映画評「K-20 怪人二十面相・伝」(地上波放映版)

☆☆★(5点/10点満点中)・・・暫定
2008年日本映画 監督・佐藤嗣麻子
ネタバレあり

全くもって怪しからん。
 と言っても映画本体ではなく、日本テレビの放映に対する態度である。まして本作は日本テレビ開局55年(半端じゃね)記念作というではないか。
 CMによる中断5回というのは民放衛星放送並みに良心的であるが、137分の映画を正味92分で放映するとは何たることか。146分の「バッドボーイズ2」を92分で放映した(僕はWOWOWで完全版を鑑賞)のも同局ではなかったと思うが、あの映画の場合半分はくだらんお喋りだから面白くなりこそすれ詰まらなくはならなかったはずだが、本作の場合は詰まらなくはならなかったかもしれないものの、どうもオリジナルの持つ種類の面白さではなくなっていると想像される。

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とにかく本作が本来持っていたに違いないお遊び感と緩急がなくて、せわしない印象ばかり残る。三分の一がカットされると知って観るつもりはなかったのだが、先日ブログでのコメントに影響され参考として観ることにした次第だが、昨日の「相棒 劇場版II」が4分のカット即ちクレジットを別に計算して実質ノーカットと言えるのに比べると、実に怪しからん。

太平洋戦争を回避した、パラレル・ワールドの1949年日本は帝都即ち東京が舞台で、身分と貧富の格差が激しい社会という設定である。
 華族でもある名探偵・明智小五郎(中村トオル)が日本有数の財閥・羽柴家(豊臣家を意識しておりますかな)の令嬢・葉子(松たか子)との婚約が調い、その儀の写真を密かに撮って欲しいと謎の人物から頼まれた曲芸師・遠藤平吉(金城武)が世間を騒がしている怪盗・怪人二十面相と誤解されて逮捕されてしまう。が、護送中泥棒長屋の連中に首尾良く救出された後疑惑を晴らそうと二十面相を倒す為に必要な泥棒の秘伝を習得、羽柴家が所有する新エネルギー機関・テトラ装置を奪おうとしている本物の二十面相の魔の手から逃走する令嬢を助けると、彼女からの情報と協力を得て、遂に二十面相と対決する時を迎える。

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原作は勿論江戸川乱歩にあらで、北村想の贋作「完全版 怪人二十面相・伝」だが、どちらかと言うとウェディング・ドレスで逃げる家族令嬢が泥棒(もどき)が救出するという二人の出会いからして「ルパン三世 カリオストロの城」から完全に拝借、ジャイロコプターみたいな乗り物も同作を参考にしたと思ってよろしかろう。が、宮崎駿が江戸川乱歩を全く参考にしていなかったとは断言できないわけで、あるいは先祖返り的な部分もあるかもしれない。

ワイヤー(本当に主人公らが実際にワイヤーを使った部分を含め)を使った部分が多くその辺りは「スパイダーマン」等への意識が観られるものの、怪人二十面相を持ち出した結果であるレトロフューチャーな感覚はなかなか捨てがたい。
 その一つの要素である驚異的なエネルギー装置に関しては使い方によっては幸福も呼ぶし権力の根源にもなるという意味で原子力への風刺を織り込んでいるらしいものの、それは映画的には大した価値にはならず、楽しめるお話を作ろうとした努力が伺えるのが大事なことである。

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といった次第で基幹となるお話は十分理解できるが、前述通り45分もの大カット故にせわしない感じは否めないので、採点はあくまでこの不完全版に対してである。

もう一つ。明智小五郎のここまでの改竄は贋作とは言え、まずいだろう。allcinemaでどなたかが既に仰っているように、それが出来るのは乱歩御大のみである。

55年ならぬ55番松井がマイナーで奮闘中。まだまだ実力はメジャーの筈だから早く上がって欲しいね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年05月19日 06:40
観させることになって申し訳ないことをしました。
すいませんです<(_ _)>
たしかに切りすぎてせわしなくなってましたね(^^ゞ
あれだったら、前編、後編に分けて、ノーカットで放映したほうが・・・・開局55周年作品なんだし・・・・・・
なるほど、あそこを切ったかと、・・・切ったらこう繋がるかと思いながら観てました。

ジャイロコプターなどレトロな雰囲気は楽しめましたです。
宮崎駿さんの作品の影響もあるでしょうし、宮崎さんは、江戸川乱歩を読んでいるでしょうね。
次の世代から次の時代へと影響は受けるもので・・・・

宮崎さんの『宮崎駿の雑想ノート』という本をもっていますが、現実の武器から宮崎さんの空想の武器から、レトロな兵器がゾロゾロ出てきて、宮崎さんの発想の種が想像できて面白いです。
『紅の豚』の元ネタの漫画『飛行艇時代』も載ってます。
作り手の発想の源にふれるのも楽しいです。

55番、はやくメジャー昇格してほしいです。
オカピー
2012年05月19日 19:57
ねこのひげさん、こんにちは。

いえいえ、自分で決めたことですから全然問題ないです^^
大いに文句の言い甲斐のある放映でしたので、感謝したいくらいです。
仰る通り前編・後編にしたほうが良かったですね。どうせそれほどやる作品があるわけでもないし。

宮崎氏は、古今東西の文学や映画を非常に勉強していまして、「不思議な国のアリス」や「ピーター・パン」などの影響を結構持っていると思います。
「ルパン三世 カリオストロの城」は僕が少年時代愛読したルブランの原作を読んだ跡がよく伺えますし、或いは乱歩を研究していないとも言えないですよね。

>『宮崎駿の雑想ノート』
ほーっ、そんな本があるですか。

全然話が解りますが、登場人物の笑い方がご本人にそっくりなので、ビデオにでも録って笑い方を研究しているんだなあと思ったことがありますよ。

>55番
余程ひどくない限り、実績のある選手ですし、負傷者が出ていますし、それほど良い成績を上げなくても昇格するとは思います。

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