに彼の映画はどうしてああも長いのだろう(笑)。
オカピー
2013年04月04日 21:30
ドラゴンさん、お久しぶりです。

遂に社会人になられましたか。おめでとうございます。
最初のうちはわけが解らないもので、苦労しますよTT

ドラゴンさんは、双葉さんの著書をご愛読ということもあって、平成世代としては驚異的に昔の映画のことを知識としてだけでなく、感覚的に解っているような印象を受け、感心しております。なかなかそうは行かないものです。

>『愛のメモリー』
これもヒッチコック趣味が出ていて面白かったですね。
詳細は忘れましたけど(爆)
僕は「殺しのドレス」をもう一度見たいと思っています。
もっとマニアックなところでは「オペラ座の怪人」のロック版「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」がお気に入り。
ねこのひげ
2013年04月05日 01:58
『殺しのドレス』は劇場で見ました。パンフレットのカバーが良かった。
ヒチコックが好きだとは知らなかったので・・・マネじぁん!と思っていたら、デ・パルマがヒチコックのファンと聞いて納得しました。
2013年04月05日 12:31
私は「ミッドナイトクロス」がもう一度観たいです。
後味はよくない映画でしたが、トラボルタがまだ若くて顔がすっきりしててほんとうにきれいだったし。

「愛のメモリー」はラストのぐるぐる回るところをまた観たいな。ビジョルドは芝居がうまいなとも思ったのを覚えている。
「殺しのドレス」は美術館のシーン、地下鉄のおっかけ、あれだけでも見る価値がありますよね。エレベータでの殺人場面もうまかった。
オカピー
2013年04月05日 16:44
ねこのひげさん、こんにちは。

>『殺しのドレス』
僕も映画館で観ました。
当時アメリカの監督ではトップクラスの関心を持っていましたので。

ヒッチコッキアンは多いですが、デ・パルマは非常に解りやすいし、ヒッチコック的な意味での腕が良いと思います。
 「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミは、「シャレード」のリメイクなどを見ますと些かがっかり。「羊」は原作の強さだったらしい。
論外なのはダリオ・アルジェント。熱烈なファンが多くいらっしゃいますが、ヒッチコック的には全然いけません(笑)。
オカピー
2013年04月05日 16:46
nesskoさん、こんにちは。

「ミッドナイトクロス」はハイビジョン保存済み。
これだけはいつでも見られます^^)v
この作品ではスイス製の目が飛び出るほど高価な小型テープデッキが印象に残っています。
トラボルタも確かに若くてすっきり。

「ボディ・ダブル」と「ミッドナイトクロス」を持っているところをみると、WOWOWさんは「殺しのドレス」と「愛のメモリー」も持っているかも?
2014年02月27日 23:16
「めまい」を観てから時間が経っていないうちに見たので、なるほど、ここは似ている…などと良く分かりました。
去年デ・パルマは「パッション」で、ちょっとまた少し彼らしいサスペンス映画を見せてくれました。今後も期待できるかなあと多少思っています。
オカピー
2014年02月28日 17:38
ボーさん、こんにちは。

「めまい」の封印が解かれた1984年に作られたとも偶然ではないのでしょう。「裏窓」「めまい」「知りすぎていた男」「ハリーの災難」は初回封切後ヒッチコックが封印したので、デ・パルマだってそれ以前には観ていなかったでしょうからねえ。
ヒッチコックより大分安っぽいのがデ・パルマの面白さでしょうか。

>「パッション」
例によって消極的にWOWOWに出るまで待っていますから、年内に観られれば良いかな。「ブラック・ダリア」は何故か出るまでに時間がかかりましたから、少し心配。

zebra
2014年05月06日 08:18
昔 ガキンチョだった頃 日曜洋画劇場でテレビで放送してたのを おぼろげながら見てた憶えてます。 なつかし~いまだ あの頃 チ〇毛が 生えてなかった小学生だった・・・・

>望遠鏡で美人のお隣さんの色っぽい踊りを見る楽しみを教えて貰う。
 今は ゴールデンの時間帯に テレビで放送できないでしょうが 昔は そんなのお構いなしで放送してましたね。 ボクは 子供ながらに ニタニタしながら見てました

 大声でいいたいです。 ”そりゃあ あんなセクシーなダンスを窓からしてたら のぞきたくなるって!!!!”    だから 今現在 ボクは スケベオヤジになったと実感してます(笑い)

 メラニーのケツはキレイでした  デパルマ恐るべし!!!
そういえば デパルマは クエンティンタランティーノも尊敬してると述べてた監督でした。
オカピー
2014年05月06日 21:10
zebraさん、こんにちは。

もろのエロよりこういう感じに見せてもらえると、却って萌えますね。
僕はもう社会人だったけど、あのお尻は良いと思いました^^
しかし、小学生でこれを見たらいかんですなあ(笑)
僕が小学生の頃放映された映画は、ヘイズ・コードが幅を利かせていた頃の作品ばかりですから、裸は基本的にありませんでした。

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    Excerpt: デ・パルマ的「めまい」「裏窓」ミックス!? Weblog: 或る日の出来事 racked: 2014-02-27 23:07