映画評「座頭市千両首」

☆☆(4点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・池広一夫
ネタバレあり

シリーズ第6作は、前作までから全くスタッフが変わっていて、出来映えは一番劣る。問題は浅井昭三郎と太田昭和の脚本に尽きる。

上州の板倉村、代官に千両箱を運んでいる村人たちがやくざ連中に襲撃される事件が起きる。代官らの悪計で赤城に追い込まれた国定忠治(島田正吾)と、たまたまお墓参りに村にやってきた市(勝新太郎)が犯人の塗衣を着せられるが、市は村人に誓って忠治と自分が犯人でないことを証明する為に赤城に出かけ忠治の子分二人が犯人の一味であることを確認、ボスたる代官から千両箱を奪い返し、何故か市を目の敵にする用心棒の十四郎(城健三朗)と対決する。

一見無難だが、時代考証や人物配置が全く出鱈目。僕も日本史や時代劇にそう詳しいわけではないものの、村人が代官に年貢としてお金を収めるなんて聞いたことがない。「水戸黄門」では悪代官が計量升を大きく作って米をネコババするのが定石となっている。
 脚本の感覚は正に正統派時代劇ムードなのに、ディテイルには妙に西部劇みたいなところがあって、年貢が米ではなくお金なんてのはその代表的なところで、最後には馬に乗った十四郎が市を馬と鞭で襲う場面まで出てくる。因みにこの映画で面白いのはここのみ。

「水戸黄門」のお銀みたいに入浴シーンがあるその名もお吟(長谷川待子)の役目がよく解らないが、墓参りにやって来た市を兄の敵と怨む女馬子(坪内ミキコ)の扱いはもっと妙である。市が赤城から帰ってくると彼女は急に市のシンパみたいになっていて兄の恨みはどこへやら、彼が持って帰った千両箱を預かる。市にしても彼女に千両箱を預けてのこのこ十四郎との決闘場に向う心境もよく解らない。女性一人に千両箱を預けたらいかにも危ないだろうに。

監督の池広一夫も「眠狂四郎」のどの作品より気の抜けた感じ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年11月29日 05:02
シリーズ6作目ともなると、座頭市であれば観るという風潮になるんでしょうね。
小林明の渡り鳥シリーズなんて、和製西部劇でしたしね。
『座頭市』は、勝新の魅力に尽きるというのもありますし・・・(~_~;)
オカピー
2011年11月29日 17:33
ねこのひげさん、こんにちは。

和製西部劇を狙っているならそれらしく作れば良いのに、国定忠治に島田正吾を起用するなど全く首尾一貫していなくて、全く変てこな作品でした。
第7作は大分良いですよ^^
蟷螂の斧
2019年05月03日 12:14
オカピー教授。こんにちは。こちらにお邪魔します。

>馬に乗った十四郎が市を馬と鞭で襲う

最近話題にしている「邦画とマカロニウェスタンがお互いに影響を与え合う」がこれですね

>家父長制度→男尊女卑→少子化

「男女平等→女性が大学進学&社会進出→未婚の女性増加→少子化」と言う人もいます。
それよりも僕が思うのは近頃の若い人達(既婚)で「子供を欲しいとは思わない」と言う人が増えている事です。僕の同僚でそういう若い人が5人(男性2人、女性3人)います。まあ、人それぞれ考え方があっていいと思います。

>実は原作を先月読みまして

僕は中学時代に「姿三四郎」を妙に気に入ってしまい、原作は全部読みました。伊藤博文と南小路子爵(そして娘の高子)の事が印象に残っています

>太田裕美の「赤いハイヒール」

今youtubeで見ています。夜のヒットスタジオ
可愛らしい歌ですね

>アンジェリーナ・ジョリー

生後間もなく両親が別居。思春期の自傷行為。大人になってからも色々ありますね・・・
蟷螂の斧
2019年05月03日 13:10
こちらにお邪魔します。

>馬に乗った十四郎が市を馬と鞭で襲う場面

これなんですよねー最近話題にするマカロニウェスタンからの影響

>アンジェリーナ・ジョリー

生まれた時から現在に至るまで波乱万丈の人生ですウィキで見たら驚く事が多いです。

>「赤いハイヒール」

youtubeで夜のヒットスタジオを見ました。可愛らしい曲です

>原作を先月読みまして

南小路子爵と娘高子、そして伊藤博文との関係が印象に残っています。
高子が言う事を聞かないから子爵の立場が危なくなる。
「貴女(あんた)は私を殺す気かね?」と子爵が高子に言う場面です

>家父長制度→男尊女卑→少子化

男女平等→女性の進学と社会進出→未婚の女性増加→少子化 と言う人もいますね。
僕はそれよりも、若い同僚で結婚しているけど「子供は必要ない」と言う人が5人(男性2人、女性3人)いる事。そういう時代なんだなあ・・・としみじみ思いますまあ、人それぞれ考え方があっていいんじゃないですか?
オカピー
2019年05月03日 18:54
蟷螂の斧さん、こんにちは。

最初に硬い話題から(笑)。

>男女平等→女性が大学進学&社会進出→未婚の女性増加→少子化
ある時点まではこの流れは正しい。一般的に言えば、核家族化が完遂するまでですかね。大家族の元では祖父母が子供の面倒を見ますから、女性が社会進出することにより確かに減っていく。

しかし、専業主婦が2%しかいないスウェーデンやフランスの例に見るように、その時点を過ぎて、男女平等であれば、寧ろ出生率が上がるということが既に証明されています。フランスの場合は税金対策が機能しているということもありますが、どちらも出生率が2.0に近い。女性が働ければ収入が増えるので、第2子、第3子を作る気になるということでしょう。

何年か前に先進国で出生率の低い三か国、即ち日本・韓国・イタリアの顔ぶれを見ましたら、いずれも家父長制の名残のある男尊女卑の国と気づき、ピンと来ました。結局、男性が女性と同じように育休等を取れないような国では少子化問題は解消しない、というのが僕の導き出した結論です。

子供が必要でないと考えが出て来るのは、やはり環境が厳しいことが、彼らに有形無形の圧力をかけているような気もしますね。

続く。
オカピー
2019年05月03日 18:56
続きです。

>アンジェリーナ・ジョリー
僕もそんな予感はしていたのですが、彼女はジョン・ヴォイトの娘なので、あれ?と思ったわけです。

>「赤いハイヒール」
その前に流行った「木綿のハンカチーフ」の姉妹編のような対話型の歌詞ですよね。どちらも松本隆の作詞。

>「貴女(あんた)は私を殺す気かね?」
高子はなかなか意志の強いお嬢様でした。それでも一度は身を犠牲にする気にもなったわけですが、夫君が亡くなって帰国する。
 映像版が余りに有名なので僕はここまで読まずに来ましたが、一言にまとめると“反ざんぎり頭”の登場人物が頑張る作品でしたね。
 小説の構成としてはともかく、人情としては折角幸福を掴んだ乙美を殺したのはけしからんと思いましたなあ(笑)。
蟷螂の斧
2019年05月04日 06:49
オカピー教授。おはようございます。

>専業主婦が2%しかいない
>出生率が2.0に近い

数字を使って説明して貰うと大変説得力があります。ぜひ第2子も第3子も、と言う気持ちになるでしょう

>いずれも家父長制の名残のある男尊女卑の国と気づき、

やはりイタリアは日本と似た面があるんですね

>どちらも松本隆の作詞

天才

>折角幸福を掴んだ乙美を殺したのはけしからん

1977年の映画「姿三四郎」はハッピーエンド。桧垣(次兄)を倒した後です。
だからこそ僕も原作を読んで乙美が亡くなった時は驚きました
そして兄貴分の戸田と三四郎の会話も悲しかったです・・・
オカピー
2019年05月04日 21:17
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>やはりイタリアは日本と似た面があるんですね
2年前にイタリア映画「これが私の人生設計」を観た時、“日本と全く同じだなあ”と思いましたよ。世界中で能力を発揮してきた有能な女性建築士が母国へ帰って仕事が取れないというお話(喜劇)でした。

もう一つ。19世紀のロシアの作家ゲルツェンが“イタリア人は、ロシア人やドイツ人と違って、給仕を馬鹿にした態度を取らない”と感想を洩らしすのを読み、日本人の感覚と近いと思いました。最近バカ者が増えていますが、全体としてはどんな仕事の人に対してもきちんと接すると思います。

>1977年の映画「姿三四郎」はハッピーエンド
それがいいです。
50年近く前に観ていた竹脇無我のTVバージョンはどう終わりましたかねえ。
そう言えば、勤め先に竹脇無我の従兄か何かという人がいましたよ。
蟷螂の斧
2019年05月05日 11:59
オカピー教授。こんにちは。

>坪内ミキコ

森一生監督・市川雷蔵主演映画「陽気な殿様」でのお姫様役は可愛らしかったです
監督や作品によって随分イメージが変わります

>有能な女性建築士が母国へ帰って仕事が取れないというお話

喜劇であり悲劇かも知れません

>給仕を馬鹿にした態度を取らない

それは嬉しく思います

>竹脇無我のTVバージョン

見た事がないです
1978年の勝野洋・竹下景子バージョンは悲しい終わり方。
そして本宮ひろ志漫画「姿三四郎」は幸せな終わり方でした。桧垣源之助を倒した後です。桧垣の弟二人は登場しません
オカピー
2019年05月05日 21:17
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>坪内ミキコ
>監督や作品によって随分イメージが変わります
そうですね。
市川雷蔵主演作なので観なければならない作品ですが、残念ながら「陽気な殿様」は未見です。
僕は、お年を召してからの印象(「おもいっきりテレビ」?)が強いので、どうも彼女は常に“おばさん”なのです。どうもすみません。だから、この映画で見た時は「若い!」と思いましたなあ。

>>竹脇無我のTVバージョン
僕は「姿三四郎」と言えば最初に観た竹脇バージョンなんですよ。うかつにも終わり方を忘れていますが。同じ頃竹脇無我は「だいこんの花」といった家庭劇にも出ていて、大人気でしたなあ。この頃はまだTVドラマを見ていました。
蟷螂の斧
2019年05月06日 09:56
オカピー教授。こんにちは。

>「おもいっきりテレビ」

僕は連想ゲームの回答者というイメージです
そして坪内ミキ子はお嬢さん育ちですから、お姫様役が似合います

>「だいこんの花」

これも未見です

>勤め先に竹脇無我の従兄か何か

顔は似てますか?イケメンの一族?
無我さんは晩年鬱病で苦しんだそうでお気の毒ですお父さんも色々あったし・・・。
オカピー
2019年05月06日 21:48
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>連想ゲーム
そんな番組もありましたっけ。僕は檀ふみの印象が強い。
殺害されてしまった菊容子も出ていたとか。折角「好き!すき!!魔女先生」で人気が出たと言うのに、まさか殺されてしまうとは、残念な思いをしました。

>お嬢さん育ち
明治文学史上重要な坪内逍遥が大伯父ですね。


>だいこんの花
竹脇無我の奥さん役が川口晶だなんて何だよ?(難だよ!)と思いましたが。最初の奥さん役は当時17歳くらいの関根(現・高橋)恵子。実年齢を知ってびっくりしましたよ。

>顔は似ていますか?
いや、全然ハンサムではなかった(笑)。
しかし、ソフトな感じに共通するものがありましたね。その人の苗字も竹脇。

>鬱病
家系的に余り良いとは言えない人生を送った人が多い。
思いがけぬ死を聞いた時「まだ若いのに」と残念に思いました。二枚目も辛いということですよね。

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