映画評「ゲンスブールと女たち」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年フランス=アメリカ映画 監督ジョアン・スファール
ネタバレあり

今やゲンズブール(ゲンスブール)と言えば娘のシャルロットを指すが、フランス人が思い起すのは今でも親父のセルジュの方であろう。映画に出演したり舌足らずな作品を作ったり多才(多彩か?)な人で、元々画家を目指していたらしいことをこの伝記映画は教えてくれる。

ピアニストだった父親の影響もあって、ピアノ弾きをしながら他人に曲を提供するうちにそれが専業になる一方で、少年の頃から色事師の才能を発揮、大人の女性から言葉巧みに服を脱がせる一幕などなかなか面白い。容貌にコンプレックスを持ち本質的には内気だったとされる一方で、そうした色魔的な面はハイド氏の如くマンガチックなもう一人の本人(ダグ・ジョーンズ)として顕在化し、本人なりに(笑)相克しながら人生を送っていたことが示される。

華麗なる女性遍歴の中ではジュリエット・グレコも出て来るが具体的にはよく解らず、女優としての全盛期は過ぎていた既婚のブリジット・バルドー(レティシア・カスタ)との関係は公私に渡り(意味はお解りでありましょう)、やがて曲を提供した英国出身の女優兼歌手ジェーン・バーキン(ルーシー・ゴードン)と結ばれる。彼女との間に生れた長女がシャルロットである。

その後アジア系と思われるモデル、バンブーとの関係もほんの少し描かれるが、それよりジャマイカでフランス国家「ラ・マルセイエーズ」をパロディー化したレゲエを録音して国民から糾弾される一幕が興味深い。

といった具合に華麗なる女性遍歴を軸に、彼の少年時代から初老になるくらいまでが描かれているが、ジェーンとのシークエンス以外は甚だ駈け足的でドラマ的に見応えがあるとは言えない一方、我々のようによく知らない観客にゲンズブールの人となりを紹介し、その人生を俯瞰するという角度からはなかなかコンパクトに作られていて退屈させない。但し、作劇的には相当雑である。

英米ポピュラーを守備範囲にしている僕は彼自身の曲を殆ど知らない為その面では余り楽しめないのだが、「夢見るシャンソン人形」で日本人もよく知っている(この曲もゲンズブールのもの)アイドル歌手フランス・ギャルに提供した「アニーとボンボン」なる曲は全く嫌らしい。当時18歳だった彼女は歌詞が性的なものを暗喩していたことを知らず後年恥ずかしい思いをした、とwikipediaに書いてある。

大人になってからのゲンズブールに扮するのはエリック・エルモスニーノ、名前から判断してイタリア系の俳優。監督は漫画家のジョアン・スファールで、本作が第一作だが、原作が彼自身のコミックということで、セルジュの分身はスファール氏が造形したものでしょう。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年06月14日 06:59
レゲ版の「ラ・マルセイエーズ」は聞いたことがあるし、もちろん「夢見るシャンソン人形」も聞いたことがありますが、ゲインズブール本人の顔は思い出せません(^^ゞ
で、検索してみたらありました。
いかにも、フランス人らしい顔をしてますな。
オカピー
2012年06月14日 21:11
ねこのひげさん、こんにちは。

日本人は八方美人で、英米だけでなく欧州各国の歌曲も70年代前半くらいまでヒットしていましたが、ゲンズブール本人の歌はちょっと聴いたことがあるくらいで、殆ど知りませんでした。
寧ろ髭っ面のほうを知っておりました。

フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」は日本語バージョンもありましたね。

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