映画評「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ=ニュージーランド映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

スティーヴン・スピルバーグの「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」以来3年ぶりの監督作品がアニメなのには些かがっかりというのが正直なところでありますが、気を取り直して観てみましょう。漫画音痴の僕でも本作の原作となったベルギー出身のエルジェの古いコミック「タンタンの冒険」については僅かに聞いたことがある。

少年記者タンタン(英語発音ではティンティン)がノミの市で伝説の軍艦“ユニコーン号”の模型を買った途端譲ってほしいと言う人物が次々と現れ、結局家から盗まれる。愛犬スノーウィが壊した船のポストから謎の文字が書かれた羊皮紙を発見した後、犯人と目される悪党サッカリンの屋敷へ行くと案の定模型があるもののそれは別の模型と判ってがっかりする間もなく拉致され、サッカリンが強奪した貨物船に閉じ込められる。
 船を奪われた酔いどれ船長ハドックは軍艦所有者の子孫で、サッカリンの狙う秘宝の在り処を知っているはずなのだが、酔いどれて記憶が定かでない。彼に二人の伯父がいたことから三つの模型があると踏んだタンタンは船長と(及びスノーウィと)水陸両用プロペラ機を奪って脱出、貨物船の目的地へ先回りしようとしてモロッコの砂漠で撃墜されるが、外人部隊に救難され、最後の模型が展示される会場へ向かう。

一言で言えば「インディ・ジョーンズ」のお子様向け版である。などと言うと、ベルギーやフランスの方々は怒るであろう。“いや、「インディ・ジョーンズ」が「タンタン」の大人向け版なのだ”と。
 どうも共同制作したピーター・ジャクスンが原作のファンで、スピルバーグは「レイダース/失われた聖櫃」を作った後「インディ・ジョーンズはタンタンの子孫みたいではないか」と言われて原作を知ったらしい。
 タンタンを観ているうちに、僕は「アルセーヌ・ルパン」シリーズの「奇巌城」における高校生探偵イジドール・ボートルレを思い出して、ちょっと嬉しくなった。暗号ミステリーでもある「奇巌城」が発表されたのは1909年、タンタン記者が誕生したのは1929年である。何か影響関係があるかもしれない。

それはともかく、波乱万丈でノンストップでの展開ではあるが、「インディ・ジョーンズ」程には楽しめない。やはり僕は実写が好きなのである。とりわけ、スピルバーグの実写における適切なカット割りにワクワクするのだ。
 確かに実写におけるカメラワークに相当する部分は相当面白い。例えば、終盤の長い羊皮紙争奪戦シーン(ワンシーン・ワンカットなり)は通常の実写ではと全く無理で、他にも幾つかそういうショットが見られて誠に結構なのだが、人間が実写で演(や)るからこそ嘘と判っていても本当にやっているような錯覚に陥り手に汗握ることになる(のが良い実写映画な)のである。
 最近は実写と言ってもCGを大量に挿入し、ヒッチコックが知恵を絞って作った超絶技巧ショット{「海外特派員」における飛行中の飛行機の中へ、若しくは「サイコ」のロングショットからビルの中へ入って行くショット、「フレンジー」の空撮から殺害現場に直結するショットなど枚挙にいとまない)もいとも簡単にできるようになった。何だか寂しいねえ。

ロバート・ゼメキスが取り組んで来たモーション・キャプチャーでは最も違和感なく観られる。僕はこの技術をアニメに使うことに疑問を覚えているのだが、一応結構と言っておきましょう。

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この記事へのコメント

2012年10月18日 06:28
このタンタンの冒険の本は持ってますが、絵がらを見ると、手塚治虫さんの絵柄に影響を与えたのがよくわかりますな~
スピルバーグは、全然知らなくてカンヌ映画祭に行ったとき見せられて、夢中になり、作ることを決めたと映画公開時のインタビューで答えてました。

アニメというのは、デフォルメがいいと思うので、ねこのひげもモーションキャプチャーで作るのは好きではありません。
『ナルト』というアニメでの決闘シーンの簡略化したデフォルメな動きはすごかったです。
それ以来、毎週見ていたけど、そんなシーンが、年に1回あるかないかなので、また見なくなってしまいました(^^ゞ
オカピー
2012年10月18日 22:11
ねこのひげさん、こんにちは。

僕の聞いた話とは少々違いますが、いずれにしてもスピルバーグが昔から好きだったという説は違うということですね。

アニメは実写に近づき、実写がCGを大量に使ってアニメに近づいて、良い面もあるでしょうけど、何だかつまらないですよねえ。
7、8年前に今の形の映画は20年以内に終るだろうと予言したのですが、デジタル撮影が当たり前になることでフィルムが不要になり、フジフィルムが映画用フィルムから撤退しましたよね。
しかし、フィルムの500年に対して、ディスクの寿命は30年と言われていますから、原盤は20年に一度くらい高いコストをかけてコピーを取るとかしないといけないので、マイナーなデジタル撮影映画は100年後には観られないことになる可能性が高い、と新聞に書いてありました。
そのうち映画館から昔の映写機がなくなり、全てシネコンになってしまうのでは?

そう言えばCDも30年くらいと言われているので、30年前に買ったマイケル・ジャクスンの「スリラー」を聴いてみましたが、まだ大丈夫でした。
その代わり十年前にCD-Rにコピーした音源がノイズだらけになっていました。CD-RWが一番長持ちすると聞いたことがありますが、どうだか。
ねこのひげ
2012年10月19日 07:46
友人で、音楽はオープンリールに保存し直し、映画もDVDに何年かごとに書き直すということをやっているのがいましたが・・・・本人が先に亡くなってしましました。
あの音楽や映画はどうなったか?と気になるところです。

キアム・リーブスが、大監督たちにインタビューした映画が12月に公開されるようです。
インタビューで、フィルムやデジタル撮影についても話してますね。
楽しみです。
オカピー
2012年10月19日 22:13
ねこのひげさん、こんにちは。

僕も今同じようなことをしております。
部屋の整理の為にビデオ時代に録りためた膨大な映画をブルーレイに移しておりますが、一台のビデオの映像が映らなくなってしまいました。ヘッドの汚れが原因みたいですが、クリーニングを繰り返しても治らないんです。参ったなあTT
もう一台D-VHSビデオという貴重な製品があるので、とりあえずこれで出来るのですが、また同じようなことがあると困る。修理代が高い。それ以前に修理できない可能性もあります。そうなると通常のビデオと違って、もうどこにも売っていませんから、永久に観られなくなりますなあ。諦めるしかないか。

しかし、御親友のように、やっている人間が先に死んでしまう可能性もあるわけでして。

>キアヌー・リーブス
へぇ、それは面白そうですね。
デジタル撮影映画にはさすがに慣れましたが、寿命の問題を指摘する方(かた)が出てきて、また新しい次元に入ってきたようです。
2020年01月11日 22:36
これはイントロのアニメによる作品紹介部分だけでも見る価値がありますね。お忙しい方にも、そこだけは見てもらいたいくらいです。
CGのなかった時代には、実写だと、劇映画とはいえ撮影時の役者やスタントマンのドキュメンタリーを観られるという面もあって、演じている人たちや撮影している人たちを応援する気分も味わえましたが、CG万能時代になってとそういう楽しさが失われましたよね。CG製作も大変な作業だろうし、人が危険な目に遭わずに済む利点があるのはわかるのですが。
トム・クルーズの映画は、いまのところ、そのへんの塩梅がうまくて、70年代気分も味わえるものが多いです。
オカピー
2020年01月12日 12:45
nesskoさん、こんにちは。

>イントロのアニメによる作品紹介部分だけでも見る価値がありますね
7年くらい前に見ただけなのでうろ憶えですが、そんな記憶があります。

>演じている人たちや撮影している人たちを応援する気分も味わえました
その通りですね。それが実写映画を観る上で結構大事で、二重のサスペンスが味わえるのでした。それがCG時代となってなくなりました。

>トム・クルーズの映画は、いまのところ、そのへんの塩梅がうまく
もう少しスタントマンを利用しても良いと思いますが、実写ならではの緊張感を見る方に感じさせる作品群ですね。一部にアンチがいますが、僕はクルーズの映画、特に「ミッション:インポッシブル」シリーズは好物。

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