映画評「アンダルシア 女神の報復」

☆☆(4点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・西谷弘
ネタバレあり

アマルフィ 女神の報酬」の2年ぶりの続編で、監督も前作から西谷弘が続投しているが、僕は新味がある分だけ前作の方を買う。こちらのほうが終盤の展開に意外性があるように見えても、途中にまともな布石が置かれていない驚きなど大した意味がない。

G20に参加する財務大臣に付き添ってパリにやってきた要人警護の外交官・織田裕二(役名:黒田康作)が、アンドラ国のホテルで邦人が殺される事件を調べる為に現場へ赴き、第一発見者である投資銀行の日本人通訳・黒木メイサから事情聴取しているインターポールの伊藤英明と遭遇、言動が怪しい黒木嬢の周辺をうろちょろ、被害者が警視総監の息子であり、暴力団のマネーロンダリングが絡んだ詐欺事件であり、その金が最終的に日本国首相に渡っていることから、日本国官憲の意向を受けて事件を極秘裏に処理せざるを得ない伊藤とバッティングしつつ、真相と犯人追及の手を緩めようとしない。

主人公が名目は外交官ながら事実上のテロ対策要員であるという設定の面白さが二度目になると余り味わえず、事件解明の過程がややこしいだけで何を眼目にしたかったのか一向に解らず終い。
 ほぼネタばれになるが、織田君が事件を解明するというより結果から判断すればメイサ嬢の勇み足気味の行動が目立ち、ミステリー的に不甲斐ないこと甚だしい。従って、犯人探しのミステリーとして本気で作っているとも思えない。
 かと言ってその過程におけるサスペンスも、カーアクションの末の銃撃戦など幾つかあるが概して形式に終始、全くヒヤヒヤさせられない。このシークェンスなどそもそもカット割りが悪くて何がどうなっているのか解らないところ多し。

昨日の「インサイド・ジョブ」と多少重なる部分として実際このような投資銀行がらみの悪計が跋扈している現実を反映させた点はアイデアとして悪くないが、登場人物がかき回し過ぎてその部分の面白さが浮かび上がるでもない。

そうなると、上の指令に背いて単独行動に走る織田君に伊藤君が感化されて行くのが一番の眼目らしいと思えて来るが、これとてミステリー的に展開させる為に表面に出すことができないので中途半端になっている。

以上、本作の眼目についての一考でありますが、思うに「クライマーズ・ハイ」のように組織に対して属する人間がどう関わっていくかというテーマをはっきり打ち出せばもっと映画的にしっかりした作品となったはずである一方、そうできない大人の事情があるのも理解しているつもり。

いずれにしても、どこか一つに焦点を当て、それを核として作らなければ、まずいごった煮ができるだけであることを示したような作品になっている。「容疑者Xの献身」ではなかなか感心させられた西谷監督としては大分落ちるが、彼としては脚本が悪いのだよと言いたいところだろう。

こういう時は馬鹿にされるのを覚悟で観光映画に徹すれば良いのじゃよ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年05月11日 05:35
これはすき焼きか?水炊きか?五目煮?ヤミ鍋?というところですかね。
最近の日本映画は、背骨のない映画が多いですね。
『宇宙戦艦ヤマト』なんか、あと数秒で地球滅亡というときに、ダラダラとラブシーンなんかするなよ?という感じでしたしね。

観光映画!けっこう!!
『ローマの休日』はすばらしい観光映画でしたからね。
いまも上戸彩嬢を起用してCMでオマージュ作品にしているくらいですからね。
オカピー
2012年05月11日 18:03
ねこのひげさん、こんにちは。

一見格好になっていますが、僕には一体何を見せたかったのか一向に解らなかったであります^^;

>『宇宙戦艦ヤマト』
「海猿」の二番目も全く同じコメントをしましたし、変てこりん感では「ヤマト」の凌いでいるのではないかと。
“鶏と卵”論争みたいなもので、どちらが先なのか解りませんが、観客のレベルを上げ、それに見合うように映画作家たちがレベルを上げて行き切磋琢磨すれば、こういう変てこなものは減っていくはずなんですがねえ。

>観光映画
自分たちの審美眼を棚に上げて、観光映画をバカにするな、でありますよ^^
2012年05月19日 22:14
プロフェッサー、こんばんは。

このシリーズは、私にいわせるとミステリーではないですよね。東野圭吾同様。

まあ、織田裕二の映画としかいいようがない。
ただ、私はまだ、まだこちらのがマシだと想います。前作は、アマルフィというタイトル自体がいただけない。だいたいアマルフィに行く意味づけが弱すぎるんですよね。意味はあるのだが、弱すぎる。それがタイトルになることが許せないんです。内容というよりもタイトルづけが気に入らないだけなんですけど。

タイトルというは重要ですからね。

で内容は、ミステリーでは決してないし、サスペンス?アクションでもない。やっぱり織田裕二の映画ですね・・・。


オカピー
2012年05月20日 21:00
イエローストーンさん、こちらにもようこそ。

>織田裕二の映画
なるほど。
いずれにしてもごった煮でしたねえ。

前作との比較では、こちらのほうが格好になっているような気がしますが、全体としては似たようなものという印象。なら新味がある分前作の勝ち、というところですが、どうも世評ではこちらのほうが分が良いようで、10人中9人くらいはそんな評価みたいです。

>タイトル
要は、“ア”で始まり、“女神”を入れたいだけなんでしょう?
次があるとしたらどこかなあ。アフガニスタン・・・まさかね(笑)。

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