映画評「レオニー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本=アメリカ映画 監督・松井久子
ネタバレあり

彫刻家・デザイナーとして知られるイサム・ノグチの母親レオニー・ギルモアの苦闘の人生を描く伝記映画。

プリンマー大学を卒業したレオニー(エミリー・モーティマー)は、1901年日本から来た詩人・野口米次郎(中村獅童)の詩集を編集する為に雇われ彼と過すうちに事実上の夫婦関係になるが、日露戦争の勃発で差別が厳しくなったことを理由に彼が帰国した後、カリフォルニアの母の元でイサムを出産、やがて日本へ来てほしいという野口の願いに応じてやって来た(1907年)ものの彼には既に日本人の正妻がいて、彼女の仕事は彼の知人や小泉八雲=ラフカディオ・ハーンの遺児たちに英語を教える程度のものしかなく、息子と二人で別宅を作る。
 1918年芸術の才能に秀でたイサムを先に渡米させた彼女は2年後異父娘アイリスと帰国、何故か医学を勉強したがる息子に芸術家になるように説得、彼が個展を開くまでになった直後1933年に死亡する。

イサム・ノグチではなく彼の母親の生涯を描いたところが女性監督・松井久子ならではと言えるが、レオニーの自立心と頑固さはカリフォルニアで農業をしている母の血を引くもので、そんな彼女が「妻は夫の後ろを歩くもの」といった女性の社会進出とは程遠い明治時代の日本で10年以上過ごしたのも一種の頑固さ故、日本文化の一面に感心しながらも日本語を覚えようとしなかったのも自立心を守ろうという頑固さの発露だったのかもしれない。

その頑固さがやがて間違った道を歩もうとするイサムを芸術の道に引き戻すわけだが、その辺りの経緯は省略気味で、作り事でももう少しその点を強調したほうが主題に沿って良かったと思う。

反面、アメリカで詩人として立身しようとした野口米次郎にしても旧態依然の日本男子像で、日本人としては些か情けない感すらあるが、尤もレディ・ファーストと言われるアメリカにおいても女性が軽視されていなかったと言い切れないところがあるのは色々な作品で観る通り。

松井女史の展開ぶりはオーソドックスで、非常に見やすい。旧作「ユキエ」(1997年)よりぐっと堂々たるもので、澤井信一郎を思い起こさせるタッチは僕好み、物語が型通りとは言え高く評価したいところがある。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年02月21日 07:04
エミリー・ブロンテが『嵐が丘』を発表したときは、女性が小説を書くなんて許されなくて、非難をかわすため、男性名で発表したそうですから、欧米のレディーファーストもあやしいものです。
母親が、芸術家にさせようというのもおもしろいですね。現代だと医者にさせたがると思うのですが、あの時代、芸術家のほうが地位が高かったんですかね?
オカピー
2012年02月21日 20:45
ねこのひげさん、こんにちは。

>男性名
同じく英国のジョージ・エリオット、フランスのジョルジュ・サンドも男性名で執筆した女性ですね。時代的にもほぼ同じ。

>地位
20世紀初めなら医者は既に良い仕事だと思うので、母親が息子の才能を気付いて頑固に進めたのではないでしょうか(笑)?

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  • レオニー/Leonie

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