一年遅れのベスト10~2012年私的ベスト10発表~

群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2012年私的ベスト10は皆様の2011年にほぼ相当する計算でございます。初鑑賞なら何でも入れてしまうので、時々とんでもなく古い作品も出てきたりしますが、悪しからず。

2012年は6月に父の逝去という事件もありましたが、病院への面会が年の後半なくなった為鑑賞本数は母が亡くなった2011年よりぐっと増えながらもさすがに通常の年よりは20~30本ほど少ない387本(+短編4本)、その代わり例年は50本ほどある再鑑賞が14本と極少でしたので、本稿対象となる初鑑賞作品に関しては373本と例年より寧ろ多くなりました。しかし、その反動で統計を付けて以降初めて平均採点が6点を割り、少々寂しくもある次第。

それでは、参りましょう。

1位・・・プッチーニの愛人
☆☆☆☆★を付けた二作品(以下二本)より☆☆☆☆の本作をトップに据えた理由は、やはり稀にしか見られない映画としての佇まいの見事さによります。全てのショットが有名絵画に劣らぬと言っても過言ではない見事な構図の画面に陶酔、撮影賞も当然本作となりました。ミステリー趣味も交えて、台詞の代わりに殆ど手紙で進行するという構成も鮮やか。今思うと☆☆☆☆★で良かったなあ。

2位・・・ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
アメリカ映画界がやっと9・11被害者家族を直視し始めたと心が動かされました。
 9・11以降家族の一般的再生を描いた作品が急増、近年今度は病気や交通事故で身内を失った個人の再生を描いた作品が多くなったと僕は感じていました。これらは、9・11被害者家族を直接的に描くには時期尚早という思いからオブラートにくるんだり、病気や交通事故に仮託した作品群と思っていたので、事件から10年にして漸く映画界は真の意味でグラウンドゼロに立ったのだ、と。
 映画としては、少年と謎の老間借り人の個性的な性格と二人の行動を描写する部分が秀逸でした。

3位・・・イリュージョニスト
ジャック・タチの未映像化の脚本をアニメ映画化した本作。タチ自身の演出・主演、娘役を二十代のオードリー・へプバーン辺りで実写映画化しても楽しめそうな内容でしたが、タチ本人と言えども、アニメならではの繊細な表現と温かみには敵うまいと思わせる出来。脚色・監督のシルヴァン・ショメはお手柄と言うしかありません。

4位・・・愛する人
才能を感じつつ匠気が勝ち過ぎていると不満を覚えいてたロドリゴ・ガルシアがやっと匠気の殻を突き破ったと僕を唸らせた秀作。平行して三つの挿話が進行する半群像劇でありながら、三つの支流が最終的には親と子の絆という一つの本流になっていく語り口が鮮やか。女優賞は質より量でナタリー・ポートマンにしましたが、本作のナオミ・ワッツも良かった。

5位・・・ウィンターズ・ボーン
トゥルー・グリット」や本邦劇場未公開の秀作「アナザー・プラネット」等“不遇の中で頑張る少女”をヒロインにした作品が何本か観られた2012年において、本作が一番強烈な印象を残しました。保守的な村の中で呆けた母と二人の弟・妹を守る為に色々な掟のある村の大人たちに立ち向かって、生きる知恵を蓄えて行く。“成長していく”といった生易しいものではないことが実物を見れば解ると思います。リメイクでなければ「トゥルー・グリット」に代えても良いのですが。

6位・・・灼熱の魂
かのピエル・パオロ・パゾリーニが「アポロンの地獄」で取り上げたギリシャ悲劇「オイディプス」の現代版とも言うべき力作。二つの時代を交錯させて残酷な運命を明らかにすることで、最終的には争いを止めようとしない人間の愚かさを浮かび上がらせるように設計して誠に鮮やか、かつ、力強い。

7位・・・ヤコブへの手紙
いつもはなるべく同じタイプの作品は選ばないように努めているのですが、2012年度はどうも孤独な人々や孤軍奮闘する人々を描いた作品が多くなってしまいました。
 本作は《孤独タイプ》の典型で、保釈されたものの頼る者とてない重罪犯のヒロインがある意味同じように孤独な神父との関係を通して他者と生きる幸福を感じ取って行く。神父もまた同じであったでしょう。「人間は一人では生きていけない」という当り前のことが心に沁みるシンプルな佳作。

8位・・・メアリー&マックス
これもまた《孤独タイプ》。少女とアスペルガー症候群の中年男性の、世にも不思議な交流を描き出したオーストラリア製のクレイ・アニメ。外国のアニメにありがちなように、造形が日本人には親しみにくいので敬遠された方も多いでしょうが、布石も色々と巧みに敷かれた上質にして感動的な作品。未鑑賞の方は是非ご覧あれ。

9位・・・ゴーストライター
ロマン・ポランスキーの、今の感覚では小手先を弄していないクラシック・ムードで勝負した本格サスペンス。車の世話をしていた中国人をどう見るかによっても評価が変りそうな気がします。映画的ムードと、終盤明らかにされる黒幕と幕切れの怖さを買って、この位置。
 ところで、今回ベスト10に入れた作品の中では本作が一番のエンターテインメントであろうとは思いますが、こういう通向きだけではなく、中学生くらいでも楽しめる作品を入れられなかったのが残念であります。「X-MEN ファースト・ジェネレーション」が唯一その可能性を残した秀作でしたが、アメコミ映画版が氾濫している現状では有難味が減っているような気がして結局選外に致しました。

10位・・・クレアモントホテル
こちらは老夫人が主人公ですが、やはり他人との相互関係の重要性・必要性という点において、「ヤコブへの手紙」と通底・共鳴するものを感じます。英国映画らしく、程良い上品なユーモアを織り込んで、僕がこれから確実に入って行く老境について考えさせられただけでなく、これから数年後、十数年後寂しい時に観ると元気づけられそうな気がしましたなあ。

次点・・・兄とその妹
2012年邦画は不調で、ベスト10入りの可能性が大いにあった「八日目の蝉」は地上波のカット版でしか観ていない(完成版は手に入れましたが未だ時間が取れず)ので、リストから外さざるを得ませんでした。新藤兼人監督の遺作「一枚のハガキ」も強力な洋画群の中に入れるには少々弱く、監督自身への特別賞進呈に留めました。かくして、戦前作られた島津保次郎のこの秀作を次点にすることで、邦画に面目を施すことに致します。


画像


ワースト・・・スピーク
全編POV映画は原点に近ければ近い程退屈であることを示したホラー映画。「スピーク」は“話す”とは関係ないのですが、"Speak to Me"で始まるピンク・フロイドの傑作LP「狂気」同様映画は途中から同作に収められた"On the Run"状態となって行く。いっそのこと「狂気」をBGMにして作り直したら面白くなるのでは?(勿論ジョークであります)


****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・ドゥニ・ヴィルヌーヴ~「灼熱の魂」
男優賞・・・コリン・ファース~「英国王のスピーチ
女優賞・・・ナタリー・ポートマン~「ブラック・スワン」「水曜日のエミリア」「マイティ・ソー」「抱きたいカンケイ」「メタルヘッド」「ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣」(因みに選考理由は質より量)。
脚本賞・・・エリック・ロス~「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
撮影賞・・・ジョヴァンニ・バッティスタ・マッラス~「プッチーニの愛人」
音楽賞・・・ピエール・ヴァン・ドルマル~「ミスター・ノーバディ
特別賞・・・新藤兼人(2012年満100歳にてご逝去。長年の日本映画界への貢献に対して)

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年01月30日 06:40
2013年度も、なかなか侮れない映画がありますよ。
『クラウドアトラス』3時間と長いですが、面白そうです。
『ライフ・オブ・パイ』というのも、CMで盛んにトラを登場させてますが、これも不思議な映画です。
『リンカーン』も不思議な映画で、ゲジスバーグの後、暗殺の前の、奴隷解放に関する論争の映画です。
奴隷解放について真正面から取り上げたのはこの映画が初めてのようです。
お楽しみにヽ(^o^)丿
オカピー
2013年01月30日 21:21
ねこのひげさん、こんにちは。

>2013年度
僕にとっては14年度かな?
2月までの公開なら最近のペースで行くと13年のうちに観られる可能性もありますので、うまくすれば滑り込みも。特に邦画系に早いものが多い。

最初の二つはタイトルからはまるで内容の想像がつきませんが、『リンカーン』はある程度解りますね。

しかし、一生懸命考えたのに、コメントがねこのひげさん一人とは、ここも随分寂しくなったものです。
普段威張ったような文章なので、僕の本質を理解してくれる人以外はどうも怖がってコメントしてくれないのです。好き嫌いの少ない優しいおじさんなんですけどねえ。
いずれにしても、昔のお友達もどうも諸事情でブログを止めたり、コメントを控えるようになったり、そんな感じで、閑古鳥が鳴いております。
ホーホケキョ(これは鶯です^^)。
ねこのひげ
2013年01月31日 06:32
ねこのひげのブログでも、来てくれなくなった人もおりますね。
まあ、わけのわからんコメントや宣伝ははねてますけどね。
覗いていたブログでも、とつぜんやめた人がいます。
子育てが忙しいとか、飽きたから・・・などはいいですけどね。
癌などの病気で亡くなった方もおりますね。
ブログを書いていても時の移ろいを感じますね。
オカピー
2013年01月31日 20:34
ねこのひげさん、こんにちは。

亡くなったと思われる人は二名。一人は“癌で闘病中”と仰っていた僕より一回り以上上の方でしたから多分。もう一人は解りませんが、病気のことに触れていたような気が。
3・11で被害に遭ったのかなあと思われる方も。命だけは無事でありますように。
介護や看病の為に止めざるを得ないと想像される人もいました。

リンクはそのままにしてありますが、現在も続けられている方は片手プラスαくらいです。寂しいなあ。

僕は元気なうちはやめないつもり。
10000稿くらい行くと良いと思います^^
ヨロシクです<(_ _)>
vivajiji
2013年02月01日 14:54

こんにちは~

やはりご病気だったり生業が忙しかったり
さまざまな事情がそれぞれおありなんでしょう。
映画を1本ちゃんと観る、それだけでも
けっこう気力体力いりますしタイミングもね。
連日更新のプロフェッサーにも畏れ入りますが
ねこのひげさんだけだなんて言っちゃそりゃ
贅沢ってなもんですわよ~(^ ^);
毎日お話に来てくださる方がある、それだけで
もうハッピーハッピーじゃありませんか~

ねこのひげさんご紹介のアン・リー新作
「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」、
なかなかビジュアル的にも作劇的にも
素晴らしい映画でしたよ、プロフェッサーも
きっと気に入るかと思います。さてさて
「裏切りのサーカス」、プロフェッサーの
来年度ベストには入るでしょうか、楽しみ~
(好き嫌いのやたら多い、怖いおばさんより)(笑)
オカピー
2013年02月01日 21:42
vivajijiさん、コメント有難うございます。

ねこのひげさんにはご覧になっていらっしゃらない映画にまで、色々とコメントを戴くようになって、誠に有難いと思っております。
面白そうな新作も何気なく紹介されて、およそ一年後「あの時ねこのひげさんが紹介していたけど、どんなもんかなあ」と思って観ることも増えました。

人のことを棚に上げて、僕もよそ様への書き込みが激減しました。両親が相次いで亡くなったことで自由になった部分と代わりにやることになった部分とを相殺すると、代わりにやる部分の方が多いみたいです^^;

>「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」
新作はすぐに観ないので最近は全く不案内なのですが、アン・リーでしたか
こういう時おじさんは「あんりまあ」などと駄洒落を吐くのです^^;
駄洒落はともかく、アンさんなら期待しちゃうなあ。

>「裏切りのサーカス」
タイトルから想像するに面白そうですね。
これ、シュエットさんも話していなかったかなあ。

>好き嫌い
自信のある証拠なのでは?
それに反して、小生は優柔不断なのに違いありません^^;

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