映画評「黒く濁る村」

☆☆(4点/10点満点中)
2010年韓国映画 監督カン・ウスク
ネタバレあり

横溝正史の韓国版みたりなミステリー・サスペンスで、韓国では340万人動員した大ヒット(日本の人口で言えば、900万人弱に相当する)したそうであるが、出来映えは市川崑ちゃんの横溝ミステリーに遠く及ばない。

物語の初めは1978年で、ある祈祷院で宗教の名を借りて金儲けをしていた院長がそこの先生ホ・ジュノが邪魔なので、親しい刑事チェン・ジェヨンに無実の罪で逮捕させて痛めつけて貰う。が、この先生の人を虜にする力たるや大したもので収監中に影響を受けた刑事は聖書の一節に触発されてある山奥に村を作ることにする。

これがプロローグで、時は凡そ30年後に移り、若者パク・ヘイルが検事ユ・ジュンサンと訳の解らない会話を携帯でしながら、その村へ向かう。子供の時以来会っていない父親のホの葬儀に呼ばれたからだが、死因をはっきりさせないまま葬り去るなど、村長かつての刑事チェンを始め村人の言動が大いに怪しいので、映画の中の紅一点ユ・ソンが営む萬屋に部屋を借りしばらく滞在することにすると、村人の挙動は益々不審になる。

この映画がダメなのは筋運びのまずさである。後で協力関係になる若者と検事には因縁があるらしいが、因縁そのものが何だか全く解らずイライラさせられる。因縁があったのに協力関係に変わるというだけの要素で終わる、まずムダと言って良い部分で、163分もの長尺になった一因である。

若者が長く父親に遭っていない理由も全く説明なしだが、その割に村に帰るなり父親の死因について一心不乱に調査を開始する、というのに些かの疑問符が付く。金田一耕助のように明らかに事件があって探偵が調査開始というのと違って始まり方としてどうにもぎこちない。

で、彼が調べて行くと、村長がどうも不動産関係で色々と悪事を働いてることが判明、旧悪がばれないようにと村長と取り巻き三人が焦り出して彼にチョッカイを出し始めたことから色々と事件が発生し始める。

色々問題がある中で一番変なのが、主人公の若者が調査しているのが父の死因であるのに、映画作者は村長や村人の旧悪を暴き出す経緯を観客に見せようとしていることで、見せ方としてこんなに齟齬感がある映画は久しぶりである。勿論ささいなことから大事が起きたり判明したりするお話は少なからずあるが、その場合は官憲や探偵をもっと上手く絡ませて進行させないとお話のバランスが取れない。本作は被疑者を含めて当事者が動き過ぎる。

結局父親はどうも我々にはすっきりしない理由による自殺らしいことが判って来るが、それなら村長たちは最初から動機不明の自殺と言えば、必要以上に若者が嗅ぎまわるところまでは行かなかったのではないか。

大間抜けも甚だしい大団円の後に続いて、最後は一種のどんでん返しみたいな思わせぶりがあるが、蛇足の感強し。

「悪い奴ほど手が白い」という映画を思い出しました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

シュエット
2011年12月16日 10:01
4点ですか~(笑)
劇場の予告編で韓国映画らしい(?)どす黒さでちょっと面白そうかなって思ったけど、なんだか思わせぶりのそれっぽさの蓋を開けてみたら、こじつけっぽく思えて劇場鑑賞はしませんでした。因縁というのもそういうほどのものでもないでしょう? この監督の作品では「シルミド」を観ましたけど、あれはなかなか良かったですけどねぇ。
よく似たストーリーを短編で読みました。道に迷った男が小さな村にたどり着き一軒のレストランを見つけ入ったら、かつての知り合いが一人で切り盛りしている店。贅沢な食材の食事に舌鼓を打ちながらこんな客もこない場所でと不審に思い、気になってもう一度探し探してその店をみつけ、偶然目撃した光景は、汚職事件だか犯罪だかで行方を操作中の人物を接待しているレストランのオーナー。
地図にもないその村は大物犯罪者達の隠れ里。潤沢な金でそこで優雅に暮らす犯罪者達。レストランも成り立つはず。それを男は親友にこそっと話したが信じてもらず、しかしある日その友人が巨額の脱税を働き雲隠れしたというニュースで知るという、そんなお話。なかなかに面白い短編でした。
長々と失礼しました(ペコリ)
オカピー
2011年12月16日 19:02
シュエットさん、こんにちは。

もう少し短ければ☆☆★(5点)にしたかったんですが。
解らないことが多すぎて、その割に結論が大したことがなく、時間が160分を超えると来ては「ご挨拶にも困る」というやつです。
韓国のダーク系は良いのが多いけど、これは失敗作と思う。

シュエットさんのお読みになった短編の方がうまく作れば面白い映画になりそう。

この記事へのトラックバック

  • 黒く濁る村~韓国大統領史のパロディ?

    Excerpt: 公式サイト。英題:MOSS(苔)。カン・ウソク監督、パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、ユ・ヘジン、ユ・ソン、キム・サンホ、キム・ジュンベ、ホ・ジュノ。韓国の山奥の ... Weblog: 佐藤秀の徒然幻視録 racked: 2011-12-15 15:19
  • 黒く濁る村/パク・ヘイル、チョン・ジェヨン

    Excerpt: 『シルミド/SILMIDO』のカン・ウソク監督による長編大作ミステリーです。予告編の不穏で不気味な雰囲気も印象的でしたが161分という韓国映画では珍しい長尺の作品という事を知ってさ ... Weblog: カノンな日々 racked: 2011-12-15 15:41
  • 黒く濁る村/이끼

    Excerpt: 2007年にウェブに掲載されたユン・テホ原作の人気漫画を映画化。父の訃報を受け取った青年が訪れたやまあいの山村。しかし村長を筆頭にそこに住む住人たちはどこかがおかしい…。村に隠された秘密とは一体何なの.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2011-12-15 17:14
  • 黒く濁る村(2010)*原題:苔

    Excerpt:  英語:MOSS Tジョイ京都にて鑑賞。 新しいシネマが出来たおかげで、今まで観れなかった作品が観れるようになって良かったです。本作もその一つでした。10日が10周年ということで1000円で鑑賞で.. Weblog: 銅版画制作の日々 racked: 2011-12-17 01:19