映画評「奇跡のシンフォニー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督カーステン・シェリダン
ネタバレあり

僕が割合好きな監督ジム・シェリダンの娘カーステン・シェリダンが監督した音楽ファンタジー。「オリヴァー・トウィスト」の現代版音楽ヴァリエーションと言っても良い。

孤児院に暮らす11歳のフレディ・ハイモア君は常に音=音楽が頭に降りてくる孤高の存在で、いつか両親に会えると信じ、いじめられる日々に堪えている。
 一方、11年前新進チェリストのケリー・ラッセルとロック・ボーカリストのジョナサン・リース・マイヤーズは偶然出会ったクラブで意気投合し一夜を過ごす。父親に仲を引き裂かれた彼女は彼の子を孕むも死産したと知らされ、マイヤーズも落ち込んで堅気の商売に転職する。
 再び現在、フレディ君は施設を抜け出してマンハッタンでストリート・ミュージシャンをやっている黒人少年と知り合い、音楽的才能のある子供に稼がせている元締めロビン・ウィリアムズの巣窟で過ごすことになるが、少年の才能の凄さに驚いた彼は何とか売り込もうと四苦八苦するうちに警察に踏みこまれ、少年は教会に逃げ込んでゴスペル団の音楽を聴く。ここで牧師が一度楽譜を教えただけで楽曲を書いてしまう、モーツァルトを越えるような少年の天才を知りジュリアード音楽院に連れて行き、少年の作った交響曲が特別演奏会で披露されることになる。
 息子の生存を父親の遺書から知ったケリーは音楽への熱情が蘇り、この演奏会に出演することになる。マイヤーズも彼女への思いが蘇りニューヨークへ戻り演奏を再開する。

この後の展開は言わずもがなで、些か調子良く進みすぎる印象は否定できないが、音楽を通して色々と布石を敷いてあり、決して偶然だけによるご都合主義と理解してはいけない。少年が天才なのは二人の血筋であるが、母親をチェリスト、父親をロック・ボーカリスト兼コンポーザーにした設定自体が既に布石であり、町の喧騒の中に音楽を聴く少年がストリート・ミュージックに出会い、ロックの下層階級精神とクラシックの上流階級的内省とが合わさって構築される幕切れになだれ込んでいくのは必然、天の配剤なのである。

親子の三人の人生航路もスムーズにバランス良く構成され、ファンタスティックすぎる展開に無条件に抵抗を覚える人以外にはお薦めできる佳作。色々なジャンルの音楽が聴けるのも嬉しい。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年01月22日 23:03
あるプロの映画評論家は、こんなことあり得るわけないじゃん!と言って、ひどい映画だと言ってましたが、ねこのひげの友人に、一度も使ったことのないどんな楽器でも弾きこなしたり吹いたりできるのがいましたね。
ビックリでした。40歳で亡くなりましたが。
アスペルガー症候群というのがあり、その病状の人間は、一瞬だけ見た画像を完璧に描けたり、一度しか聞いたことのない曲を間違えずに弾けたりします。
天才と言われる人たちは、この病気ではないかと言われてますから、この映画の主人公の少年フレディーも、そうかもしれないと考えれば納得するところです。
オカピー
2012年01月23日 17:21
ねこのひげさん、こんにちは。

ひどい映画ではなくて、ひどい評論家ですね。
僕が私淑していた故双葉十三郎さんは「映画は観客に夢を見せるものである」と仰る一方で「実際の生活を営んでいる観客の生活感情を反映するものではなければならない」と、それだけ読めば矛盾するご発言をなさっています。
しかし、夢の中に現実を限りなく反映することは古来の名画を観れば解りますし、その逆にリアリズムと称して薄汚い現実もどきだけを見せて生活感情のかけらも感じさせない作品も幾つもあります。

仮に、アスペルガー症候群というものが存在しないにしても、この映画から自分たちの生活感情を感じられないとしたら、相当思い込みの強い人と言わざるを得ませんし、まして、実際にそういう人々はいる。勉強不足も甚だしいですね。
誰だか知りませんが、映画を語る資格ないなあ。
2012年01月26日 10:34
こんにちは。
音楽に関しては、いろんな奇跡がありうると思いますね。
人間の能力は潜在的には果てしないものがあると思います。
それを使いきれないと、僕のような凡才で終わってしまいますが。
オカピー
2012年01月26日 16:52
kimion20002000さん、こんにちは。

人間の脳の大部分は使われていず、どこかに欠損があると逆にとんでもない才能が出る場合があるようですが、こういう人も実際いるのでしょう。
僕は学校の音楽の成績はともかく、楽器を何一つまともに弾けませんからねえ。

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