映画評「ライフ-いのちをつなぐ物語-」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年イギリス映画 監督マイケル・ガントン、マーサ・ホームズ
ネタバレ殆どなし

どうも既視感があると思ったら2年ほど前WOWOWで放映されて全て観たBBSドキュメンタリー・シリーズの総集編でありました。

自然の凄さ、本当の実写の凄さに言葉を失った「ディープ・ブルー」(2003年)も今初めて観るならば多少評価を落とすかもしれないが、ただ、あの作品が無言のメッセージを貫いた態度は説教臭い他の自然ドキュメンタリーが到底及ぶものではない。
 本作はTV版の映像の中からなかなか上手く取捨選択し、自分のコピーを作る即ち種の保存に勤しむ動植物の生態を見るというテーマに沿って編集、地球の環境に対する警告などを敢えて前面に押し出さなかった態度は「ディープ・ブルー」以降の自然ドキュメンタリーの中では一番立派である。こういう作品を観て自然に対して“ある思い”を抱かない方が不思議であり、それを敢えて言葉に出す必要などありはしない。

他方、一度観ている映像だから選択と構成の巧さが印象に残るくらい。
 TV版をご覧になっていない方でもよく紹介されているものが少なくないのでそう新味があるとは言えないが、映画館で観ればまた別の感動も生まれるだろう。

「ディープ・ブルー」に比べると説明的であるのがまずマイナス点。また、些か映像も凝り過ぎていて、それが自然ドキュメンタリーとして必ずしも良い印象をもたらすとは限らない。良くも悪くも白眉は、ハネジネズミがトカゲから逃げる様を描いた部分で、地上すれすれに撮りハイスピード撮影(所謂スローモーション)を交えた画面はまるでCGでこしらえたかのように却って嘘臭く感じさえする程だが、翻せば実際の世界にも人間が普段観ていないところで、CGを使って生み出す世界に優るとも劣らぬものがあるという証左である。

いずれにしても、自然の生み出したものに無駄はない。人間以外はバランスを保つ為に生きている。そう思うから小生、蝿と言えどもどうも殺すことはできない。蚊は反射的に叩いてしまうことがあるが、その際決して何も感じないわけにあらず。
 良く言われるように、食糧にする為以外に他の動植物を殺す生き物は人間を除いて他に殆どいない。自分の命を守る為に結果的に相手を殺してしまう動物が僅かにいるくらいである。だから、僕には、人間が食糧用に半ば人工的に生み出した肉牛と蚊の命がどちらが尊いか計ることなど到底できない。

地球の為には人間が一等先にいなくなるべきだが、そういう人間を生み出したのも自然の摂理。それに逆らうのも摂理に反することなのだろう。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年07月21日 06:41
こういう自然の造形を撮らせたら、BBSは圧倒的な力をもってますな~
過剰な説明もいらんです。
日本は、すぐに芸人などを使ってくるので興ざめするんですな。
きのう、テレビ東京でベトナムのソンドン洞窟を見せたのですが、俳優の平岡裕太さんを使ってましたが・・・・悪いけど、いらんな~でありました。

人間が生み出されたことにもなにか意味があるのでしょう。
オカピー
2012年07月21日 22:19
ねこのひげさん、こんにちは。

自然ドキュメンタリーで近年一番感動したのは「ディープ・ブルー」ですね。
殆どナレーションもなく、勿論全て実写。観れば感じてしまうという作品。
テーマが解らないと仰る人もいらっしゃいましたが、解るでしょうよ。
その昔観たディズニーの「砂漠は生きている」も感激しましたね。

>芸人
少なくとも生物学上のヒトは出しても良いけど、自然ドキュメンタリーに人間を出す必要はないです。
TV番組にそこまでは求めませんが、志村けんの園長をやっていた何とかという番組(まだやっているのかな?)がダメだったのは、日本テレビらしく芸能人を主役にしてしまうんですな。フジテレビやテレビ朝日ならもう少し主題に焦点を当てるのですが、日本テレビは視聴率を稼ぐ芸能人しか興味がなく、全部の番組がそう作られています。一番観ないのが日本テレビ。唯一「鉄腕ダッシュ」だけはヨロシイ(笑)。

>人間
人間が産業革命を起こしたのも、戦争をするのも、核を作ったのも、地球の運命の中の必然的偶然なんでしょうねえ。
このまま破壊を突き進むのか、自然に回帰していくのか、僕らは恐らく解りませんけど、後数十年後には結論が出るのではないでしょうか?

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