映画評「ファンタスティック Mr.FOX」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年アメリカ=イギリス映画 監督ウェス・アンダースン
ネタバレあり

ウェス・アンダースンが監督をしたストップモーション・アニメ。

ロアルド・ダールの児童文学が原作ということになっているが、そのダールも12世紀頃に成立したとされる「狐物語」(複数の挿話から成る伝承文学)からアイデアを得たのではないかと想像されるお話である。

「狐物語」では狐は他の動物や人間たちをいじめる言わばずるい悪役なのだが、主役である以上単なる悪役ではなく、特に人が絡む場面ではきつい人間風刺が出てくる。本作の狐氏は狼恐怖症だから、かの作品のように狼の尻尾を切る代りに自分の尻尾を人間の銃弾で切られてしまう始末。
 といったように全く逆にした部分もあるかと思えば、人間とのイタチごっこ的な関係にはかの作品と共通する風刺の香りも漂う。かくしてダール氏も子供の頃に「狐物語」を読んだ印象を受けるのである。

恋人狐が妊娠したのを契機に泥棒稼業を止めて記者になった狐氏が、残る人生も少なくなったと今の貧乏暮しに見切りをつけ丘の家に引っ越しすることを決めるが、その近くには三人の農場主がいるのを知って、呼び起こされた野生の本能に従ってアナグマを相棒に彼らの倉庫から首尾良く商品を盗む。
 これに怒った農場主三人が穴を掘って狐一家を追いつめると、彼らはさらに深部へ逃げる。巻き込まれた他の動物たちは狐に腹を立てるものの、狐氏の発案に従って力を合せて逃走と食糧確保に奔走してはみたものの、狐氏の甥が捕えられた為に窮地に陥る。ここで何かと力不足を指摘されていた狐氏の息子が発奮して奪還、狐氏は仲間たちの特長を発揮させて農場主に敢えて戦いを挑む。

家族の扱いが面白く通常のアメリカ製アニメとは大分違うなあと思って観ていたら本編が終るが否や実写映画の異才アンダースンの名前が出て納得させられた。こうした風変わりな人物の点出と交錯とで家族を描き出すのが彼の基本スタイルだからである。しかも、アニメというフィルターを通しているせいか、これまでの実写映画の珍作群よりぐっと素直に受け取り易いというメリットも出ている。

お子様が観て特に問題のある内容ではないものの、中盤からカンフー映画の要素を小出しにし、終盤は西部劇の対決形式を、それもマカロニ・ウェスタンに近いムードで再現させているので、半世紀くらい生きて来た大人の皆様特に男性諸氏の方(ほう)がニヤニヤ楽しめる筈。

因みに、「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)で名前を覚えた若い人はロアルド・ダールを児童文学作家と思っている人が多いが、僕らの世代では「奇妙な味」と評される短編ミステリー作家として知名度が高く、「ヒッチコック劇場」での風変わりな挿話や「007は二度死ぬ」(1967年)の脚本でも強い印象を残している。

タランティーノは観たかな?

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年06月23日 05:29
ダールとくれば、おっさん世代にはおなじみの作家で、ニヤリでありますな~
とうぜん、タランティーノも観ているでしょうな~

『スノーホワイト』どうもおかしいな・・・と継母の女王がシャリーズ・セロンではなく、ジュリア・ロバーツと聞いていたんだが・・・・降りたのか?変更?と思っていたら・・・・『スノーホワイト』もうひとつ作られてました。
そちらでジュリア・ロバーツが女王をやっているそうで・・・・・近日公開
なんだかな~?((+_+))
オカピー
2012年06月23日 23:06
ねこのひげさん、こんにちは。

そう、若い人はダールの別の面を知らないと思うので、老婆心で余計なことを言いたくなるんですよね。

>タランティーノ
新作がマカロニへのオマージュかパロディーみたいなので、そんなことが頭を横切りました。

>スノーホワイトVS白雪姫
タイトルがカタカナと日本語であるように対照的な内容のようで、ジュリア(白雪姫)の方はコメディーらしいですね。
とにかくアイデア不足は今に始まったことではありませんから、両方とも観てみましょう。
本館用に松本清張の映像化を調べていたら、もの凄い数で大変でした。日本は映画のリメイクはさほど多くない(その代わりシリーズが以上に多い)ですが、TVのリメイクは恐ろしいくらい(笑)。

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