映画評「カンパニー・メン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ジョン・ウェルズ
ネタバレあり

昨日の「海炭市叙景」第一エピソードに続いて偶然にもまたまたリストラのお話。

僕も個人的にも痛い目に遭った2008年のリーマン・ショックで、運輸部門を中心とするコングロマリット企業が造船部門の縮小を決める。その影響で販売部長ベン・アフレックが突然首を言い渡され、会社側が用意した再就職支援所に通うが、プライドが高く同種の業務を求める為なかなか仕事が見つからない。妻ローズマリー・デウィットの説得に負けて家や車を売り払ってもローン返済は残り、仕方がなく折り合いの悪い妻の兄ケヴィン・コストナーの工務店を手伝うことにするが、胸中晴れないものがある。
 企業はさらに造船部門トップで企業全体のNo.2と言っても良いトミー・リー・ジョーンズまで首にする。首を言い渡すのが愛人マリア・ベロというのも残酷物語だ。会社としてはもはや序列は関係なく、そのマリアにしても合併若しくは吸収が行なわれれば首になる公算が大きい。ジョーンズは同僚にして親友クリス・クーパーを自害で失うに至って決心、新しい企業を立ち上げ、アフレックら以前の部下たちを呼ぶ。

昨日の邦画に比べれば深刻度はぐっと低い。企業でも上層部にあり、ジョーンズに至っては自社株の売却で相当の現金を手にすることができ、再出発して一部の部下たちは救われることになる。
 映画として甘そうに見えるのは主人公たちがブルーカラーではなくホワイトカラー上層部故であり、その扱い故ではない。

但し、アフレックを主人公として考えた場合、奇しくも昨日の「海炭市叙景」が映したように、一般的には周囲の人間がこうも揃って良き人々ばかりではないことを踏まえて観る必要はある。細君はバランスの取れた現実主義者で実に好ましい。息子も良く出来ている。コストナーも口はともかく、給料を余分に払う男気がある。ジョーンズの部下への心配は見せかけではなく最後まで本物だった。

その対照は、細君が見栄っ張りであったが為に自分を変えることが出来ずに自害して果てるクーパーである。映画は彼をもって現実感を持たせ、一方でアメリカ映画的な希望を持たせるというバランスで見せた。映画は現実を土台に巧みに嘘を見せることをもって最上とすべし。その意味で本作はそういうタイプに属する作品になっている。

とは言え、普遍性は薄く、薄給のブルーカラーが見ても何の足しにもなりそうにない。

リーマン・ショックは円高を生み、間接被害は日本の方が大きいのでは? アメリカと日本の失業率の較差は計算の仕方が違うので単純には比べられない。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年09月23日 07:32
来年、卒業する姪に就職できないと啼きつかれて困りましたけどね。
若者にも老人にも厳しいようで・・・・
韓国の製品より、あきらかにソニーの製品のほうが性能は上なのに、売れてないそうで、悪貨が良貨を駆逐しているというか、そこまでの性能を大衆が必要としてないということを、企業セレブたちが理解してないという事でありましょうな。
ローレックスオイスターの金張りの腕時計をしながら、Gショックをはめている人間に物を売りつけようというのが間違ってますな~
オカピー
2012年09月23日 21:39
ねこのひげさん、こんにちは。

わが姪は今年大学に進んだばかりで、小学校教師を目指しているようですが、教師も実は狭き門ですし、入った後も問題がありますしね。今から危惧しております。
まだ高校二年生の甥は目標はT大で、僕は憎まれても良いから(笑)官僚になれと言っておりますが、本人はまだ明確な未来像を持っていないようです。困ったものです。

>韓国の製品
残念ながら、仰る通りなんでしょうねえ。
ここ10年余りのアメリカ映画などを観ても電気製品は、韓国製や中国製(主に白もの、即ち冷蔵庫や洗濯機)が跋扈しています。20世紀末の映画ではまだ日本製ばかりでしたけどね。

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