映画評「マーラー 君に捧げるアダージョ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年ドイツ=オーストリア映画 監督パーシー・アドロン、フェリックス・アドロン
ネタバレあり

十数年前何かのCMのおかげで時ならぬグスタフ・マーラーのブームがあり、我がオーディオ営業部にも一枚CDがあった、などということを思い出した。

そのマーラーの伝記映画だが、51歳で死ぬまで続く19歳年下の妻アルマ(バーバラ・ロマナー)との愛憎を中心に綴っていて、大昔の伝記映画のように紀伝式には作られていない。
 しかも、史実に基づいて、夢判断で有名なジクムンド・フロイト(カール・マルコヴィクス)によって精神分析的に彼の苦悩の原因たる二人の不和の理由が突き止められていく、というアングルを付けたのは一応興味深い。
 
“一応”に留まるのはこのアングルを用いるまでもなく作曲家を目指していたアルマが若い時にマーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)に作曲を止められたことが一因であることが序盤のうちに解ってしまう為に効果を発揮できる余地がないからである。

もっと戴けないのが、関係者が画面に向って話す異化効果狙いの演出で、これはウッディー・アレンの演劇的なそれとは全く逆の目的をもって用いられている。優れたる映像作家であるパーシー・アドロンは何を勘違いしたのか、疑似ドキュメンタリーとして見せる為にそのスタイルを取り入れたのである。
 かくも有名なクラシック作曲家を扱う伝記作品においては、100年の時間を飛び越えるような印象をもたらす一種の実験となるが、一方で、現在においては異化効果どころか食傷気味の手法であり、かつ、違和感しか生まず、つまらぬ匠気に駆られたものだと失望するしかない。あるいは、共同脚本・監督の息子フェリックス・アドロンのアイデアだろうか?

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い・・・馬鹿げた流行とは言え、この種の作品に“君”をタイトル(サブタイトル?)に入れるかね、配給会社の諸君?

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年03月18日 05:33
以前、友人のレコード会社の奴が言ってましたが、芸能界には柳の下にドジョウが一匹だけでなく、何匹もいるそうで・・・・
それを狙ってつけたタイトルでしょうね。
マーラ、そういえば流行りましたな。
音楽的にはよかったけど、演出は失敗かな?
オカピー
2012年03月18日 12:52
ねこのひげさん、こんにちは。

意味不の解りにくいカタカナのタイトル、サブタイトルに頼る傾向等々邦題には気に入らないことばかりなので、一々文句を言わないことにしていますが、この映画の“君”はいかにもひどい。

>マーラー
お酒のCMでしたっけ?

>演出
クラシック作曲家は時代背景が古いのだから文字通りクラシックな演出で行けば良いです。マーラーに疑似ドキュメンタリーねえ^^;

この記事へのトラックバック

  • マーラー 君に捧げるアダージョ/Mahler auf der Couch

    Excerpt: 作曲家グスタフ・マーラーの生誕150年、没後100年を記念して制作された音楽伝記ドラマ。監督は傑作『バグダッド・カフェ』のパーシー・アドロンとその息子のフェリックス・アドロンが務める。主演にヨハネス・.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2012-03-17 12:06
  • マーラー君に捧げるアダージョ(DVD)

    Excerpt: 「バグダッド・カフェ」のパーシー・アドロンが、天才作曲家マーラーとその妻アルマの愛と人生、希望と苦悩を描いたドラマ。名曲誕生の裏に秘められた真実が明かされる。共同監督 ... Weblog: パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ racked: 2012-03-21 10:35