映画評「カウボーイ&エイリアン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ジョン・ファヴロー
ネタバレあり

エイリアンVSプレデター」ではプレデターが地球人に文明を授けたことになっているし、巷でも古代文明と宇宙人を結び付けた説が流布していることを考えれば、いつの時代に宇宙人が現れても不思議ではなく、西部劇と侵略SFを結び付けたのは一応のアイデアだが、寧ろ今まで作られなかったのが不思議なくらい。

左腕に変な装置を付けた記憶を失ったガンマン、ダニエル・クレイグがお尋ね者として逮捕され留置場に入れられた後、町の有力者ハリスン・フォードが現れてどら息子の釈放と金を奪ったクレイグの引き渡しを要求する。
 そこへ謎の飛行物体が現れて次々と人々を吊って浚っていくのを目にしたクレイグが我知らず力を込めると左腕の装置から光が発射されて一機を撃ち落とす。

ここからお話は急展開、誘拐された人々を空からやってきた飛行物体から取り戻す為にクレイグ、フォード以下が捜索隊を結成、荒野を探す旅に出る。途中で宇宙人ばかりではなく、クレイグの子分だった野盗やアパッチ族も邪魔に入るが、人間たちは事情を知ると一致協力することになり、砂漠に聳え立つロケット状(というかロケットそのものである)の建築物に爆弾を仕掛け日光が苦手な宇宙人を誘き出した後、その間に謎の美女実は別種のエイリアンであるオリヴィア・ワイルドとクレイグが浚われた人を解放する為に侵入する。

西部劇としては実に古典的な物語構成で、先年観た日本未公開の西部劇「牛泥棒」(1943年)でも退役した南軍将校以下が牛泥棒を捕まえる為に捜索隊を組んでいる。本作のフォードも退役した大佐で、少なくとも二百本は西部劇を観て来た僕なんかニヤニヤさせられっぱなしだった。
 他方、宇宙人襲撃の目的や、同様にひどい目に遭った別の宇宙人が開発途上の地球人に協力若しくは導いたりするのも宇宙進出SF・侵略ものSFでは定石的と言って良く、古くは「ドラゴンVS七人の吸血鬼」のように、ありふれたもの同士を合体させて新味を打ち出そうとしたタイプの作品ということができる。

今回観たのは劇場公開版より18分長いバージョンで些か冗長なところがあるが、西部劇部分は堂々たる展開ぶりで嬉しい部類。SF部分では、エイリアンが二足歩行なのは頭脳が発達する為に必要なので理に適っている一方、西洋人のお好み(嫌いであるというお好み)で節足動物に似せてぐちょぐちょに仕立てたがるのは気に入らない。

地球にやって来られるほどの文明を持つ宇宙人と地球人(まして19世紀)とでは戦争にならないのは常識で、それを科学的に最も上手く解決したのがH・G・ウェルズの「宇宙戦争」である。つまり彼らの最大の敵は地球の環境であるということだが、今の若い人は闘ってくれないと物足りないらしい。
 その為に作者たちは宇宙人の行動を本作のように非合理的にするという常套手段を取る。左脳人間の僕として大いに文句を言いたいものの、観客が宇宙人との戦争を求めているから、ご都合主義的に宇宙人を白兵戦で闘う間抜けにしているわけである。かくして、弱い宇宙人のお陰でこの町はゴールドラッシュに湧くことになるようだ、めでたしめでたし。

黄金の生成には物凄い熱(超新星の誕生など)が要る。太陽の熱くらいでは文字通り“焼け石に水”の反対。黄金を求めて宇宙人がやって来るのも理解できるというものだ。但し、何故金が必要なのかは結局解らない。

監督は「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴロー。

今大流行のゾンビ映画の嚆矢「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」も実は吸血鬼映画と西部劇の砦ものとを合体させたものなのだ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

面白い

この記事へのコメント

2012年10月04日 17:02
>西部劇部分は堂々たる展開ぶり

そう聞くと見たくなってきました。
エイリアンやゾンビを出しちゃうのは、昔みたいにインディアンを出せなくなってるからかもしれませんね。
オカピー
2012年10月04日 22:30
nesskoさん、こんにちは。

劇場版と違うバージョンで観たので、劇場版はどうなのか定かではありませんが、なかなかクラシックで僕は気に入りましたね。
少々冗長気味かなというところもありますが、チャラチャラした感じがないのは良いです。

>インディアン
多分。
ネイティヴ・アメリカンという言葉で表現するのが良いとは思いませんが、さすがにかつての「駅馬車」のようにインディアンを扱うことはもはやできないでしょうね。
「駅馬車」は好きな映画ですが、アメリカでは放映されないようですね。日本でもインディアンが悪者扱いされる西部劇は放映回数が減った感じがします。

気に入らないのは、古い西部劇で「ネイティヴ・インディアン」という字幕が出ること。こういう「臭いものには蓋」方式はダメで、そういう時代があったことを知るのも大事です。
そもそもインディアンは間違った表現ではあっても差別用語ではないと思いますけどね。
ねこのひげ
2012年10月05日 05:09
これは、劇場では観ませんでしたが、観てみるとけっこうおもしろかったです。
節足動物タイプの宇宙人というのは、『SUPER8』の宇宙人もそうでしたね。
アメリカ人は、よほど嫌いなんですね。

きのう、テレビを観ていたら、スピルバーグが、インタビューで文字を読みにくい病気『ディスレクシア』であることを認めてました。
かなり、いじめにあったようですが、映画が救ってくれたと語ってましたよ。
オカピー
2012年10月05日 21:20
ねこのひげさん、こんにちは。

あれっ?
昨年話題にしていたような記憶があるので、すっかり映画館でご覧になったとばかり思っていました^^

>節足動物
英米SFの敵役宇宙人には圧倒的にこれが多いです。
僕が大昔にTVで観た1960年代の廉価SF(多分本邦劇場未公開)など、正に蟹の変形みたいなものでしたからね(苦笑)。タイトルは忘れちゃったなあ。
そもそも頭脳が発達すると二足歩行になり、二足歩行になると手を遣うようになるのでさらに脳が発達するというのが生命の進化の過程であると考える(これは地球ばかりとは限らないと思う)と、原始的生物みたいな格好の宇宙人はありえないのですけどね。
尤も脳を使わない全く別種の生命体なら別ですが、脳がなければ機械でしょうよ^^;

>『ディスレクシア』
難読症ですね。
十年くらい前に映画で初めて知りましたが、日本では余り聞かないですが、アルファベット文化と漢字文化の違い? それとも表面化していないだけですかね。
逆に字が読めても、映画言語が読めない人もいます。そういう人が映画の批評をすると笑ってしまうくらい変なことを言いますね。
ねこのひげ
2012年10月06日 08:27
すいません、これは観てました<(_ _)>
観てないのは、『SUPER 8』の方でした。
勘違いしてました。
ボケてきたのか?
へこみます。(~_~;)
オカピー
2012年10月06日 17:26
ねこのひげさん、こんにちは。

僕も、勘違いはするわ、固有名詞がすぐに出て来ないわで、大分わがハードディスク(笑)もいかれて来たようで。
それを考えると、「クイズ・タイムショック」での宮崎美子(同世代)の回転と知識には驚かされます。知っていてもすぐに出て来ないので、昔は博識と言われた僕なんか回転すること必至ですね。

この記事へのトラックバック

  • カウボーイ&エイリアン

    Excerpt: 娯楽と痛快に欠ける。   Weblog: Akira's VOICE racked: 2012-10-04 15:12
  • カウボーイ&エイリアン

    Excerpt: 公式サイト。原題:Cowboys & Aliens。製作スティーブン・スピルバーグ、ロン・ハワードら、ジョン・ファヴロー監督。ダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、オリヴィア・ワイルド、 ... Weblog: 佐藤秀の徒然幻視録 racked: 2012-10-04 17:11
  • カウボーイ&エイリアン/ダニエル・クレイグ

    Excerpt: 初めて予告編を観たときは「『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』?」と思いましたけど、どうやらそうではなくて『戦国自衛隊』みたいです。たぶんそれも違うと思いますが西部 ... Weblog: カノンな日々 racked: 2012-10-04 17:26
  • 『カウボーイ&エイリアン』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「カウボーイ&エイリアン」□監督 ジョン・ファヴロー□脚本 ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフ、マーク・ファーガス、 ホーク・オストビー.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2012-10-04 17:26
  • 『カウボーイ&エイリアン』

    Excerpt: ※ちょっとだけネタバレありです。 (原題:Cowboys and Aliens) ----この映画、タイトルからして惹かれるんだけど、 どういうお話? そのエイリアンというのは友好的なの? .. Weblog: ラムの大通り racked: 2012-10-04 22:42
  • 『カウボーイ&エイリアン』 ('11初鑑賞144・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆★- (10段階評価で 7) 10月22日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター7にて 13:05の回を鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2012-10-07 22:41
  • 「カウボーイ&エイリアン」

    Excerpt: 思ったよりマトモだったよね! Weblog: 或る日の出来事 racked: 2012-10-14 19:35
  • 【映画】カウボーイ&エイリアン…ジョン・ファヴローは凡才らしい

    Excerpt: 女子アナは日テレ系が好み…ピロEKです ここ数日は実に寒いです。体調を崩さないように気を付けまくります。 で、最近の近況。 昨日、2012年12月23日(日曜日・天皇誕生日)は、職場の同僚(女.. Weblog: ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画 racked: 2012-12-27 22:24