映画評「我らが愛にゆれる時」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年中国映画 監督ワン・シャオシュアイ
ネタバレあり

北京の自転車」(2000年)で注目したワン・シャオシュアイの新しい作品だが、白血病を抱える親の苦闘を描いたお話は普遍的・・・どころか近年再び流行気味でさえあり、前述作ほど新味なく、作劇も鮮烈とは言い難い。

とりあえずお話をば。

再婚した夫チャン・ジャーイーと平凡だが幸福な生活を送っている不動産仲介業担当者リュー・ウェイウェイは、ある日5歳になる娘が白血病と知る。彼女自身の、そして実の父親である建築業チェン・タイシェンの骨髄が不適合だった為に、前夫の精子を使った人工授精を試みるが3回も失敗、法律上許されなくなった為肉体交渉に及ぼうと話を持ちかける。

その経緯に、それをやがて知ることになるチャンと、客室乗務員をするチェンの妻ユー・ナンの心境を交えてじっくり描いて、難病映画にも大人の鑑賞に堪える作品が増えて来たなと思う反面、適合する骨髄を求めて次の子供を作るというのは「私の中のあなた」(2009年)で大体的に扱われているし、「クリスマス・ストーリー」(2008年)でも要素の一つになっていたので、またかという思いがないでもない。

ただ、中国では一人っ子政策という厄介な規則がある為そこを掘り下げて行くかと思いきや、結局本作では本格的に扱われず、新しい夫婦の間に設けられた子供には特に問題がないのだろう、という勝手な想像をめぐらすことができる程度である。

寧ろ、もう本当の自分の子供が作れないチャン氏の心境と、中年になって来たユー・ナン女史の焦燥感のほうに感情移入しやすく、そこにどの程度の感銘を受けるかによって評価も分れよう。
 ユー・ナンが飛行機の不調で「死ぬか」と思った時に命について思いを馳せて夫の行為を認めるというのは作り物めいており、チャンは善人至極、自発的に「自分の子供として育てる」と言い出すところではウェイウェイの携帯電話の扱いが伏線となって一応上手いのだがここもやや作為的。彼はそれで性交渉による子供と十分知った上で上記発言をするわけだから、中年男性としては昨日UPした「ブルーバレンタイン」のライアン・ゴスリング君以上に素直に“よく出来た人間”と感心つかまつる次第。

丁寧に作られたドラマだが、素材に新味がなく、アングルの付け方はまあまあ、誠に上出来だった「北京の自転車」と比べると落ちると言わざるを得ない。お話にもっと一人っ子政策の問題を絡めることが出来たらもっと興味深くなっただろうが、当局の目を意識しないわけにはいかないお国の事情がある。

愛ゆえに by 10CC

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年03月09日 06:21
手あかのついた素材で、新鮮味がないというのが問題ですね。
白血病と聞いただけで観ない人が多いでしょうね。
何作あるんですかね。
集めて特集上映できそうですね。
オカピー
2012年03月09日 20:03
ねこのひげさん、こんにちは。

今日父親の大動脈瘤の手術に付き合う必要がありまして、3時半に目が覚めて眠れず、僕としてはとんでもない早い時間にUPしました。

1970年代のただ子供や若い女性が死んで紅涙を絞るなんて程度の低い作品は減ってきましたが、お話が似ていて食傷気味であることは確か。

>白血病映画
ふーむ、少なくとも30本は観ていますかな(笑)。
ねこのひげ
2012年03月10日 06:36
ずいぶん、早い時間帯のUPだな?とは思いましたが・・・・
父上の手術が理由でしたか。
しかし、いまは医療技術も発達して、大動脈瘤をクリップで止めて終わりみたいな手術が多いようですね。
大丈夫でしょう。
オカピー
2012年03月10日 19:03
ねこのひげさん、こんにちは。

父の場合は大きなところにステントグラフトという人工血管を通し、小さなところはコイルみたいのを入れて破裂を防ぐようにしたようです。
今日は自分が内臓をCTで診てもらう為に姉夫婦に面会に行って貰いましたが、術後経過はまず順調のようです(ちょっと熱あり、との報はあるものの)。
こちらは大腸がんの疑いありで、13日に胃カメラ、19日に大腸精密検査に行って参ります。心療内科も加えて病院通いが日課になってしまいました(笑)。
ねこのひげ
2012年03月10日 19:28
そのステントグラフトというコイル状の人工血管はテレビで観ましたよ。

オフクロは、大腸がんの中期で手術しましたが、再発せず、88歳まで14年間生きました。
最近は、大腸がんも、末期でもないかぎりだいじょうぶなようです。
オカピー
2012年03月10日 22:53
ねこのひげさん、こんばんは。

2年前に狭心症の手術と一緒に行う予定もありましたが、場所が悪いので当時の技術では難しいと言われたのに、2年で簡単にできるようになったことにビックリ。
そのアイデアを授けたのが、高校時代の友人だったのも感慨無量です。

大腸がんも早期ならまず問題ないようですね。
年金を貰えるまで生きていたいなあ^^

大腸がんの不安も嫌だけど、自分の期待したとおりに日程が進まないことが多くてイライラしています。これが僕の病気たる所以なんでしょうね。普通の人ならそんなことでイライラしないはず。
とりあえず早く母の一周忌法要を終えて、その前に溜まりに溜まった要件が終れば良いのですが、他力本願なのでどうにもなりません。
シュエット
2012年03月12日 11:17
本作、録画はしてるんだけど、さほど食指が動かずそのまま。
オカピーさんのレビュー読んで、食指伸びなかったイメージどおりみたいで、本作鑑賞は「まっ、いいか」の心境(笑)
最近の映画って、苦悶や葛藤も内面にグサリと食い込むところまでいかず表面をさらりと撫でるだけで、苦悶する割には堂々巡りっぽくて、記事ある「クリスマス・ストーリー」もコメント入れさせていただきましたが、いささか辟易、食傷しました。
オカピー
2012年03月12日 17:39
シュエットさん

「北京の自転車」には大分及ばないと思います。

しかし、僕の“「愛ゆえに」by 10CC”は誰にも理解できなかったようで、ちょっと残念。
10CCは70年代英国の有名なロック・グループなんですが、10CCというグループ名は男性が一回●●する●液の量X4(メンバー数)・・・と言われたことがあるんです。

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