映画評「シャンハイ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ミカエル・ホフストレム
ネタバレあり

お話も演出もオーソドックスな戦争スパイもので、若干甘すぎるものの嬉しい内容である。

1941年10月、アメリカの諜報員ジョン・キューザックが新聞記者になりすまして上海の租界に入って活動開始、旧交を温めるはずのカジノに現れない同僚の友人に会うかわりに中国美女コン・リーと出会う。その帰り上官デーヴィッド・モースから友人の死を告げられた彼はその死の背景を探る為に調査を開始、友人が生前探っていた暗黒街のボス、チョー・ユンファに接近すべくドイツ領事館のパーティーに参加、くだんの美女と再会して彼の妻と紹介される。調査を進めるうち、彼女が抗日レジスタンスであることや、パーティーで会った日本軍人・渡辺謙が友人が昵懇だった日本人女性・菊地凛子の行方を探していることを知ると共に、彼女の住居から船隊を描いた簡単な図面、懇ろになったフランカ・ポテンテの夫であるドイツ人技師の家からは日本との兵器販売データを得る。

ここまでで常識のある日本人観客なら日本軍が12月に敢行する真珠湾攻撃を巡って上海で暗躍していることを理解することになるが、本作は戦争スパイ・サスペンスたる前に、米中日の男性が中国美人コン・リーに対して抱く愛情に煩悶せざるを得なくなりながら活動を続ける様子を描くことを眼目としている。つまり、些か情が勝ち過ぎているものの、お話自体は1940年代ハードボイルド・ミステリー映画を踏襲している感じである。

アラブ系らしいホセイン・アミニという脚本者は「カサブランカ」(1942年)も相当に意識しているようで、それは渡辺謙が二人を見逃す終盤の一幕に如実に顕れている。僕が冒頭でオーソドックスと記した所以である。あるいは、日本が悪役にならざるを得ない設定の中で、アメリカ映画に携わる者として出演者二人を提供し本作を大金で買ってくれる日本に配慮したと解釈できないこともないが、深読みすぎますかな。

日本軍人に扮する日系の日本語が相変わらず下手なのに興醒めることは請け合える(笑)ものの、日本が多少悪く描かれていても平気だよというオールド・ファンにはお薦めできる一編。

監督はスウェーデン出身のミカエル・ホフストレム(ハフストロームと表記されることが多いが、僕の限られたスウェーデン語の知識ではこちらのほうが近いと思う)。

気付いたら♪海を越えたら シャンハイ・・・などと鼻歌を歌っていた。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年09月28日 05:29
まあ、負けたほうが悪者にされるのは仕方ないですね。あのころのシャンハイの雰囲気は好きです。
渡辺謙さんが一番得をした感じでしたね。

レトロな雰囲気を醸し出している映画も好きで、先日、『アデル/ファラオと復活の飛躍』を見ましたが、第一次世界大戦前のレトロな雰囲気が良かったです。
元々が子供向けの映画だそうですが、ベンソンはますますハリウッドになってますね。
オカピー
2012年09月28日 21:46
ねこのひげさん、こんにちは。

少なくとも意図的に悪役にした感じもなかったですしね。
一般的な日本人なら許容範囲でしょう。

>渡辺謙さん
アジア系の俳優が悪役を抜け出すと、アメリカでも一流になった証と思うております。ジェット・リーもそういう経路でした。

>『アデル/ファラオと復活の飛躍』
邦題がやや意味不明です(笑)が、前作もなかなか面白かった。
前作では、僕は60年代にフランスで大人気だったルイ・ド・フュネスの喜劇を思い出しましたが、今回はどうだったのかな。
ねこのひげ
2012年09月29日 06:34
あっ!また確認もせずにクリックしてしまいました。
飛躍→秘薬でした。
すいません<(_ _)>
まさにルイ・ド・フュネスの喜劇ですね。プテラノドンは生き返るし、最後にファラオのミイラまで生き返ります。
オカピー
2012年09月29日 19:58
ねこのひげさん、こんにちは。

僕は、また続編ができたと勘違いしましたです^^
他愛ないながら割合気に入った一編ですね。序盤こそハリウッドっぽいですが、途中からぐっとのんびりしてくるのが却って良いと思いました。

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