映画評「メリエスの素晴らしき映画魔術」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年フランス映画 監督セルジュ・ブロンベール、エリック・ランジュ
ネタバレあり

ヒューゴの不思議な発明」で取り上げられたせいか、映画マニア向けとは言え、こんな地味な作品が日本で正式に劇場公開されたとは正にジョルジュ・メリエスのマジックなり。

前半は「ヒューゴ」でベン・キングズリー扮する老メリエスが語る回想とほぼ同じ彼の半生が語られる。その中で彼の貴重な作品が幾つか紹介されるのが有難い。例えば、一人の人が次々と分身して七人の演奏家が生ずる「一人オーケストラ」が圧巻の面白さ。多重露出を活用した原始的ながら画期的なSFXである。しかもかなり映像状態が良い。
 これより20年ほど後にバスター・キートンが作った「即席百人芸(キートンの百面相)」(1921年)で一人百役(実際の数は不明。オーケストラの指揮者、演奏者、観客の全てを一人で演じた)に度肝を抜かれたが、20年の歳月を考えれば、出来て当たり前だったのである。

カメラを止めて同じ背景を使って別のところから再開するトリック撮影も偶然発見されたものらしい。
 尤もこのタイプのSFXは、メリエスより前1895年イギリスのアルフレッド・クラークが「スコットランド女王メアリーの処刑」における斬首場面に用いている。これが世界最初のSFXとも言われているが、メリエスの場合は人や物が別の物に変わるといったマジック的趣向に応用されている。

後半は、メリエスを必死にパクって儲けていたスペイン人監督セグンド・デ・チョモンを調査していた人物から取り寄せた「月世界旅行」幻のカラー版の復元模様に割かれる。
 溶着したフィルムを破損しないようにはがしていくところから始まり、特殊な機械を使って一枚一枚デジタル・コピーした上で破損した部分を程度の良い幾つかのモノクロフィルムにより補い、VFXで色付けしていく。こうして完成したのが先ほど映画評でUPした「月世界旅行」カラー版である。

何もないところから作り出す場合より、こうして傷んだフィルムを再現する時VFXの有難味を大いに感じる。観ているうちに涙が出て来た自分はつくづく映画馬鹿であると我ながら呆れた次第。

SFX(特殊撮影)は基本的にカメラを通す技術。VFXはカメラを通さない技術。その差が解っていない人が多いから、よく覚えておいてくださいね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年03月07日 01:37
前記事に書いたコメントはこちらに書いたほうがよかったですね(^^ゞ

古い絵画を修復するのを見たことがありますが、それと同じでフィルムの復元も大変なようで・・・
DVDやカードに繰り返し保存していくしかないんですかね。
うちでも戦前の古いフィルムが丸まったりパリパリになって出てきたことがありますがね。
オカピー
2013年03月07日 21:30
ねこのひげさん、こんにちは。

そのようですね^^

>DVD
今のデジタル撮影映画は基本的にDVD(恐らくデータで入っているのでしょう。普通のDVDの画質なら目も当てられませんから)に収められているようですが、DVDの寿命はほぼ20年なので、その都度やらなくてはいけない為、消えていく映画が増えていくのではないか、と新聞に書いてありました。
フィルムは保管状態にもよりますが、500年くらいは持つそうです。

フィルムも戦前主に使われていたセルロイド製は直ぐに燃焼したので、残っていない作品が少なくありません。
欧米の名作群の大半が残っているのに比べると、映画会社も社会も意識の低かった日本では歴史的作品が殆ど残っていないんですよね。残念。

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