映画評「ツレがうつになりまして。」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・佐々部清
ネタバレあり

「半落ち」「チルソクの夏」と続けて観た頃佐々部清は、山田洋次の後継者たる資質のある監督であるような気がしたが、その後些か伸び悩んでいる感がありながらも、柔らかくい語り口で見やすい映画を作るという傾向はずっと評価している。

本作について述べる前に、僕の個人的事情を少し話したいと思う。2011年4月に母親が死んだ後父親の症状が一時危なくなった時税法上些かまずいことを知らないうちにして莫大な税金(資産の半分くらいを占める)を払う羽目になる可能性があることに気付いた僕は突然不安から心臓が踊り出し、税務署と掛け合って大目に見て貰ったのであるが、却ってその後それが“罠ではないか”と映画を見過ぎていたツケが出て心配になって血圧が急上昇して倒れた。家族が安心させようとしても逆効果で、数ヶ月後遂に心療内科に通い始めた。それが続いて一時鬱病にもなりそうになったが、これはぎりぎり回避できた。現在は大分落ち着き、来月末を最後にクリニックから離れられそうなところまで来ている。
 僕の症状は、原作者の女性漫画家・細川貂々(ほそかわてんてん)の夫君が掛かった鬱病とは違うが、共通する部分が多い故に納得して観られ、それを加味すれば★一つ余分に進呈したい出来と思う。

外資系パソコン・メーカーに勤めている堺雅人が、しつこい中年クレーマーに対応しているうちに鬱病になり、奥方の漫画家・宮崎あおいに“会社を辞めないと離婚する”と脅迫されて会社を辞め、自宅で療養するが、全てに自信を失い自殺寸前にまで追い込まれる。メジャー漫画家ではないあおい夫人は、連載が打ち切られても最初から諦め顔であったが、生活する為に同じ社の実務系書籍のイラストの仕事を引き受け、同時に“ツレ”と呼称する夫君の闘病生活を自分の視点から語るノンフィクションを書くと大きな反響を呼び、時間の経過と共に状態の良くなった彼は遂に講演の舞台に立つまでになる。

主人公夫婦はこの病気に触れて“頑張らない”をモットーとするようになる。僕が発病して暫くして“自然体でいる”ことにした経緯と大変似ている。2時間強という上映時間は決して短くないのに雑誌社での経緯など些か調子良く進みすぎる嫌いは否めないものの、人間をやっているのも悪くないなと思えて来る内容が僕のような半病人には誠にありがたい。しかし、あおい夫人即ちハルさんは天真爛漫な良い奥方だねえ。

映画的には、素直なタッチでそこはかとなくユーモラスに進む展開が快く、クラシックを使った音楽とシークエンスごとにフェイドアウトを使う演出も余韻を醸し出す。佐々部監督の良い部分が多く出た佳作。

催眠効果があると聞いて、僕も毎日牛乳を飲むようになりました。

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この記事へのコメント

vivajiji
2013年03月18日 11:53
原作(マンガ)本、読みました拙記事
持参しました。もう4年近く前だったことに
あらためて驚いております~

私の回りにいるこの系おビョウキの方々を
見るにつけ思うのは
「過去を引きずりながら生きている方々」
「過去の暮らしが豊かで恵まれていた方々」に
けっこう発症しているような気が・・・
つまり私から言わせると「物持ちおよろしい方々」^^

なってしまったものは仕方がな~い、の気持ち優先、
物持ちいい方々はおつきあい方面も持続性高い
でしょうから長めスパンで対処するのが得策かと。

ほんに天真爛漫この奥様の域までは到達できませんが
ぶっちぶっちバッサバッサと、見苦しい過去なんぞ
切り捨てて今がある当方でも、血管詰まった頃は
さすがに2週間ほどココロざわめき泡立ちましたね~
肉親の死と自らの罹患は最大のストレスですもの。
しかし振り返れば、“いい勉強させてもらった”
そんな気もしています。

題材はウツでしたが、優しい風がずーっと
吹いているかのような夫婦愛映画でしたね。(^ ^)
オカピー
2013年03月18日 20:23
vivajijiさん、ご丁寧なコメント有難うございます<(_ _)>

>「過去を引きずりながら生きている方々」
>「過去の暮らしが豊かで恵まれていた方々」
僕もその口です。豊かというのは金銭的なことではないですが、人間関係的には大分恵まれていたような。
そこに加えて、生真面目で几帳面で小心者で、B型です(笑)。
B型はともかく、生真面目で小心者というのが我がノイローゼ(先生は病名は言ってくれませんでしたが、多分そんなものでしょう)の土台でございました。

昨今は大分良いのですが、まだ目が覚めた時に心臓が掴まれるような、血管が細くなるのが解る瞬間がありましてね、完全に治るのは時間がかかりそうです。

距離が3倍くらいありますが、昨年秋口から町の図書館に行き始めて読みたい本がごまんとあるのが嬉しくて、精神状態が一気に良くなったようです。しかも、図書館にない本はよその図書館から借りてくれるらしいので、“読めない本がない”と言っても良いほど。

>夫婦愛映画
イエース!
精神病という暗くなりがちな素材を扱いながら、巧く処理してすがすがしい作品でしたね。
ねこのひげ
2013年03月19日 02:34
ウツというのは生真面目で責任感の強い方が生るようで・・・・
親のことなど知ったこちゃあないと、放り出しているような連中はならないようですがね。

能天気で欲のないのが一番なようで・・・・

宮崎あおいは、よい演技をします。
オカピー
2013年03月19日 21:14
ねこのひげさん、こんにちは。

生真面目で小心者というのは最悪な組合せ。恐怖に震える日々が続きましたが、鬱より良いのは、“死にたい”という気持ちにはならなかったこと。
鬱寸前というのは二回ほどありましたが、運良くそれは免れることができました。
親の為にやろうとしたことか、まさか税法的に問題があるとは・・・理不尽とはいまでも思っていますけど、それを悪用する人がいるからやむを得ないのでしょうけど。

宮崎あおいは、子役と言える時代から評価していたので現在の活躍は嬉しいですね。益々良い女優になりました。似通った役が多くなったのが少々心配。

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