映画評「ザ・タウン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ベン・アフレック
ネタバレあり

ゴーン・ベイビー・ゴーン」で注目すべき演出力を示したベン・アフレックの監督第二作で、原作はハメット賞を受賞したチャック・ホーガンの「強盗こそ、われらが宿命」。俳優としての彼にはどうも魅力が感じられないが、前作がフロックでなかったことが解れば、クリント・イーストウッド・タイプの監督としてご贔屓にして行きたい。

ボストンのチャールズタウンは昔刑務所があった場所で、父から子へと犯罪が引き継がれていくという、恐ろしい土地柄である。プロのアイスホッケー選手として芽が出なかったアフレックもその轍を踏むことになり、4人組強盗犯のリーダーとして活動しているが、ある銀行を襲った時に支配人の女性レベッカ・ホールを人質として拉致、殺人はしない主義である為目隠しをして海辺に連行した後解放する羽目になる。
 しかし、彼女の住んでいる場所が自分たちの近くであると知って彼女の行動を見張る為に偶然出会ったようにランドリーで声を掛ける。それが懇ろな付き合いに変り、彼女との生活を実現する為に足を洗う気になる。
 が、裏の実力者である花屋ピート・ポスルスウェイトの“彼女を殺す”という脅迫に屈してレッドソックスのフランチャイズ球場フェンウェイ・パーク襲撃に参加することを余儀なくされ、仲間のジェームズ・レナーが事前に案じたように彼の知る女性たちを色々と利用する捜査官ジョン・ハム率いるFBIの手に落ちそうになる。

社会派作品の狙いでなくして犯罪を生み出す町を舞台・・・という以上にテーマにした作品は珍しいが、素敵な女性と知り合って足を洗いたい彼の心境を描くドラマなのかスマートな犯罪サスペンスを作ろうとしたのか曖昧、二兎を追う者は一兎も得ず、といった印象が残る。どちらかに焦点を合わせればもっと良い作品になったはずで、現状ではお話がご都合主義的に運ばれている感が強い。

アフレックのショット感覚は前作同様悪くないが、ハリウッド犯罪映画の定石とは言え余りにも町の空撮でシークエンスを繋ぐところが多すぎる。実際にはシーン(日本語の“場面”ではなく本来のシーンの意味)ごとに空撮が出てくると言いたくなるくらいある。
 「空撮の多さは町がテーマであるから」という考えも解らないではないが、町を描くのは空撮でなくても出来るわけで、現状では所謂エスタブリッシュ・ショットにしか見えない、つまり、小津安二郎の廊下と変わらない。小津ファンとて数分に一回廊下が出てきたら嫌になってしまうだろう。

映画監督アフレックに関しては、前作より落ちるが、中途半端な職業監督よりはずっとしっかりした映画観を持っていると思われる。次回作に期待します。

いよいよ球春の到来。レッドソックスと言えば松坂君、今年はどうじゃろうか。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年03月21日 06:07
アフレックは、アカデミー脚本賞を貰っているから、そちらのほうに才能があるのかもしれませんね。
ロスアンゼルスの下町などに行くと、昼間から犯罪が起きてもしかたがないなと感じますね。
抜け出すのは容易ではなかろうと・・・・
ドジャーススタジアムの周りは、不法移民の巣窟だし・・・・
松井もどうするんですかね。このまま、ズルズルと引退ではさびしいですからね。
2012年03月21日 06:34
なにかとご多忙の中
連日の記事UP、おまけに
コメントへの返事と、少しでも
ご負担減らしましょうとこれからは
TBのみで加わらせていただくことにと
当方は当方で拙いアタマで画策しており
ましたのですけれど、このたびは
プロフェッサー自らの手を煩わせて
しまいましたね~ごめんなさい。(ぺこり)

本作、雰囲気はけっしてわるくないのですが
フタあけてみれば、けっこうイージーな
展開とその“頻繁空撮”が目立ったまんま
なんとか最後まで引っ張った感。(^ ^)
オカピー
2012年03月21日 11:13
ねこのひげさん、こんにちは。

>アフレック
僕は確実にそう思うんです。
役者としては僕には今一つでして^^

>ロスアンゼルス
出張した時も、夜は取引先の人と常に行動するようにしましたねえ。

>松井
成績だけ考えたらまだ十分なんですよ。去年も80打点くらい行っているでしょう?
代理人が強気なのが裏目に出ていると思います。
彼なんかは野球ができる方が重要と思いますけどね。
どうにも大リーグでできないくらいなら、日本に戻っても良い。今の体調ならセ・リーグでも出来そうですし。
オカピー
2012年03月21日 11:23
vivajijiさん、こんにちは。

色々とお心遣い戴き、有難うございます。
不安には弱い小心者ですが、こつこつやる根性だけは結構あるんですよ^^

映画も時間がある時に観るのでどうしても分割になりがち。邪道ですが仕方がありません。
記事のUPも同様で、時間の空いた時にラフな原稿を上げておいて少しずつ推敲していくのですが、どうしても足りず“てにをは”の間違いなどに後で気付くことままあり、こっそり直しています^^

>本作
そうなんです。
一見お話は繋がっていますが、何であんなに空撮を入れたんだろう、と思いますよね。
シュエット
2012年03月21日 14:42
春分が過ぎ、どこやら陽射しにも春を感じます。昨日は大阪城の梅林まで梅を見に。空に向って伸びる梅の枝。力強さを感じます。
さて本作。ベン・アフレックってもっとお軽い奴かなって思っていたけど、彼の監督作品、前作などをみていても映画に対するアプローチも、取り上げるテーマに対してもとっても真摯なものが感じられる。そんなところで本作も、前作に較べて甘さや緩さはあるものの、やっぱり良かったです。レッドフォードにしろイーストウッドにしろ、そしてアフレックにしろ、じっくりと時間の流れにそって描いているところがいいですネェ。空撮はこの町を出たいと渇望する主人公の心情を表しているんじゃないかな。何度も何度も空を見上げたくなる気持ち、飛んでいけたらって思う気持ち。私は気にならなかったけど。
オカピー
2012年03月22日 08:37
シュエットさん、こんにちは。

>春分
そう、気温が同じでも何となく冬とは違うんですよね。
我が家の誠に綺麗なスイセンが後1週間ほどで花を咲かそうとしています。
去年の四月五日花が好きだった母はこのスイセンをいとおしむように眺めてから家を後にし、そのまま帰らぬ人となりました。
姉の誕生日であり、孫の進学祝いをする予定の日でした。
今でも思い出し、目がうるうるとしてきてしまいます。

>アフレック
全然軽くなかったですね。
イーストウッドに似た映画観を持っていると思います。

>空撮
小津安二郎の廊下に、僕も登場人物の心情の沈潜を感じてしまうように、そういう狙いもあったのかもしれませんが、空撮でビル群を捉えるの(捨てショット)はフェイドアウト・インを嫌う昨今のハリウッド映画人の、シークエンスを繋ぐ常套手段となっているので、観ていて煩わしくなりました。
しかし、誰がこの小津手法の応用をハリウッドで始めたのかなあ。多分1980年頃だと思いますが・・・

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