映画評「モロッコ」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1930年アメリカ映画 監督ジョゼフ・フォン・スタンバーグ
ネタバレあり

日本で初めて字幕スーパーが使われた作品としてよく知られているが、それ以上に本作は映画として純粋に優れている。昔からご贔屓作品の一つである。

モロッコ、フランスの外人部隊の兵卒トム・ブラウン(ゲイリー・クーパー)が流れて来たばかりの歌姫アミー・ジョリー(マレーネ・ディートリッヒ)と恋に落ちるが、彼に無視されたのに怒った副官(ウルリッヒ・ハウプト)の妻が送った刺客を負傷させてしまう。
 副官が軍法会議の代わりに彼を前線に送ることにした為アミーは諦めて一旦は大富豪(アドルフ・マンジュー)の求婚に応じるが、部隊の帰還する音を聞いた彼女は慌てて飛び出る。しかし、彼が別の場所で現地女性と一緒に酒を飲んでいるのを見て失望するものの、テーブルに彼女の名前が彫られているのに気付き、再び新しい任地に向う彼の後をハイヒールを脱いで現地の女性たちと一緒に追う。

当時モロッコをめぐる当事者であったフランスの人々は砂漠を裸足で歩けるものかと笑ったそうであるが、双葉先生も仰るようにあれは女性の情熱をシンボライズするものであるから、科学的に正しいとかそういう観点で観るのは実に阿呆らしいと言うしかない。先生風に言うならヤボテンである。
 今の若い人にもそういう方が少なからずいらっしゃるが、こういうのを認められる場合と認められない場合とがあることをしっかり判断して発言して欲しいものであります。例えば「感染列島」で伝染病が流行っている中マスクもしない医者が出てくるなんてのは認めることはできない。それがお話の基礎だからだ。

トーキー初期の作品だから音の使い方にも腐心の痕が見え、軍隊が戻って来る時の太鼓の音や富豪が彼女に送った真珠の首飾りが落ちる音など、音楽で台詞が聞えないことすらある昨今の映画に比べて、何と効果的なことだろう。夢に誘(いざな)われますなあ。若い人はご存じないであろうが、1920年代末から30年代前半のスタンバーグは飛ぶ鳥を落とす勢いのある、名監督中の名監督であった。

ゲイリー・クーパーのサヨナラをする時の指の振り方も格好良いが、最初は男装で出て来て次にあでやかな姿で出てくるマレーネの婀娜っぽさ。全編痺れます。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年12月08日 06:16
たしかに、日本の夏の海岸でもはだしで歩くと大騒ぎになりますけど、あのシーンにケチをつけるのは、まさにヤボテンですな。
いまでも、重箱の隅をつつくような的外れな批判をするのがいますよね。
映画ではありませんが、ある政治家が「わたしの高校時代の友人に津波のときに逃げないで死んだバカがいる」と言って批判を受けたのがいましたが、このときのバカの意味はちょっと違うと思うんですよね。
友達に生きていて欲しかったという哀切の意味があることを、いまの人間は汲み取れないんですかね。(~_~;)
オカピー
2011年12月08日 20:00
ねこのひげさん、こんにちは。

僕の子供の時のイメージとは逆で、アメリカ人の方がそういうロマンティシズムを理解し、フランス人はとにかくリアリストですね。
それが行き過ぎた場合はどちらも失敗作を作るわけですが。

理解が浅いと言えばそれまでですが、淀川先生の言葉を借りれば「勘がやしなわれていない」んですな。そういうヤボテンやら、バカの真意が解らないのは。
営業会議をしていても他人の発言にピンとくる人と来ない人の差は相当あったなあ。
シュエット
2011年12月13日 09:24
先日、記事アップしました。
ちょっとミーハー的表現になってしまうけど、これぞときめく映画!
この時代、男も女もなんと潔いこと!粋なこと!
言葉は不要。映像が語るラストシーン。観ているものの胸にはどれだけの言葉が渦巻くことか!
いやぁ、映画ですネェ。
TB持ってきます!
オカピー
2011年12月13日 17:32
シュエットさん、こんにちは。

素晴らしいですよネエ。
CGやコンピューターで何でも表現できるようになったと喜ぶ輩が多いですが、僕に言わせるとどんどんクリエイターや観客の想像力が衰えて、コマごとに表現する技術が衰えていると思いますね。
少ない台詞から登場人物の心情を表現するのも昔の人は上手かったし、観客も理解しました。今は音も使いすぎて大事にしていないし。

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