映画評「小さな村の小さなダンサー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年オーストラリア映画 監督ブルース・べレスフォード
ネタバレあり

中国出身でオーストラリアで活躍しているというバレエ・ダンサー、リー・ツンシンの自伝の映画化で、邦題は明らかに英国映画「リトル・ダンサー」を意識しているが、子供時代の話はそれほど大きくは取り上げられていない。

1961年寒村生まれの彼は、11歳の時四人組を率いる江青の指導により中国独自のバレエを構築するダンサーの一人に選ばれるが、中国独自のバレエと言うのは抗日戦争辺りを主題にした変てこなもので、日本の鑑賞者としては失笑を禁じえない。

そんな彼を真剣なバレエ・ダンサーに向けさせるのは反体制的として下放させられる教師チェンが残した一本のビデオ・テープである。そこには映画界でも活躍するミハイル・バルシニコフの素晴らしいバレエが映っている。
 75年毛沢東が死に四人組が追放され、79年新しくなった中国バレエに注目したヒューストン・バレエのベン(ブルース・グリーンウッド)に招待された少年はある時、代役として活躍するチャンスを手にして成功、恋人もできてアメリカに残る意志を固める。しかし、領事館に自ら赴いたことが両国のトップまで出てくる大事件に発展、結局アメリカに残ることが認められる代わりに帰国ができなくなる。結婚は破綻したものの彼自身は見事な成功を収め、その結果招待された両親の前で踊り、帰国も許される。

サクセス・ストーリーの骨格はほぼ型通りでそれほど面白いと思わないが、その人生の後ろで揺曳し、彼を翻弄する中国体制の変化が重要な要素として浮かび上がるところが誠に興味深い。古代【塞翁が馬】という諺を産んだ土地は20世紀以降馬ではなく体制のちょっとした変化ですら人生を大きく左右する国家となったのである。
 しかし、勿論【塞翁が馬】の部分もあり、体制の考えを変えるだけのものがあった彼の意志と努力には素直に表敬すべきであり、生れた村で踊る幕切れには感銘させるものがある。

本物の有名な中国出身バレエ・ダンサー(グオ・チェンウ、ツァオ・チー)を起用したバレエ・シーンの美麗さに★一つ余分に進呈。

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この記事へのコメント

シュエット
2011年12月01日 17:18
こんにちは。
ツンシン役は有名なダンサーだとか。さすがにバレイシーンは見事。
ただ、アメリカと中国の間でツンシン自身の葛藤とか、バレイに対する彼の意識とか、彼自身の内面がさほど描かれていなかったような…なんだかいささか不完全燃焼的な印象を持ちました。いろいろ制約があるのかしらと穿った見方もしたり…
オカピー
2011年12月01日 21:53
シュエットさん、こんにちは。

僕も型通りでお話は余り面白いと思わなかった。
中国政府に遠慮したか、多少圧力をかけられたか?
バレエ・シーンは良かったですね。
2011年12月02日 03:46
こんにちは。
人口の多さと、競争選抜システムと、国家威信の関係で、中国の才能養成システムはすごいですね。
その対極に、どうなるかわかんないけど、猫くんがオリンピック選手になるために、小さな国に帰化して。面白いものです。
オカピー
2011年12月02日 20:32
kimion20002000さん、こんにちは。

西側ではオーストラリアの育成システムがなかなか素晴らしいようですね。中国やかつての東欧国家のような無理もないようですし。やはり共産主義的な育成システムは僕は嫌いだな。

>猫くん
小さな国でなくても、どの国でも競技人口が少ない競技に限って、例外的に殆ど問題にならない実力の選手が一人だけ出られるんですよね。僕は冬季オリンピックで皆が80m以上飛ぶ中で30mしか飛べなかった英国のジャンプ選手が記憶に残っています。

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