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zoom RSS 映画評「マネーボール」

<<   作成日時 : 2012/11/01 14:59   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ベネット・ミラー
ネタバレあり

本作が公開された2011年にはわがご贔屓・松井秀樹選手も在籍したオークランド・アスレティックスのGM(ジェネラル・マネジャー)ビリー・ビーンが実戦で独自の選手雇用理論の結果を出すまでを描いた実話ものである。野球に絡む映画だから見逃すわけには行かない。

GMというと日本ではロッテの広岡達朗氏くらいしか思い浮かばないが、アメリカではどの球団にもいる。野球においては選手編成の決定権者と言えば当らずとも遠からずであろう。ほぼ経営的側面から選手を選ぶのを仕事とする為、実際に野球をやったことのない方が多い。

本作の主人公ビリー・ビーンはドラフト上位で指名された将来のスーパースター候補だったのに、結局大リーグでは鳴かず飛ばず、アスレティックスで自ら現役終了を宣言してスカウトになり、GMになった人物である。

映画は2001年ヤンキーズとのディヴィジョン(地区)シリーズの敗退からお話は始まる。
 ポストシーズンで後にヤンキーズで松井選手の同僚となるジェースン・ジオンビ、マーク・デーモンら主力が引き抜かれた為チーム編成会議がもめにもめる。選手の動向を探るビーン(ブラッド・ピット)はクリーブランド・インディアンズのオフィスで遭遇した正体不明の若者ピーター・ブランド(ジョナー・ヒル)を助手に引き抜き、彼の意見も参考に野手では抜けた三人の代わりに出塁率の良い選手三人に注目して抜擢するが、ベテラン・スカウトたちやアート・ハウ監督(フィリップ・シーモア・ホフマン)からは実績や負傷を理由に大いに反発を食らう。
 いざシーズンが始まると案の定最下位に低迷し、選手編成の問題云々とマスコミからも叩かれる。が、監督が一塁手に拘っているペーニャを思い切って放出して彼が雇ったハッテバーグ(クリス・プラット)を使わざるを得なくすると奇跡が起こる。あれほど非難されていた選手陣が奮闘して連戦連勝、何とアメリカン・リーグ史上最高の二十連勝を記録して地区優勝を果たすのである。

結局前年同様ディヴィジョン・シリーズで敗退した為リーグ優勝決定シリーズには出られなかった。ビーンはその手腕を買われてボストン・レッドソックスのオーナーから出された1250万ドルという年俸を蹴ってアスレティックスに留まり、今でも優勝のチャンスを狙っている。

ヤンキーズ時代の3分の1のギャラとなった松井を獲ったのも彼だ。松井はもっと出来ると思っていたが、年齢故か、成績が伸びずに放出され、拾ってくれたレイズからも出され、本年途中から浪人の身である。日本ならまだそこそこ出来るかもしれないが、本人にはその気がなさそう。晴やかに引退してほしかったのだが。

“マネーボール”というのはイメージと違って金を使わない野球で、野村監督がやったデータ野球の選手雇用版である。今やどの球団でもデータ重視、物凄い数のデータがある。ESPNのMLB関連ページを開けば何十種類ものデータが出て来る。データの見方に熟知している人ならどの選手が本当にコスト・パフォーマンスの高い選手か解る(それに比べると、わが邦にはまともに選手のデータが観られるサイトが一つもなく、貧弱なこと)。まして各球団のコンピューターには選手ごとの相性などその数十倍のデータがあるはずである。

閑話休題。

野球で失った人生を野球で取り返そうとするビーンの姿には大いに普遍性がある為、野球を知らなくても一応楽しめる内容となっているが、余り知りすぎていてもつまらないだろうし、僕くらいの野球及び大リーグ知識を持っている人間に一番楽しめるように作られている気がする。

映画としては、選手として有望と言われたビーンが自身の失敗から学んだプロ野球観が若い経営学部出身のブランドと出会いにより確立していく様子が誇張なく描写され、映画の未来も捨てたものではないと思わせる確かな作劇が見られる。
 ブランドには実在するモデルがいるが、自分と対峙するビーンのもう一つの姿と思って見た方が面白い。ボストンから示された高いギャラに対して複雑な表情を見せる彼に対し、ブランドが「それだけ価値がある方法だと認められたこと」と放つ助言が力強く、フィクション的な味付けを生かした実に良い場面になっている。
 離婚した妻に引き取られている娘(苗字はビーンを名乗っているのが良い)との交流が鮮やかなアクセントとなって映画に潤いを与えてぐっと和む。

今なら自由に使える松井をWBC日本代表にしよう(無理だろうな)。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
やれやれ・・やっと治ったようですな〜

安く買ってきた選手を活躍させては、高く売りつけるという方法で球団に利益をもたらすという経済学にかなった方法でありますが・・・・

さて、これからどうなります事やらでありますな。

ホールの次はボールですか・・・・ラビットの次はガメラかタートルズかと思っておりましたよ。( ^)o(^ )
ねこのひげ
2012/11/05 20:12
ねこのひげさん、こんにちは。

我が邦では、日本のヤンキーズこと読売ジャイアンツの平均年俸がずっと一番高かったのですが、数年前からやや方針転換した為阪神の方が高いことが多くなりましたね。
アスレティックスは今でも若い選手が多く、相変わらず安いようです。
日本も昔よりドライになりましたが、大リーグのビジネスライクぶりは凄い。長く働いたエースでも4番でも平気で出しますからね。王や長嶋を全盛期にトレードに出すなんて考えられないけどなあ。

>ホールの次はボール
意図的に並べたので、お気付き戴き嬉しいです^^
オカピー
2012/11/05 23:08

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