映画評「座頭市関所破り」

☆☆★(5点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・安田公義
ネタバレあり

やっと映画を観る楽しみが戻って来て、時間も空いたことではあるしと、二ヵ月半ぶりに「座頭市」を観る。本作は安田公義による第9作で、子供や年寄りがやたらに絡んでくるあたりは彼らしくほのぼのとして悪くはないが、浅井昭三郎による脚本はお話が全く破綻している。いかな粗製乱造時代と言えどもこれはちょっとひどいのではないですか。

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旅を続ける市(勝新太郎)がやくざ風な男・千波丈太郎から宿場で女中をする妹・滝瑛子への手紙を頼まれる。その旅館で同宿になったのが、幕府に直訴する為に旅立って行方が解らなくなった藤岡の庄屋の娘・高田美和。市は彼女の父捜しを手伝ううちに、千波が税金を巻き上げたい親分・上田吉二郎や代官に騙されて庄屋を殺した挙句に島送りになった本人であることを知る。その彼が復讐の為に戻ると知った親分連中が用心棒を雇う一方で、美和嬢を略奪して関所に閉じ込めてしまう。

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と、書くと何が問題なのか解りにくいので、ちょっと解説致します。

直訴自体が当時では死に値するはずなのに・・・という時代考証上のミスはさておいて、千波が島送りになったということは庄屋殺しは現在風に言えば公式の裁判にかけられたことを意味する、即ち誰もが知る事実であって、美和嬢が最初から父親を捜す必要はないのである。ここが最大のミスだが、そもそも自分たちの懐を肥やそうとする悪漢たちがわざわざ復讐する機会をお膳立てするのように実行犯を生かしておくのも変でござるじゃろ。

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庄屋殺しが内密に行なわれ、悪漢一味が闇に葬り去ろうとして実行犯・千波を搬送しているうちに彼が逃亡する、といったストーリー展開だったら、美和嬢が父親を捜すうちに危険にさらされ、それを市が助けるというお話が綺麗に成立するのに。一味が拉致した彼女を関所に拘留するというのも訳の解らないこと甚だしい。

人情味に味の良いところがあること、サイコロを切る場面を筆頭にした幾つかの殺陣に免じて、☆☆★を進呈致しますが、お話は☆★くらいですぞ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年03月04日 06:30
勝新は、ストーリーなんか気にしていなかったんだ!というのがよくわかる映画ですね。
それとも歴史的事実なんて知らなかったのかな?
ただひたすら座頭市をかっこよく演じたかったような・・・・
サイコロ斬りはかっこ良かったですけどね。
オカピー
2012年03月04日 21:17
ねこのひげさん、こんにちは。

この程度のお話なら、東野英治郎時代の「水戸黄門」のほうが良く出来ているくらい。

それはともかく、サイコロを始め、物を二分にする場面が多く、それに拘った作品だったようです。勝新の居合抜きは本当に見えないくらい速くて、それだけでかなり満足してしまう僕ですが(笑)。
蟷螂の斧
2019年05月19日 11:09
>サイコロを切る場面

これは確かに気分がスカッとする場面です

>ショバ代

この土地に来る芸人たちも請求される
三河万歳のダイマル・ラケットが笑えます

>女史
>頭の良い、ある程度の年齢に達した女性という意味

それで良いと思います。ちょっと思い出したのが沖雅也の最高傑作「俺たちは天使だ!」
当時、若くてイケメンの神田正輝に惚れるトップ屋(結城美栄子)の事を探偵事務所のメンバー達が「女史」と呼んでいました

>昨年自分で作ったCDの第一曲がこれです^^

すごい

>パパヤ

それほど意味が無い。洋楽の歌詞でも案外そういう事って多いでしょうね
オカピー
2019年05月19日 22:42
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>これは確かに気分がスカッとする場面です
勝新の居合抜は本当に速いんだ。これを見るだけで結構満足してしまう。

>ダイマル・ラケット
出演していましたか。7年も前ではさすがに憶えていません^^;


>俺たちは天使だ!
おおっ、題名はハンフリー・ボガートが主演した「俺たちは天使じゃない」のパロディーですね。
 ドラマの中でも「女史」は使えない時代かな? 困ったものだねえ。

>CD
複数のCDから色々CDを作っています。

>意味がない
わが群馬が生んだ(笑)由紀さおりが歌った「夜明けのスキャット」は結構ショッキングでした。暫くスキャットだけで歌詞がない歌謡曲なんてなかったですからねえ。因みに「夜明けのスキャット」の入ったCDも作りました^^v

洋楽で面白いのがありましたら、ご報告いたします。
蟷螂の斧
2019年05月24日 20:41
オカピー教授。こんばんは。

>勝新の居合抜は本当に速いんだ。

佐藤慶が出る作品でも、それが生かされました。米の量を計る枡

>「夜明けのスキャット」

Sound of silenceに似過ぎです・・・・

閑話休題。
大嫌いだった元同僚(既に故人)の言葉が逆に今はありがたく思える今日この頃。
オカピー
2019年05月25日 18:57
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>佐藤慶
「座頭市の歌が聞える」という作品に出ていますが、それでしょうか。これは、録画はしてありますが、未見(再鑑賞の意味での未見かも?)です。

>「夜明けのスキャット」・・・Sound of silence
余り意識していませんでしたが、そう言われれば似ているところがありますね。
Sound of silenceと言えば、レターメンがカバーでヒットさせた「涙のくちづけ」Sealed with a kissと出だしが似ているなあと子供の時に思いました。四半世紀くらい前に東京に来た香港の知り合いがカラオケで"Sealed with a kiss"という曲が歌いたいのだけど、と言われたものの、それが「涙のくちづけ」と原題名とは知らずに対応できなかったことが、洋楽には詳しいと自負していた僕としては甚だ残念でした。

>大嫌いだった元同僚(既に故人)
そういうことはありますね。
 子供が親の言ったことを恨んだりすることもありますが、大人になってみて“親心だった”と解るのに通じるでしょうか。

蟷螂の斧
2019年05月28日 20:38
オカピー教授。こんばんは。

>佐藤慶
>米の量を計る枡

「笠間の血祭り」です。

>「涙のくちづけ」

今聞いています出だしが似てますね。
S&Gがイギリスのフォークソングを参考にして作曲しているというのを読んだ事があります。
良い影響を受けて作曲するのは良い事だと思います

>大人になってみて“親心だった”と解るのに通じるでしょうか。

仰る通りです。いつもありがとうございます
オカピー
2019年05月28日 22:49
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「笠間の血祭り」
シリーズ最後の方の作品ですね。これは録画してあったかなあ?

>「涙のくちづけ」
小学生の頃面白く聞いていたものです。

>S&G
最初のアルバムは半分くらいがトラディショナル(民謡)ですし、後年発表する有名な「スカボロー・フェア」も英国の古いバラッドを使っていますね。
 日本には“影響”という観念が解らず、何でもパクリと騒ぐ人が多い。これが非常に残念です。また、和歌や狂歌に本歌取りという習慣があり、1970年代まで日本映画が欧米の映画を真似に真似てきた(事実上のパクリという作品が相当多い)事実も知らずに、若い人々が“パクリ国家韓国”などと隣国を非難しているのもけしからんと思います。知らないことは恐ろしい。
蟷螂の斧
2019年06月02日 21:30
オカピー教授。こんばんは。

>これは録画してあったかなあ?

録画してあったなら是非

>「スカボロー・フェア」も英国の古いバラッド

北アフリカの曲を参考にしたのはボブ・ディランでしたっけ?

>何でもパクリと騒ぐ人が多い

嘆かわしいです

>和歌や狂歌に本歌取り

このあたりは、僕もまだまだ不勉強です・・・
オカピー
2019年06月03日 21:41
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>録画してあったなら是非
エクセルに録画リストというのを作ってありまして、これを見たらありましたね。最初から調べれば良かった。どうもすみませんm(__)m

>ボブ・ディラン
北アフリカ? 「モザンビーク」という曲がありますけど、モザンビークは南アフリカですしねえ。
 ディランと言えば、ディランの「北国の少女」の歌詞にバラッド「スカボロー・フェア」の一部を使っています。

>嘆かわしいです
こういうのも民度に入るので、僕の目には野蛮人に見えますよ。
蟷螂の斧
2020年01月22日 07:09
おはようございます。
昨日は座頭市物語(テレビ版)第5話を見ました。安田公義監督。
常田富士男が情けない男を好演していました。
富田仲次郎と松山照夫の悪役も良かったです。

>「8時だよ全員集合」

荒井注が抜けたらつまらなくなりました。
オカピー
2020年01月22日 21:15
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>安田公義監督
人情的な良いお話を作る監督ですが、切れ味が鈍いので、アクション映画の作り手としては苦手です。

>常田富士男
山田パンダを思い出しますねえ。
市原悦子も昨年亡くなり、「まんが日本昔ばなし」も今は昔となりました。

>富田仲次郎と松山照夫の悪役も良かったです。
蟷螂の斧さんの脇役知識は凄いです!
残念ながら、僕は日本の脇役は弱くて顔に見覚えがあっても名前は殆ど解りませんねえ。
富田仲次郎は画像を見てピンときました。松山照夫を見たことがあるかなあという程度。
勉強不足です・・・

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