映画評「赤道」

☆★(3点/10点満点中)
1983年フランス映画 監督セルジュ・ゲンズブール
ネタバレあり

歌手でソングライターのセルジュ・ゲンズブールが老境に入り色気を出してジョルジュ・シムノンの小説を映画化したドラマだが、舌足らずなこと甚だしい。

新境地を求めてアフリカのガボンにやって来た野心溢れる青年フランシス・ユステールが宿泊しているホテルの老経営者の若い妻バルバラ・スコヴァから誘惑され、その肉体の虜になって無為の日々を送るうちに、黒人ボーイの殺人事件が起き、間もなく老主人も病死する。
 夫婦が人身売買や麻薬密売をしていると聞いた彼はアフリカを去る意志を告げるとバルバラから誘われて開拓地に向うが、同地で彼女がボーイを殺害したことを確信、遂に何を得ることもなくアフリカを後にする。

というお話はグレアム・グリーンの「事件の核心」を思い出させるミステリー要素のある心理小説風だが、ボケボケのセックスシーンを中心に冗長な場面が多い一方で、肝心の主人公の心理のほうは適当に処理している感じでドラマの体を殆ど成していない。
 ボーイ殺しは結局他部族の黒人が犯人として処刑され、真犯人バルバラは何のお咎めもない。それは良いとして、彼女と懇ろになっている他の白人が彼女を何としても無罪にしたいと思っているのに対し、一番熱愛された彼だけが有罪を希望する辺りの心境――ここが最も肝要な部分のはず――が特に解らない。

1980年代に異郷ムードに心理的影響をうけてしまうヒロインを描いた映画(E・M・フォースターを映画化した「インドへの道」「眺めのいい部屋」など)が流行したが、その男性版を目指して、サマセット・モームが南洋の孤島を舞台に描いた「雨」のように真面目な男性(聖職者)が淫蕩な女性に狂って悲劇を迎えるといった展開にすればお話として整合したはずなのに、この作り方では主人公は魔性の女が自らも含めた男たちを夢中にさせる様子を伝える単なる語り部の役目を越えず、全く消化不良。

ゲンズブールは他の作品の評価と併せるとさすがに映画を作る才能はなかったようでござる。

シムノンならやはりメグレ刑事ものがよろし。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年06月16日 05:40
これは、タイトルには記憶がありますが、テレビで観たのかな?内容はおぼえてないです。
フランス人って、ときどき、だから?どうしたの?と言いたくなるような映画を作る時がありますね。
フランス人固有の個性みたいなのがあるのかもしれませんが。
オカピー
2012年06月16日 14:43
ねこのひげさん、こんにちは。

本音は「エマニエル夫人」みたいなのを作りたかったけど、ちょっとした文学的色気に邪魔されて、高級ぶってしまったからこんな変てこな作品になっちゃったのではないかなあ(笑)。
元来エロ親爺なんだから原作に関係なく正直に作れば良かったんですよ。映画としては評価できなくても観た後もやもやしないだけマシ(笑)。

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