映画評「フェア・ゲーム」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ダグ・リーマン
ネタバレあり

イラク戦争はCIAの間違った情報で始められた、と思い込まされている日本人が、僕を含めて多いと思うが、CIAに問題があるにしても本作を見ると180度違っていることが理解できる。

9・11直後CIAの秘密調査員ヴァレリー・プレイム・ウィルソン(ナオミ・ワッツ)がイラクの核開発疑惑を証拠づける証拠を収集しようとするが、結果はNO。また、国務省の依頼により彼女はニジェールやイラクの大使を歴任してきた夫ジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)をウラン産出国のニジェールに派遣することを承知するが、彼の報告は「イラクへのウラン輸出の事実なし」。
 が、米国政府はこの二つの報告を無視して戦争を開始、証拠集めに三顧の礼を尽くして懇願して、科学者の兄から情報を得る為にアメリカ在住のイラク人女医を祖国に送ったものの兄からは「馬鹿げた話だ」と一蹴される。

しかるに、米国政府はイラクは核兵器を所有していると戦争を続行、その結果は我々も知っている通りだが、本作の問題はその後政府のでっちあげを告発したジョーがつるし上げを食らい、ヴァレリーがCIA局員ということを暴露されてしまうこと。米国の法律でCIA職員名リークは重罪だが、それを指導したのは副大統領補佐官リビー(デーヴィッド・アンドリューズ)で、最初は徹底して抵抗する夫を家庭を崩壊させる行為をしていると責めた彼女も退役軍人の父親(サム・シェパード)の発言から共闘することにし、並行して進行していた裁判所の調査によりリビーは有罪になる。

というお話で、最終的には一徹な夫婦の愛情再生が重要な要素として浮かび上がるが、他の夫婦若しくは家庭再生劇と違ってこれをテーマにまで押し上げずモチーフとしてお話の推進力として機能させている為に非常に感銘させられる。リビーは、当時のブッシュ大統領により、一家が受けた屈辱と苦悩を考えれば罰はごく軽微なものにまで軽減されている。

どこの国の政府も個人の尊厳など無視して自分たちの都合が良いように国民の思想を支配し、行動しようとする。現在色々と問題になっている中国も韓国も日本も国民から見れば五十歩百歩である。
 本作など誠に上手く感情移入させられて義憤にかられてしまったが、自国に都合の悪い情報は一切国民にも開示しない中国はともかく、自由主義・民主主義を標榜するアメリカや日本が国民を守るという国の第一存在理由を忘れて貰っては困る。

映画としては中の上くらいの出来映えながら、比較的早めに家族の情景を出した作劇にバランスの良さを感じ、原作に小説とノンフィクションの違いがあるとは言え日本国の巨悪を告発した「金環蝕」(1975年)で自民党の名前を出せなった邦画と違い、実名でこうしたドラマ映画を作ったことに敬意を払って☆四つを進呈する。最近アメリカ映画をよく批判している一方、本作に限らず実名を出して風刺や批判や告発が堂々と出来るアメリカ映画界(若しくはアメリカ人の国民性)には依然感心させられる。

日本の問題点は、政治家と官僚が仕事をはき違えていることではないの?

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年09月27日 05:57
イラク戦争は、ブッシュが自分の利益のために起こした戦争であるというのが、自明の理のようですな~
CIAといえど、所詮お役人ですからね~
しかし、中国の人間のように政府に操られて暴徒となるような人間にだけはなりたくないですな。

暴徒といえば、『ショーシャンクの空』の監督フランク・タラボンが作ったテレビドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』が評判だそうです。
日本でもFOXテレビで放送されたのですが、ゾンビ物だというので、タラボンよ、お前もか!と見なかったのですが・・・
いい作品だそうで、DVDでも発売されているそうです。11月から第二シリーズが始まるそうで観てみるかな?
オカピー
2012年09月27日 22:16
ねこのひげさん、こんにちは。

僕は一部のTVの報道等から、CIAの誤情報を信じてアメリカが戦争をしたとばかり思っていましたよ。
中途半端な知識はいけませんね。

>ゾンビ物
ゾンビ物は残虐性が比較的低いのは良いので、余程観るものがなければ観ても良いですが・・・。
でも、それなら昔の映画を見た方が良いかな。

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