映画評「プリンセス トヨトミ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・鈴木雅之
ネタバレあり

万城目学の同名小説を鈴木雅之が映像化したファンタジー。

部下の鳥居忠子(綾瀬はるか)と旭ゲンズブール(岡田将生)を引き連れた会計検査院副長・松平元(堤真一)が、OJO(大阪城址整備機構)なる組織の監査を終えた後忘れた携帯電話を取りに戻ると職員が誰もいず極めて不審だったので再調査と相なると、お好み焼屋“太閤”を経営する真田幸一(中井貴一)は自ら独立国たる大阪国の総理大臣であると正体を明かし、地下に作られた国会議事堂に案内する。
 一方、彼の息子・大輔(森永悠希)を巡る子供同士の争いに首を突っ込んだ鳥居が安全の為に少年の幼馴染である橋場茶子(沢木ルカ)を保護したのを拉致と誤解された為、条件を満たす“大阪国”男子が「すは一大事」と集まり、日本国(会計検査院)対大阪国が一触即発の状態になる。

400年に渡って大阪町民たちが豊臣家を守る為に一致団結、明治政府との間に協定を結んで成立した大阪国が存在していた、という奇想天外なパラレル・ワールドもので、お話がどういう風に進むか全く予想できない為前半はまだるっこいながらもかなり興味を持って観続けることが出来るが、大阪国の存在が明らかになってからはお話の進行と共に手詰まり感が強くなってどんどんつまらなくなる。文学、映像作品を問わず、この手の奇想天外なお話によくあるケースである。

僕と今闘病中の父親との関係と重なるところのある終盤は目頭が熱くなるが、勿論映画の手柄ではない。

残念なのは主人公の周囲を固める個性的なキャラクターが余り生かせていないことで、ミラクル鳥居はミラクルらしいことは一向に起さないし、ゲンズブールがハーフである意味合いも薄く、二人のコント的な関係をもっとお話に利用できれば手詰まりを感じさせずぐっと興味深い作品になっただろう。

国家存続の危機において“戦”に参加しない女性陣も家で待機と相成り、大阪の機能が完全に止まる・・・ということなのだろうが、映画を観るだけではこの設定への説得力が薄い。大輔の性同一性障害らしき設定もさほど効果を発揮せず、小手先の珍奇さ程度に留まっている。

因みに、有名な実在人物が登場する作品や原作が人口に膾炙している作品を除いて役名ではなく俳優でお話を説明することにしている僕が役名を書いたのは、無論、それらが歴史上人物の名をもじり、若しくはその子孫であることを示しているからであります。

最近の大阪からのニュースを聞くと、別の理由で大阪国ができそうな気分になりますネ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年04月22日 07:06
こういうパラレルワールドものは、一時期、戦記物で流行りましたけどね。
もし、日本が第二次世界大戦に勝っていたらとか、織田信長が本能寺で死ななかったら・・・・みたいなのが、ずいぶん出版されましたけどね。
まあ、所詮あだ花ですから、じっくりと構成をしないとおもしろい作品にはならないですね。

現実の大阪国のほうが、はるかにおもしろそうで、この勢いで行くと、ホントに政権奪取しそうですね。
やんなはれ!やんなはれ!ですな。(笑)
2012年04月22日 11:44
プロフェッサーこんにちは。

たしかに前半のミステリアスな部分、期待からは尻つぼみな感じですよね。仰る通り、この手の大半にありがちなパターンです。

ただ、失礼ながらパラレルワールドなんですかね。私の中では平行世界という認識がないんですが・・・。あの描いている映画の世界が全てのような・・・。私の認識が違うのかな・・・・。

鳥居が、仰る通りでもっとミラクルを起こすのかと私も期待していたんですが、残念でした。
オカピー
2012年04月22日 11:45
ねこのひげさん、こんにちは。

>戦記物
僕が大いにずっこけ、寺脇研氏が絶賛した「ローレライ」もその口ですね。
しかし、それまでも余り信用できなかった寺脇氏についてはあれ以来全く信用できなくなりましたね。
大体肩より下まで髪が伸びているロン毛の憲兵が出てくる映画など、いくらパラレル・ワールドものとは言え、誉める気にもならんですわ^^; 潜水艦に乗っている連中が小汚い長髪でもある程度構わんですが。

>あだ花
面白い発想が生まれた瞬間にほぼ満足しちゃうのでしょうねえ。

>現実の大阪国
大阪とは別に、東京都知事・石原慎太郎氏は右派すぎて嫌いだけれど、彼がああいう言動をしなければならないのは明らかに国(政府)に問題があるわけで、国を動かす為に考えたのであろう今回の尖閣諸島買取案はオリンピック誘致より数段良いと思います。
2012年04月22日 12:26
たびたびすみません。

パラレルワールドですが、私の認識がちがっているかもしれませんね。
たしかに史実、我々の現実世界からすればもうひとつの世界、大阪ということで、架空戦記などパラレルワールドものとなるんですね。

ただ、私に言わせると映画自体、全ての作品が・・・、という気がします。

私の認識ではその世界観、映画の中で存在する二重世界という認識があったもので・・・・。
オカピー
2012年04月22日 12:35
イエローストーンさん、こんにちは。

おっしゃる通りなんです。
あくまで現実と比較しての大法螺フィクションという意味での、パラレル・ワールドものという意味で使いました。

そう、映画というのは殆どパラレル・ワールドなんですよ。
ただかなり現実に近いフィクションにはこの言葉は不適切ですから、限られた作品に用いるわけで、かつての日活アクション即ち無国籍映画もその意味では典型的なパラレル・ワールドものですね。無国籍映画という表現があるので敢えて使いませんが。

あくまで映画を紹介する時に便利なのが用語ですから・・・。
例えば、ヌーヴェルヴァーグ、ニューシネマと言っても皆同じタイプの作品ではないように、僕は説明する時時間短縮の為に便利な言葉として使っているだけです^^
シュエット
2012年04月23日 10:34
大阪人のシュエットから映画みてないけどコメント。
大阪というところはほんと人材がいないのかしらと思うこの頃です。♪ぼくらをの~せて、ど~こへゆく~♪ひょうたん島みたい。さて冗談はよこにおいて…。
>小手先の珍奇さ程度に留まっている
映画全体も小手先程度かなと。原作はそれなりに面白かったんですけどねぇ。
こんな作品、フランスのアメリの監督ジャン・ピエール・ジュネさんあたりだったら奇想天外の面白くブラックユーモアたっぷりで描くことでしょうね。好き好きは有りそうで、一般受けしないけど。最近は一般受け狙いが多いナァ。映画館も話題作でも平日のがら空き状態の状況だから製作会社も算盤弾くんでしょうねぇ。小手先の算盤はじくから映画も小さくつまらなくなってくる。悪循環だなあって思う。オスカーとった「アーティスト」それから私的ピカイチ映画「ドライヴ」早くWOWOW放映されてオカピーさんに観ていただきたいわ!
オカピー
2012年04月23日 17:40
シュエットさん、こちらにもコメント有難うございます。

>原作は
わっ、原作をお読みになっている!?
僕の趣味では、こういうのなら、京極夏彦みたいな衒学的ミステリーのほうが惹かれるなあ。全然読んだことないけど(笑)。

>ジャン・ピエール・ジュネ
ああ、その感覚はよく解ります。
こういう薄っぺらい画面では面白くなるものもならない気がしますね。

>製作会社も算盤
10年くらい前に(映画館で見せる形の)映画も長いことないのではないかと予測しましたが、思ったより早くやって来るかもしれません。
まして原発どうのこうの言っている時に、一人の為に冷暖房を利かしてフィルムを回すのはエネルギーの無駄である・・・どこかの誰かが言い出さないとも限らない。
田舎の平日の昼間なんて確実に3人以下ですよ。
TVで観る為の映画は半永久的に続くでしょうけどねえ。

>「アーティスト」
TVで初めてCMだか何だかを観た時、何で今頃サイレント映画をやってるの?と思ったくらい鮮やかにサイレント映画が再現されていましたねえ。

>「ドライヴ」
暫くサスペンスから縁遠かった北欧産、最近あちらさん、頑張っていますねえ。
楽しみにしています。
一年くらいあっという間に経ってしまいます・・・
シュエット
2012年04月24日 09:07
>わっ、原作をお読みになっている!?
でしょ!好みじゃない。
亭主が出張の友に読んだみたいで結構面白いぞって言われて読みました。それなりに楽しめた本。でも自分じゃ金出して買わない本。今はもっぱら海外ミステリー小説ですわ。今日は仕事帰りに久久ゲイリー・オールドマンの真骨頂みれるかと期待して「裏切りのサーカス」見にいく予定。ジョン・ル・カレ原作のスマイリー三部作の一つ。役者がどんな演技を見せてくれるか!最近はイギリス勢頑張ってるのも嬉しい。コリン・ファースもMI6の情報部員として出ている。こうやってチョコチョコとではあるけれど、おおっ!って思える映画出てくるから期待してしまう。
追記:「ドライヴ」は是非是非のお奨めよ!
何時ごろ公開かはわからないけれど、ディカプリオのギャツビー!観ようかどうしようか?思案中。ガックリはほぼ予想できるんだけど。前の「華麗なるギャツビー」の役者たちを超えるほどの存在感のある役者って見渡しても居ないですよねぇ。
オカピー
2012年04月24日 13:06
シュエットさん、こんにちは。

暫くお金を出して本を買っていません。
図書館で読む本がなくなったので、偶然知り合ったキリスト教関係者から寄付の形で聖書を買って数ヶ月かけて読み終えたところ。
旧約を読んでいた頃は気分が落ち込んでいて数ヶ月かけましたが、新約の頃になるとかなり改善されてあっという間に読んでしまいました。新約の方が面白いということもありますが。

四月から父の具合が悪く今日まで三週間入院している為ご機嫌な日々というわけにはいきませんが、まあ仕方がないと様子を伺っている最中。以前より頻繁に出かけるので映画も本もペースが落ちていますが、最近「日本児童文学大系」というのを発見、一巻目から読んでいこうと思っています。
児童文学と言ってもここ暫くは明治時代のもの、若松賤子訳の「小公子」は良いですが、巌谷小波や森田思軒なんてのは文語でなかなか進みませんよ。今、森田思軒訳によるジュール・ヴェルヌの「十五少年(漂流記)」を読んでいます。

>海外ミステリー
少なくとも日本のものよりは読む気になりますね^^

>「裏切りのサーカス」
最近雑誌も買わなくなったし、新作はとんと解らんですわ(苦笑)。
観た映画は、題名くらいはほぼ忘れませんけど(最近ちと怪しい)。
ル・カレは映画化作品を観たくなる作家ですね。

>ディカプリオのギャツビー
IMDbで調べたら現在編集中みたい。
大作向きのバズ・ラーマンが監督なのでちょっと期待してみたくなりますが、どうですか。

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