映画評「ミラノ、愛に生きる」

☆☆★(5点/10点満点中)
2009年イタリア映画 監督ルカ・グァダニーノ
ネタバレあり

若い頃イタリア製の廉価官能映画を結構観たものだ。ゴールデン・グローブや英国アカデミーの外国語映画賞にノミネートされた本作は、見かけは豪奢でエロ狙いでないにしても内容は意外に空疎で大差ないのではないか。

ミラノの伝統ある企業の長男ピッポ・デルボーノに嫁いだ後帰国したこともないロシア人女性ティルダ・スウィントンが、夫と共に経営の後継者に選ばれた息子フラヴィオ・パレンティの友人であるシェフ、エドアルド・ガブリエリーニの料理に脱帽したのをきっかけに、彼を思うようになって遂には男女の仲になる。母を深く愛している息子はパーティーの席で母親しか知らない料理をガブリエリーニが出したことから二人の関係に気付き、母ともめた時に頭を打って死んでしまう。それでも彼女は葬儀の後若い恋人の許に走る。

引退を決めた現社長が後継者を指名する為に一族が集まる場面が勿体ぶって相当の尺を割いているので群像劇的になっていくのかと思いきや、殆どティルダの一人舞台になっていく。
 このエピソードの全体におけるバランスの悪さも気になるが、彼女の心理、相手となるガブリエリーニの心理、息子の心理が尽く解らないので、お話は空転するばかり。
 似たようなところから始まるイタリア映画「あしたのパスタはアルデンテ」を観ていたこともあり、息子の悩ましげな風情は友人への同性愛のせいではなかろうかと思っていたが、全くの勘違いで母に対する何らかの思いであったようだ。こちらの頭の悪さもさることながら、匠気が先に出て一人合点としか言いようのない作り方に主因があると言わざるを得ない。

家政婦が彼女の意を汲んで服の用意をする終幕の場面にしても以心伝心なのか、事前に話し合いでもあったか解らない描写に推移、これでは家政婦の涙もこちらに伝わって来ない。ティルダ・スウィントンの好演も空しく終わる。

豪華な装置・衣裳に絡めてルキノ・ヴィスコンティと比較する向きについては実際どうかと思うが、作者は多分にヴィスコンティを意識しているようで、長男の名前タンクレディは「山猫」(1963年)でアラン・ドロンが扮した貴族青年の名前と同じ。こちらのタンクレディと違って「山猫」のタンクレディは彼に期待する伯父を裏切り新興のブルジョワと手を組み、革命軍に身を投ずるのである。

「チャタレイ夫人の恋人」のヴァリエーションじゃね。

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この記事へのコメント

vivajiji
2013年02月18日 13:36
こんにちは。

"あやしいな、コレは~"と、一応観てみましたら、
作り手だけ納得してて観ているほうモヤモヤのモヤ~
やたら雰囲気だけこさえて、中身は、パサラ~~
T・スウィントンでも出てなければ、これは~(- -)

>匠気が先に出て一人合点としか言いようのない・・

まさに、御意でございます。
オカピー
2013年02月18日 20:54
vivajijiさん、こんにちは。

「ほんまに有名賞の作品賞候補だったのかいな」という印象しか持てませんでしたね^^;

ティルダ・スウィントンの演技以外に見どころありませんでしたなあ。
ねこのひげ
2013年02月19日 07:02
イタリア映画は、日本人の感覚にあっていると思うのですが・・・・これはちょっとですね。

『世界にひとつのプレイブック』という映画が評判で、主役のブラッドリー・パーカーが来日しているのですが、来日挨拶の時、黒木メイサが花束を持ってでたら「美しい人だ!」と大喜びしていたのですが、いまめざましテレビを観ていたら、インタビューに黒木メイサが出てきてインタビューをしていました。
普通は、軽部アナウンサーあたりなんですがね。
ブラッドリー・パーカーが、満面の笑みで、目が輝いてましたよ(笑)
これほどあからさまにわかる人は久しぶりに見ました。
一目惚れしたなヽ(^o^)丿
オカピー
2013年02月19日 22:24
ねこのひげさん、こんにちは。

日本に輸入されるイタリア映画は、庶民か上流階級かどちらかという感じで、中間層を描く作品が少ないですが、これは上流階級組で、描き足らずというか、ピンと来ない作品でしたねえ。

>ブラッドリー・パーカー
ブラッドリー・クーパーですね。
例の長いタイトルの下ネタ喜劇シリーズですっかりブレイクしましたなあ。
素直な性格なんでしょう^^
黒木メイサは外国人のようで、日本的な美しさもあるので、外国人にはたまらんのではないですか。
2013年02月20日 02:49
パーカー→クーパー
また打ち間違えてしまいました。(^^ゞ
オカピー
2013年02月20日 20:54
ねこのひげさん、こんにちは。

コメントなら一向に良いですが、僕なんか本文でひどい間違いを結構やっておりましてね、蒼井優をよく知らない時に別の女優の名前で紹介したことがあり、ひどく叱られました^^;
「てにをは」については、ないほうが珍しいくらい(笑)。

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