映画評「誰かが私にキスをした」

☆☆(4点/10点満点中)
2010年日本映画 監督ハンス・カノーザ
ネタバレあり

全編二画面で通す実験的な会話劇として相当興味深い「カンバーセーションズ」を作ったハンス・カノーザの次の作品は何と日本が舞台の、日本映画である。但し、舞台が東京のアメリカン・スクールで日英半分ずつくらいの台詞で進行する為ムードに独自の軽味(かろみ)を感じさせるところがあるのが唯の邦画ではない所以。

階段から落ちた女学生・堀北真希嬢が上級生の松山ケンイチ君に助けられ近い出来事の記憶だけを失った状態で学校に復帰する。
 彼女はイヤーブック(年鑑)を作っている部長で、アメリカ人学生アントン・イェルチンという恋人とは既に関係破綻状態であることなどが判って来るが、従来の明るい性格を失っていた彼女は兄の死んだ過去を消そうとしている松山君が同病相憐れむように好きになり、精神のもろい彼との関係を維持する為に、イヤーブックを一緒に作っていた“友達”と称する同級生・手越祐也君に色々と助けてもらううちに、実は相思相愛だった手越君への思いが蘇る。

アメリカン・スクールを舞台にしている以外は水準的というか、大昔に観ていたノスタルジックで爽やかな青春映画のような感じさえあるが、アメリカン・スクールという要素によって醸成されたムードは、日本の典型的青春ロマンスとも、アイドル映画の甘さとも違う、妙にあっさりしたものである。僕の好きな洋楽に喩えてみれば、1960年代後半に流行ったほんのちょっとだけロック要素の入ったポップス即ちバブルガム・ミュージックみたいな後味、即ち軽さとは一味違う軽味があるのである。

本作の良い部分としてひとまず挙げておきたかったわけだが、ただそれ以上に欠点が目立つ映画であることは否定のしようがない。特にお話の進行における時間感覚(管理)が全くなっていないのが気になる。恐らくこれにはカノーザ監督に何らかの狙いがあるのだろうが、常識的な時間感覚で進行する映画を見慣れている僕らには相当変てこな印象を与える。
 例えば、松山君が合格した南カリフォルニア大学に(見学に?)行きヒロインが呼ばれるエピソードの前後たるや何が何だか解らない。彼女が帰った直後の場面で彼の家に電話をかけると、彼は長野の病院で療養中なのである。そもそも彼がカリフォルニアへ出かけた理由がよく解らない。どうも兄のお墓がカリフォルニアにあるらしいのだが、いずれにしても、この一連のシークエンスは著しく舌足らずだ。
 全体がこの調子で、“恐らく狙い”と解りつつも効果として外に現われていない以上、現状では場面の繋ぎが下手糞な映画にしか思えないので大いに損をしている。

その良い部分と悪い部分を別にすればごく水準的な青春ロマンスという全体評で問題ないものの、アメリカン・スクールのことが少し勉強出来る部分が面白い。

オールド・ファンの皆様、1910フルーツガム・カンパニーを聴きたくなって来ませんか?

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年05月02日 04:36
タイトルが古き良き時代を思い起こさせるし、堀北さんか・・・・いいね・・・どれどれでしたが・・・・・・
ちょっとね?でした。
『カンバセーションズ』の上品さというか大人的な味わいが未消化なまま出された感じでありました。
青春ものだからしかたないかな?
オカピー
2012年05月02日 12:10
ねこのひげさん、こんにちは。

色々と実験的なことをやりたがる人らしく、「カンバセーションズ」でも上手く行っているところとそうでないところがありながらも幕切れの上手さに感心しましたが、こちらは写真の扱いなどポップなところが浮いてしまいましたね。
大体カメラを放り投げて写真を撮るなんて、映像に携わる人にしては機材を大事にしていないのが気に入らない(笑)。

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