映画評「アウトレイジ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・北野武
ネタバレあり

北野武のヤクザ映画は余り面白いと思ってこなかったが、僕が勝手に解釈して楽しんだここ数作の後久しぶりに作ったこの暴力映画は秀作とは言わないまでも期待より楽しめた。暴力以外に中味がなく、徹底してドライなのが良いのである。

中味がないと言っても本当にないわけではない。ストーリーを具体的に述べる必要がない映画という意味である。

本作が描くのは、かつてはきちんとしたヒエラルキーを構成していたはずの暴力団において、今では義理の親子、兄弟の精神などどこへやら出世の為なら誰でも裏切る、トップと言えども油断はできない、下剋上、裏切りがビジネスライクに行なわれるヤクザの姿である。少なくとも一見そう見える暴力の連鎖を描いているわけでもない。命令の連鎖というのは悪くない表現だが、それすら越えた非情の世界しかそこにはない。裏切りも裏切りと感じられないレベルにまで、この映画では達している。

それが暴力団の実情(に近いもの)なのか、或いは単なる社会の寓意なのか僕には解らないが、暴力映画が必ずしも好きではない僕が案外楽しめたのは、殺害方法の展覧会という様相を呈しながら、案外グロテスク度が低いからであろう。歯科器具を使った残酷場面は「マラソンマン」などにもあったが、日本のヤクザ映画では珍しく、ちょっとニヤニヤしながら見ていた。

一応配役を。
 一番のボスに北村総一朗、彼の若頭に三浦友和、小さな組を任されているビートたけし、その若頭に椎名桔平、ヤクザとつるんでいる刑事に小日向文世、英語に堪能なインテリやくざに加瀬亮、その他國村隼、石橋蓮司、杉本哲太、塚本高史、等々賑やかな顔ぶれ。

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この記事へのコメント

2012年01月21日 21:30
今日は何度もお邪魔してすみません。

本作は、「その男」以来、2度目の武映画の劇場鑑賞でした。
私は武のハード系の映画はけっこう好きです。中でも、一番は断然「ソナチネ」なんですが、本作もなかなかよかった。
やはり、武の映画は無駄な台詞がなく、説明がない点が一番いいですね。

久々にキタノブルーを感じさせ、画はあくあでドライ。だが、主人公は周囲とちがって義理堅い昔気質のヤクザ。それも所詮、武闘派の鉄砲玉。そんな不器用な根っからの武闘派ヤクザを哀しくそして不気味に描いているのがいいですね。

あと、桔平ちゃんがカッコよすぎでした。

では、今日は何度も失礼しました。
ねこのひげ
2012年01月22日 07:34
北野武監督は、いい意味で裏切ってくれますよね。
ヨーロッパで、芸術映像作家みたいなレッテルを張られだしたのが気に入らなかったようで。
談志さんと一緒で、江戸っ子堅気というやつでしょう。
オカピー
2012年01月22日 22:23
イエローストーンさん、こんにちは。

「ソナチネ」は観た時の年齢のせいもあったのでしょうか、余り印象に残っていないのですが、今観たらまた違うかもですね。

最近はたまたまかもしれませんが、日本映画の方が面白いんですよ。短編を別にすると、キタノ映画は全部観ています。僕はやはり大した作家と思っています。
オカピー
2012年01月22日 22:32
ねこのひげさん、こんにちは。

僕は解らん(ようで案外解りやすい)映画を作るキタノも嫌いではないし、こちらのタイプも必ずしも嫌いではないです。が、今までは余り面白いとは思わなかったのですが、本作は気負いがないように感じられ結構気に入りました。
2012年01月26日 10:29
こんにちは。
なんか役者さんがいきいきしていたのが面白い。変身願望だな。
オカピー
2012年01月26日 16:38
kimion20002000さん、こんにちは。

そうですね。
いつもとは大分違う役柄の配役で、皆さんある意味楽しそうにやっていました。
2012年02月25日 14:57
なんなんでしょうか、この牽引力。
最後はああなるでしょうね~とは
思っての想定内なのですが・・・
やっぱり、たけしさんは映画少年でしょう。
そして、男 の 子。(笑)
オカピー
2012年02月25日 22:35
vivajijiさん、こんにちは。

殺人がこれだけ多くても残虐な感じが余りせず、何だかニヤニヤしながら観ていました。
ハードボイルドなコメディーですね。
ショットの繋ぎの独自の間とか、僕は魅力を感じます。
でも、こういうのはたまに観るから良いので、続編は作らない方が良かったなあ。
蟷螂の斧
2019年01月28日 21:08
こんばんは。

>続編は作らない方が良かったなあ。

第2作だけでなく、第3作まで・・・

>「幸せの~」といったタイトルが多いですね。

洋楽の邦題も然り

>英語と日本語の話せるオランダ人か、英語の話せるオランダ人とオランダ語を解する日本人の2名で話を進める

ブッシュマン役の人へのインタビューを思い出しました

>ジョン万次郎は晩年すっかり英語が話せなくなっていた

母国語ではないから・・・?
現在日本にいる外国人(子供達)は2カ国語を話せるままでしょうね
オカピー
2019年01月29日 19:50
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>第3作まで
未見ですので、出来栄えは解りませんが、北野武のような作家性の高い監督の場合、余りシリーズ化は歓迎できません。

>洋楽
かつて「幸せのノック」とかあしたましたね。
しかし、映画は21世紀になって益々増えているんですよ。バブル崩壊の影響?

>ブッシュマン役の人へのインタビュー
アフリカ人の場合はマラソンなどでも多かったですね。近年は片言でも話せる人が多くなって余り見かけなくなりました。
中国の少数部族出身のランナーで、二重通訳を見たことがありますよ。まず日本人が中国語に翻訳、中国人がその中国語を少数民族の言葉に翻訳。時間はかかるし、精度は当てにならないし・・・

>母国語ではないから・・・?
現在と違って、明治では英語を話す機会がなかったでしょうからねえ。

>現在日本にいる外国人(子供達)は2カ国語を話せるままでしょうね
これは問題なし。どちらの言語も話す環境が整っていますからね。
それでも、日系ブラジル人の子供たちは日本人の子供に比べると日本語の読み書きに苦労することが多いらしいです。
蟷螂の斧
2019年02月03日 22:47
オカピー教授。こんばんは。
この年になると出会いよりも別れが多くて・・・つらい蟷螂の斧です

>北野武のような作家性の高い監督

作家性ですか?興味深い表現です

>時間はかかるし、精度は当てにならないし・・・

双方自分の都合の良い方に翻訳する場合も?

>明治では英語を話す機会がなかった

文明開化

>日本語の読み書きに苦労

喋る事よりも書く事の方が苦労が多い勉強になります。

さて、明日からまた低賃金リーマンの蟷螂の斧、頑張ります
オカピー
2019年02月04日 19:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>双方自分の都合の良い方に翻訳する場合も?
きちんと訳してもまた聞きですから、その間に変わる可能性もありますし、珍しい言語の場合はレベルが低いことがありますよ。
 ソ連の柔道家たちにロシア語科の同級生二人がバイトで通訳的ガイドとしてつきましたが、クラスでもできない部類の彼等ではすこぶる当てにならないと思いましたね。「どうやったんだ?」と訊いたら、「ダバイ(英語のレッツに当たるような単語で、かなり便利に使える)で済ました」と言っていました。勇気あるなあ。

>文明開化
文章の書けないジョン万次郎には仕事がなかったのでしょう。

>喋る事よりも書く事の方が苦労が多い
生活で憶えるとそういうことになり、一般的な学校で学ぶと逆。僕らも英文を書くのは簡単ですが、喋るのは難しく、聞き取るのはもっと難しい。
蟷螂の斧
2019年02月12日 20:30
オカピー教授。こんばんは。

>「ダバイ(英語のレッツに当たるような単語で、かなり便利に使える)で済ました」

強いです

>文章の書けないジョン万次郎

それも才能のうち?

>喋るのは難しく、聞き取るのはもっと難しい。

僕がリヴァプールで苦労した事を思い出します
特にお年寄りの英語
オカピー
2019年02月13日 22:03
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>強いです
僕には真似ができないと思いました。

>僕がリヴァプールで苦労した事を思い出します
僕の甥も近くのマンチェスターに留学していた時のことを話すと全く同じ事を言います。「店のおじさんやおばさんの言っていることは聞き取れない」と。大学の講師の中にもそれに近い人がいたとか。
蟷螂の斧
2019年02月21日 18:47
オカピー教授。こんばんは。

>歯科器具を使った残酷場面

石橋蓮司さん。
大河ドラマ「花神」では怖いテロリスト神代直人役「勝海舟」では吉田松陰役
いろいろ演じてますなあ

>大学の講師の中にもそれに近い人がいた

それでも学んだ甥っ子さん。素晴らしいです
オカピー
2019年02月22日 18:32
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>石橋蓮司さん
1970年代後半から急に知名度が上がった感じがしました。今日まで幅広い演技ができるバイプレーヤーとして重用されてきましたね。映画では悪役が多いデス。

>甥っ子
今年、今話題の日産に入社します。本人が希望した営業ではなく経理だそうですが、日産の経理はただの経理ではないそうで、期待しております。

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