映画評「127時間」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年イギリス=アメリカ合作映画 監督ダニー・ボイル
ネタバレあり

ダニー・ボイルが監督なのでまた「28日後・・・」(2002年)のようなホラー映画かと思いきや、岩に挟まれて動けなくなった若者の五日余りを描出した実話物であった。しかし、実話とは言え、実質的にサバイバルものであり、ある意味ホラー映画である。

妹の結婚式を控えているのに、いつも通り誰にも連絡を取らずに、通い慣れたキャニオンにロック・クライミングに出かけたアーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)が道に迷った若い二人の女性を案内した後狭隘な岩間に落ち、不運にも落下した岩石に腕を挟まれて身動きが取れなくなる。

時代背景は2003年なのに、携帯が初めから出て来ない。いくら家族や他人と半ば没交渉とは言え、ロック・クライミングのような趣味を持つ者には必需品ではないかという疑問が湧く。
 題名から想像が付くように最終的に彼は命からがら助かるが、助かった後初めて「携帯は持っているけど使えない」と言っている。「携帯はどうした?」と疑問を持ち続ける観客の為序盤にその辺りはきちんと説明しておく必要があったであろう。僕が身落としましたかな? 

それはともかく、家族や他人と積極的な関係を持ってこなかったことへの過去の反省や、幻想など彼の主観を交えて、彼が何とか現状克服の為に悪戦苦闘する姿を捉えている。彼は他人(ひと)とは没交渉気味なのに日記代わりにカムコーダーを利用している。彼の潜在意識に人々との関係への希求が垣間見える。

かくして五日目に入り、遂に彼は中国製の切れないナイフで慎重に自分の腕を切り取る作業に入る。血を見るのが嫌いな僕にはとても辛い場面なのだが、彼が適切に切る技術を持っていたが故に助かったのである。勇気があってもただ切ったら出血多量で死んでしまうだろう。こうして歩きだした彼は遂に三人の家族連れに発見され、現在結婚もして依然ロック・クライミングなどに励んでいるようである。

さすがに岩間に挟まれた一人の男を追うだけだけは退屈してしまうので、変化を付ける為に家族との過去や幻想を適宜に挟んで尺を稼いだだけでなく、人間はやはり一人では生きられないことを身を以って体験する一種の教訓譚になっていて印象を残す。

登場人物は少なからずいるが、上映時間の90%程を一人芝居で通したジェームズ・フランコの力演に尽きる。

恐怖映画より怖い。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年10月13日 05:22
これは、テレビCMでさかんに映像を流していて、劇場に観に行く気がしませんでした。度胸だけでは済まない話ですよね。
自分ができるかと言われれば、無理でしょう。
干からびて死ぬ方を選びそうです。

アイデアはすごいですね。究極の低予算映画と思ったけど、カメラワークが大変そうで。
一人芝居というのは、時々、舞台では観ますけどね。映画では他にありましたっけ?
オカピー
2012年10月13日 20:30
ねこのひげさん、こんにちは。

右に同じ。
処置できる人を含め二人いれば切って処置して貰う方策を選ぶかもしれませんが、一人では到底できないですね。

今は小さなカメラでもハイビジョンで撮れるから昔なら不可能な映画化だったかも?
そこを何とかSFXに工夫を凝らして作ったのが昔の映画人ですけどね。VFXで作っても有難味がないです。

>一人芝居
短編ならかなりありそうですが・・・
実質一人芝居だったのはスピルバーグの出世作「激突!」ですね。あれはTV映画で、10万ドルしかかかっていないと聞きましたが。
今、当時のデニス・ウィーヴァーのクラスなら、出演ギャラだけで300万ドルくらいかかるでしょうね。それでも決して高いほうではないのだから、ハリウッドときたら(笑)。

「月に囚われた男」もほぼ一人芝居。一人二役。少し奥さんがでてきたけど。
ねこのひげ
2012年10月14日 05:10
あっ!?そうか・・・・(^^ゞ
両方とも見ているのに・・・・・人間忘れるものですね~(~_~;)
そういえば、『激突』のトラックが行方不明になっていたのが発見されたというのを記事にしたこともありました。
ああいった有名な物でも行方不明になるんだとあきれましたけど・・・・
オカピー
2012年10月14日 22:36
ねこのひげさん、こんにちは。

聞いた記憶があるような気がします。
アメリカでは「激突!」はあくまで傑作TV映画という扱いですからねえ。

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