映画評「孤高のメス」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり

御世辞にも誉められない「ミッドナイト イーグル」の成島出監督が作った医療ドラマだが、これほど奇をてらわず感動を押し付けようともしない作品は今時メジャー系では珍しい。どちらの作品も直接脚本には関わっていないので、成島監督は自分の個性を出そうとしない、基本的に気真面目なタイプと見る。

先般地上波で放映されたものの、その時はカットが30分以上あって鑑賞するのは失礼と思って止めておいたのが正解だった。

1989年、ピッツバーグで高度な外科医術を身につけた医師・堤真一が地方の市民病院の第二外科部長として赴任、大手術は大学病院にお任せでだらけた空気の病院にあって、患者と病気に対して冷静に対応しメスを使い、大学病院から派遣されている腐敗した医師たちに嫌われながら、病院の慣習に風穴を開けて行く。
 そこへ市長・柄本明が末期の肝硬変で運ばれて来るが、家族の肝臓が合わない為、事故で脳死して横たわっている青年の肝臓を使って、日本では認められていない脳死肝移植を決行することにする。

というお話が、20年後、当時彼の孤高な姿に看護婦としての矜持を取り戻す母・夏川結衣の日記を彼女の葬儀を終えた息子・成宮寛貴が読む回想形式で語られる。

この息子が新米医師でどうも堤が院長を務めるらしい病院に赴任するという幕切れの締めが上手いが、とにかく、主人公の医師同様この映画の態度もかなり孤高と言って良い。
 登場人物がやたらと感情的にならず、腐敗する医師や自己保身に走る者もオーヴァーにならず好感が持てる。密告で警察やマスコミが押しかける場面もバランスを取って、あくまで孤高の医師を描出する作品としての態度を崩さない。そちらを出し過ぎればお話が嘘っぽくなってしまっただろう。

我が家は僕を含めて3年続けて病院のお世話になり、父の心臓手術には感心し、母への対応には不信感を覚えたが、こんな医師なら手術をお任せしたい。原作は現役医師の大鐘稔彦。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年01月18日 06:37
ねこのひげは、親父が死んだとき、医者の言った一言に絶句しましたけどね。
親父は前立せんガンで死んだのですが、認知症でもあったので、死んだのが老人介護病院のほうだったのですが、いちおうガンを担当した医者にも挨拶しておこうと電話をしたら「ガンで死ぬわけない」と言われました。
絶句でしたね。
毎年何人の人間がガンで死んでいると思ってんだ!と怒鳴りたくなりましたけど、やめときました。
この医者に親父を診てもらっているときから、ちょっといやな印象があったのですが、自分の担当している患者が死ぬと自分の経営している病院の評判にかかわるということで、保身のためにそんな言葉がでたようですけどね。
あきれました。
ねこのひげは、自分がガンになってもこいつだけには診てもらうまいと決めました。
殺されかねないです。
今回の豪華客船の船長も乗客を置いて逃げ出したようですね。
社会的に地位が高いと思われている地位にいる人間でも、その地位にふさわしい人間は少ないようです。
オカピー
2012年01月18日 17:00
ねこのひげさん、こんにちは。

>「ガンで死ぬわけない」
マイケル・ムーアの「シッコ」でも、保険会社が「若い人は癌になるはずがない」と言って出費を拒んだケースを紹介していましたが、それ以上に出鱈目な言葉ですね

医者に限らず、政治家でも、役人でも、若い時は正義感に燃えても次第に保身に走りだしてそうなっていくんでしょうね。だから、地位の高い人ほどある意味信用できない・・・という公式も成り立ちそうです。
2012年01月21日 15:19
本作は、DVDがでてすぐに鑑賞しました。

仰るとおり、正に孤高。

織田や江口が演じる医師とは全く違い、淡々と慎重かつ正確に、ただただ作業をすすめていく。
非常に冷静な作品ですよね。

>この映画の態度もかなり孤高と言って良い。

そのとおりだと想います。
オカピー
2012年01月21日 20:15
イエローストーンさん

日本のメジャー作品で、こんな落ち着いた作品は久しぶりに観ましたよ。
都はるみのユーモアも悪くないです。

この記事へのトラックバック

  • 孤高のヤギ

    Excerpt: 「ヤギと男と男と壁と」 「孤高のメス」  Weblog: Akira's VOICE racked: 2012-01-17 11:10
  • 孤高のメス

    Excerpt: 自身も医師である大鐘稔彦の同名ベストセラー小説の映画化。脳死肝移植というタブーに挑んだ一人の外科医を描いた社会派医療ドラマだ。主演は『クライマーズ・ハイ』の堤真一。共演に夏川結衣、吉沢悠、中越典子、成.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2012-01-17 11:48
  • 『孤高のメス』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「孤高のメス」□監督 成島 出 □原作 大鐘稔彦 □脚本 加藤正人□キャスト 堤 真一、夏川結衣、余 貴美子、柄本 明、吉沢 悠、中越典子、松重 豊、成宮寛貴、平田 .. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2012-01-17 12:12
  • 孤高のメス

    Excerpt: 製作年度 2010年 上映時間 126分 原作 大鐘稔彦 脚本 加藤正人 監督 成島出 出演 堤真一/夏川結衣/吉沢悠/中越典子/松重豊/矢島健一/成宮寛貴/平田満/余貴美子/生瀬勝久/柄本明.. Weblog: to Heart racked: 2012-01-17 12:17
  • 孤高のメス/堤真一、夏川結衣

    Excerpt: 現代社会の医療問題に鋭く斬り込んだ大鐘稔彦さんの原作小説を映画化した作品です。医療ドラマは映画でもTVでも作品の方向性の違いはありながらも良作の目立つジャンルだけにこの ... Weblog: カノンな日々 racked: 2012-01-17 17:38
  • 命をつなぐ~『孤高のメス』

    Excerpt:  急死した看護師の母の葬儀のため、新米医師の弘平(成宮寛貴)は寂れた漁 師町に帰って来る。母の遺品を整理するうち、彼は「1989」と書かれた古い日記 帳を見つける。そこには、離婚して弘平を引き.. Weblog: 真紅のthinkingdays racked: 2012-01-20 19:49