映画評「ジーン・ワルツ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・大谷健太郎
ネタバレあり

チーム・バチスタの栄光」の映画化で僕も名前を覚えた海堂尊の医療小説の映画化で、前述作のようなミステリー色はこの映画版では殆どない。

本作は大学で教鞭を取りながら、マリアクリニックという医院に出張産科医をしている菅野美穂が、重病の院長・浅丘ルリ子の代わりに、子供を堕胎したがっている少女・桐谷美玲、40手前という高齢出産の妊婦・南果歩、無脳症児を産んだことのある妊婦・白石美帆、明らかに代理出産である50代の風吹ジュンという四人の妊婦を診ている。

ここで教授への昇進が見えて来た田辺誠一に部下が彼女が代理出産をやろうとしていると告げたことから、現在の医療に問題意識を抱きながら出世も棒に振りたくない田辺は彼女に実情を尋ねることになる。ヒロインが過去に子宮癌になったことを示すことで風吹女史がヒロインの母親であることが比較的早めに解るように仕掛けがしてあり、その父親が田辺であることもすんなりと推測できる。

本作はミステリーとしての立場を最初から捨て、人間ドラマとしての構成も半ば排除している。群像劇であり、産婦人科にまつわる複数の問題を扱うには現在の観客が理想的な鑑賞時間と考えている2時間以内ではとても無理だからである。妊婦やその家族たちの苦悩や葛藤を一々描き、すぐに裁判沙汰になって産婦人科になろうとする医学生の少ないこと、代理出産の問題などを深く掘り下げて行くには映画なら「風と共に去りぬ」くらいの時間は必要であろうし、あるいはTVシリーズにするしかない。
 だから、作者は、生命の奇跡、出産の尊厳、医療の抱える複数の問題を、ある観客層に見せようとすることのみに設計を絞った。だから、ドラマとして薄っぺらくなったとしてもある程度仕方がない。大人が観る映画としては甚だ物足りないが、単純に企画の失敗とは言いたくないところがある。

ある台風の日に三人の妊婦が一緒に出産することになって大わらわ、浅丘女史まで出てくるという終盤はマンガみたいになって苦笑が洩れる一方で、それが日本の産婦人科が抱える状態をそのまま表していると理解すれば笑ってもいられない。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年02月10日 06:37
映画になりやすい話となりにくい話というのもありますしね。
先日、ソ連版の『戦争と平和』をやってましたが、あれだけ長くても見飽きないですしね。
いつから出産を病院でするのが主流になったんですかね。むかしは、ほとんど家で産婆さんが手伝ってしたものですがね。
最近は、風邪ごときで大学病院にいくのがいるので、病院が混雑すること混雑すること・・・(--〆)
2012年02月10日 21:29
プロフェッサー、こんばんは。

本作は・・・・・、医療ミステリーを期待して鑑賞した私だったので・・・・。

たしかに、笑っていられない現実というのもありますが、映画としてはとても残念でした。期待した内容と違ったのでね。

オカピー
2012年02月10日 21:58
ねこのひげさん、こんにちは。

病院での出産は昭和40年代に入ってからでしょうねえ。僕は当然家で生まれました^^
まして、田舎では都会に遅れること10年くらいではないでしょうか? 土葬も昭和50年近くまでやっていましたから。

僕が膵炎で通院している個人経営ながら準総合病院も去年辺りからひどく混み始めましてね。近所で潰れた病院もないのに、どうしてかなあ。
オカピー
2012年02月10日 22:03
イエローストーンさん、こんばんは。

僕もミステリー好きですから、そっちのほうが良かったですね。
ニュースを観ていれば解ることですから、個人的には余り有難くなかったです。
但し、ニュースや新聞を観ない人もいるので、こういう映画も必要なんでしょうね。

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