映画評「宇宙人ポール」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年イギリス=アメリカ合作映画 監督グレッグ・モットーラ
ネタバレあり

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」で共同脚本と主演を兼任して刑事パロディー映画を作り上げたサイモン・ペッグがニック・フロストと共同脚本・共同主演でこしらえたエイリアン映画パロディー。出来映えは前述作以上かもしれない。

イギリスの売れないSFコミック作家二人組ペッグとフロストがコミック・イベント会場で楽しんだ後、UFOに関連する名所を巡る旅を続ける最中にエリア51に保管されていると言われる有名なエイリアン(通称グレイ)が突然目の前に現れ、捜索に必死な官憲をまきながら一緒に奇妙な逃避行を続け、遂に仲間を呼び寄せることに成功、地球を去っていく。

という物語は「E・T」(1982年)と「未知との遭遇」(1977年)がベースになっている。スピルバーグがポールと名乗るその宇宙人と会話をして上記作品のアイデアにしたなんてお笑いもあり、声の出演はスピルバーグ本人らしい。
 作者が意図したか否かはともかく、結果的にエイリアンが運転手と帰星(?)する手段を探って旅する児童向けエイリアン・ロード・ムービー「ウィッチマウンテン 地図から消された山」やそのオリジナル「星の国から来た仲間」と似ているところもある。ポールを追っている大物が「エイリアン」のシガーニー・ウィーヴァーという落ちも愉快である。

SF映画とは別に、旅する二人が酒場で保守的な現地の人々に白い目で見られる場面など明らかに「イージー・ライダー」(1969年)から借用したと思われる部分もある。アメリカ資本が入っているとは言え、エイリアン(外国人)たる英国人二人が書いた脚本だけに強烈なアメリカ風刺になっているわけだが、特にキリスト原理主義信者父娘については相当きつい扱いをしている。

ツリー・オブ・ライフ」で書いたように、進化論は必ずしもキリスト教関係者から総すかんを食ったわけではなく、最初からキリスト教重鎮の一部には認められていたのに、困ったことにアメリカの狂信的宗派は進化論を未だに認めていない。
 そうした一人だった娘クリステン・ウィグがポールと接触してその英知を伝えられ、やがてすっかり宗旨替えして行動を共にするようになる。その彼女が狂ったように汚い言葉を連発するようになるのも英国映画としてのアメリカ社会(及びアメリカ映画)への強烈な風刺と理解できる。ポールが下ネタを連発するのもその一環であろう。だから、この映画が繰り出す汚い言葉や下ネタには、アメリカ喜劇で感じる下品さとは違うものを覚え、うんざりさせられない。

しかし、一番重要なのは、映画好きがその思いを空回りさせず、うまく具体的にお話に絡ませて楽しい映画に仕立てたことである。

allcinemaはアメリカ映画としているが、正確にはアメリカ資本の入ったイギリス映画。それだからこそ本作は面白いのだ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年01月16日 06:14
エイリアンを有色人種にすれば、より鮮明になったでしょうがね。
カルフォルニアあたりでは、そうでもないですが、東部や南部などのディープなところに行くと、日本人でも冷たい目で見られますな。
ジャップ!ではなく「ジャパニーズ」とささやかれるだけましですが。ジャップが差別用語と知らないのがいたのにはビックリ!
謝ってました。

大島渚さんが亡くなりまり、シュワちゃんが「I`llBeBack!」と映画界に本格的に戻ってきました。
逝くものあり、帰るものありでありますね。
シュワちゃんの主演映画は『ラストスタンド』というタイトルだそうであります。
引退したFBI捜査官が、田舎で保安官を・・・だそうです。
オカピー
2013年01月16日 20:59
ねこのひげさん、こんにちは。

>有色人種
白人同士であるのはやはり「イージー・ライダー」だからなんでしょうね。
同じ白人でも、ヤンキーやヒッピーは地方に行くともはやエイリアンなんでしょう。

昨日観た「ヤング≒アダルト」で、「“インジャン(インジョンだったかな)ズ”は差別用語だから今は“インディアンズ”だ」と登場人物が言っていました。
日本で“インディアン”を使わせないのは過敏すぎるんじゃないですか?

>大島渚さん
ふーむ、彼は晩年苦労しましたね。
尤もデビュー作も数日に封切中止になって所属する松竹と喧嘩するなど、最初から辛酸を味わった方ですが。

>シュワちゃん
あの言葉が使えるところが彼の面白さですが、もう旬は過ぎてしまったのでは?
ジョン・トラヴォルタ、ミッキー・ロークとか一旦消えかかった俳優が再ブレークするケースも幾つかありますけど。
『ラストスタンド』という映画は、内容は西部劇もどきの現代劇でしょうか?

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