映画評「おとなのけんか」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年フランス=ドイツ=ポーランド=スペイン合作映画 監督ロマン・ポランスキー
ネタバレあり

ロマン・ポランスキーの新作は80分にも満たない、題名通りの大人の口論を描いた小品である。

弁護士クリストフ・ヴァルツとケイト・ウィンスレットの息子がジョン・C・ライリーとジョディー・フォスターの息子を負傷させた為、被害者側の家で示談書を取り交わす。子供の喧嘩の示談が無事に終わったのに、子供同士の対応について意見の相違が生じて、いつの間にか大げんかになってしまう。

最初は夫婦同士の対立から始まり、今度は男女の人生観における対立となったり、トピックごとに組合せが変っていき、最後は自己主張に終わる。
 要は、人間特に色々な経験と知識を詰め込んだ大人は誠に自分勝手な生き物である、と都会人種の虚偽性を浮き彫りにするお話で、その触媒の役目を果たすのが仕事故にヴァルツの許にしきりにかかってくる携帯電話であり、場面転換に使われるのが飲食物という具合。酒を飲んだ後男性陣が半ば意気投合してしまうなんてのはその典型である。

こうした小道具の使い方が舞台劇の映画化らしくてニヤニヤさせられてしまうが、何と言っても強烈なのは喧嘩の元になった子供二人は公園で和解が出来上がっていて、“おとなのけんか”のトピックの一つになる捨てられたハムスター君もしっかり生きているというおとぼけの幕切れで、大向こうを唸らせる。

原作はフランスの女流劇作家ヤスミナ・レザの戯曲。恐らく女史はエドワード・オルビーの「バージニア・ウルフなんか怖くない」を意識して書いたのだろう。あの作品も都会人種の偽善性・虚偽性がテーマだったが、あちらの悲劇性に対してこちらはドタバタ寸前の喜劇である。

映画版に関しては「バージニア・ウルフ」(1966年)のマイク・ニコルズが様々な映画の特性を利用することで舞台劇的緊張感を増幅させようとしたのに比べると、ポランスキーはおとぼけ感を出す為に舞台劇らしさを敢えて残そうとしたらしく、比較的控え目な映画演出ぶり。時代も違い、「バージニア・ウルフ」と単純に比べてはいけないんでしょうな。

四人の演技陣は実力通り。

ところで、小奇麗な部屋にさりげなく置かれているオーディオ機器がなかなか良さそう。スピーカーが小さいので僕みたいにロック、ジャズ、クラシックを大音量で聴くには向かないが、ギターをフィーチャーしたフュージョン辺りをそこそこの音量で聴くには良い音を出しそうな機器が揃っていた。

レザさん、忙しすぎると皆さんから心配されております(笑)。

この記事へのコメント

vivajiji
2013年02月24日 15:36
こんにちは~

私の身長は優に超えまるで雪の回廊を歩くが如くの
札幌の今。
大した映画来なくて寒気団ばっか来ます。^^;

元来がこういう大人のけんか丁々発止もの、実に
好物(笑)なこともございますが、演出のリズム感
抜群のポランスキー氏ですからね、当初の予想たがわず
たいへん楽しませていただきました。
「ゴーストライター」もそうでしたが本作も
思わず手を打ちたくなるようなあのラストっ!!

ちなみに
けんかをさせてみるとその人がわかる。
仲直りの仕方で、もっと、その人がわかる・・・
賢者はうまいこと言いますなぁ~(笑)
オカピー
2013年02月24日 20:40
vivajijiさん、こんにちは。

>寒気団
巧い! 寒気団ならぬ、座布団一枚!
こちらも寒気団の影響ありまして、今日の午後9時にはマイナス4度の予定。一気に北緯が5度くらい上がった感じです。
しかし、わが一家、石油は一年に18ℓしか買わないのであります。兄一家は一週間で同じくらい使います。金銭感覚が全然違うのです。

最近は映画より本の方が面白い。
姐さんが全く興味を持たないであろう古い書物ばかりですが、新しい図書館に通い始めて今まで読めなかった垂涎の名作に感激しておりますよ。しかも、その図書館にない場合県立や他の図書館から借りることもできるようで、読めない本が殆どない感じで、嬉しくてたまりせん^^/

本作は一見して姐さん好みですよねぇ。
ポランスキーの呼吸は確かに良いですから、コミカルな味わいを殺さず楽しめましたね。

>賢者
どなたですか?(笑)
ねこのひげ
2013年02月25日 03:35
ジョディー・フォースターがこういう役をやるようになったか?という感慨が少女のころから見ているこちらとしてはわいてきますな~
それだけこちらがジジィになったということで・・・・・(^^ゞ
オカピー
2013年02月25日 19:45
ねこのひげさん、こんにちは。

>ジョディー・フォスター
僕が最初に観たのは「トム・ソーヤーの冒険」ですね。
普通の人は「タクシードライバー」で初めて見たと仰るでしょうが、僕は違うんですねえ。その時から知っていたのが偉いでしょ、えっへん(笑)。
「タクシードライバー」の三年前で、ほんの11歳。
調べてみたら「カンザスシティの爆弾娘」というつまらん映画にも出ていました。こちらは観たけれど全く記憶がなく、多分ヒロイン、ラクェル・ウェルチの娘役でしょう。
ねこのひげ
2013年02月26日 05:04
ねこのひげは『ダウンタウン物語』で、ファンになりました。
ロリコンじゃあないけどね。
いや~っ!不気味なくらいに妖艶でありました。
オカピー
2013年02月26日 21:31
ねこのひげさん、こんにちは。

>「ダウンタウン物語」
子供によるギャング映画でした。
監督をしたアラン・パーカーの才人ぶりが発揮された佳作で、ジョディー・フォスターの演技力が「タクシードライバー」以上に発揮された作品でしょう。

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