映画評「リアル・スティール」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ショーン・レヴィ
ネタバレあり

監督をしたショーン・レヴィはファミリー映画御用達の職業監督だから観る前に内容の予想がつくようなつかないような感じである。原作がリチャード・マシスンと聞けばベテラン映画ファンなら期待するだろうが、ふたを開けてみれば、マシスンの原作はアルフレッド・ヒッチコックが「」(1963年)でデュ・モーリアの小説のちょっとしたアイデアを戴いた程度のものと推察される。

2020年という近未来が舞台で、元は有望なプロボクサーだったが、時代の変遷と共に人間の格闘技が廃れると同時に人間としても落ちぶれ、人間の代わりに闘うロボットの操縦士になった中年男ヒュー・ジャックマンが、別れた妻の急死を受けて、残された息子ダコタ・ゴヨ君の親権を妻の姉妹ホープ・デーヴィスの夫婦に譲渡する代わりに大金を得て中古のロボットを買い、夫婦の休暇旅行の間形だけ息子の面倒を見つつ試合に臨むが、機械に強そうな息子の予想通り見事にロボットを廃棄に追い込んでしまう。
 が、少年が廃棄場で偶然発見した旧型を掘り起こして見ると見事に動き、しかも人の動きを読み取る特殊機能がある為、ATOMと記されたこのロボットを土台に今まで壊したロボットの良い部分を併せて完成させてみると、彼らが思った以上に強力なロボットになっていることが後々判って来る。

というお話はなーんということはない。ダメになったボクサーの親子愛は「チャンプ」(1979年)から、無名のボクサーが最強ボクサーに果敢に挑戦するのは「ロッキー」(1976年)から拝借して合体させ、ロボットにロッキーの代わりをさせただけである。人間がロボットになったからと言って格別の新味があるわけではなく、実際のボクサーがセコンドの指示通りに動くようにロボットもセコンドの指示通りに動くだけという曲のなさ。

そこを逆手にとって、デジタルVSアナログ若しくはデジタル+アナログの部分をもっと生かした作劇にすればSFとしてぐっと面白くなった筈だが、一般ドラマとしてマシスンのアイデアを広げたらしい、ダン・ギルロイとジェレミー・レヴェンの原案、ジョン・ゲイティンズの脚本は侮れない。「ロッキー」とまさしく同じ展開になる最強相手との戦いなど、定石通りの描写・展開ながら、主人公が人間としての輝きと誇りを取り戻す様子がよく伝わってきて、思いの外じーんとさせられてしまうのである。

採点は抑えたが、それ以上の好印象あり。

試合で言えば、判定勝ちくらいですかな。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年02月17日 06:47
そうですね。
まさに判定勝ちでしょうね。
定石通りで、親子愛と人間としての尊厳を取り戻す。ハリウッド映画の王道ですね。

最近、気が付いたのですが、アメリカンコミックからの映画化が去年で一段落した感じで、今年はひねった作品が出てきてますね。
ハリウッドも新しい道を模索中というところでしょうか?
十瑠
2013年02月17日 11:11
僕のお薦め度も★★なので、評価はまず同じですね。
敵方の鼻っ柱の強そうな女性を見て「あしたのジョー」を思い出したんですが、オカピーさんは世代的にはどうなんでしょ?
オカピー
2013年02月17日 21:57
ねこのひげさん、こんにちは。

「チャンプ」は1930年代に作られたお涙頂戴を70年代に蘇らせたもの。「ロッキー」もニューシネマでがたがたになった伝統的ハリウッド映画を蘇らせたもの。
つまり、どちらもすこぶるクラシック。ロボットもSF的には相当クラシックな扱い。アメリカ映画界も再び原点回帰になろうとしているのかな? 
それはないか^^;

>アメリカンコミック
アメコミの映画化は否定しませんが、余り作られ過ぎると有難味が減るので、数年おきくらいに一度大作が現れるがよろし(笑)。

>新しい道
アメリカ映画界にとって国外では日本が一番の市場だったわけで、日本人に飽きられるのは怖いはずです。
クラシック回帰(但し安易なリメイクはなるべく避けましょう)でも良いから、頑張ってくれなくちゃ。
オカピー
2013年02月17日 22:04
十瑠さん、こんにちは。

大枠としては無難に作っていますが、SF仕立てなのに間違いなく比較する「ロッキー」の上手さに比べると・・・。
映像感覚抜群で呼吸が良いアヴィルドセンとショーン・レヴィの腕前の違いかな。

>「あしたのジョー」
正にTVシリーズを夢中になって観た世代です。
言われてみると、確かに白木葉子なんですが、その時は「チャンプ」と「ロッキー」ばかり頭に浮かんで、出てきませんでしたよ(笑)。

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