映画評「ノルウェイの森」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本映画 監督トラン・アン・ユン
ネタバレあり

1950年以降の作品を幾つかの例外を除き意図的に読まないようにしていたので、村上春樹がどんなに売れようとも読まずにきたが、今年の6月くらいに遂に手に取った。本当は一番有名な「ノルウェイの森」にしようと思ったものの、我が図書館に置いてなかったので「海辺のカフカ」というのを読んでみたところ、そうでなくても不安症みたいな病気が最悪の状態を迎えていた折だった為とんでもないことになった。

前置きはこれくらいにして、本作はその大ベストセラーを日本でもよく知られるベトナム出身のトラン・アン・ユンが脚色、映画化した昨年の話題作。

1967年、同級生のミズキ(高良健吾)を自殺で失った後東京の大学へ進学した主人公ワタナベ(松山ケンイチ)が、ミズキと幼馴染で深い関係にあった直子(菊地凛子)と再会し喪失感を共有する彼女と結ばれるが、その後姿を消した彼女から精神の病の為に京都の療養所にいると連絡が来る。
 他方、主人公は大学の美少女・緑(水原奇子)とも親しくなっていくが肉体の関係には及ばず、並行して直子に逢う為療養所にたまに行くようになる。が、力及ばず直子は自殺し、喪失感を深めた主人公は緑に電話を掛けて自分の居場所を探そうとする。

物語は理解し易いが、原作を読んでいない者にはその言わんとするところが把握しにくい。それが純文学を映画化するところの難しいところであり、トルストイの「アンナ・カレーニナ」のように悲恋部分を抜き取ってメロドラマ化されたりということになったりする。

こういう作品を苦手とする僕の理解するところでは、愛と性、生と死の狭間で彷徨する大学生の迷える心理を描いた作品で、結局対照的な二人の同世代女性の間で自分の生き(行き)場を探す彼の行状を追う内容ということになるが、最近日本での仕事が多い撮影監督リー・ピンビンのゆったりしたパンが捉える風景は、水を強く意識させるアンドレイ・タルコフスキーの作品を思い出させるところがあり、映画ファン心理をくすぐる。即ち、映画的ムードはなかなか濃い。

先日の「ゴールデンスランバー」と違って「ノルウェーの森」がビートルズ・オリジナルで聴けたのは嬉しい。途中でドアーズのラブソング「インディアン・サマー」もかかりニコニコでした。

漢文の先生が「文学の価値が定まるには100年必要だ」とか言っていましたっけ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年11月21日 07:56
ねこのひげは、彼が世界的にうけている理由がいまひとつ理解できませんが、硬派な主張を頑としてするところは好きです。

ところで『ノルウェイの森』は誤訳らしいですね。原題では森がwoodになっているんです。
森だとwoodsと複数形で、woodということは木で、タイトルが『ノルウェイの木』となるのが本当で、『ノルウェイの木』といえば、イギリスでは、ノルウェイの板を使った白い安物の家具の事を指すのだそうです。
そうなると歌詞の内容の意味が違った意味でわかってくると英語に詳しい知人が言っておりました。
まあ、ねこのひげは、そこまで考えてビートルズを聞いてませんでしたけど(^^ゞ
オカピー
2011年11月21日 19:55
ねこのひげさん、こんにちは。

>誤訳
当時タイトルを付けた人も解っていたんじゃないかなあ、という気もするんですよね。この頃までビートルズは女性ファンが多かったので、ロマンティックなムードを出す為に。

I once had a girl or should I say she once had me
She showed me her room, isn't it good Norwegian wood?

“部屋を見せて貰ったけど、ノルウェイの木材製みたいだった”
という感じの意味だと思います。

一時日本版レコードに付いている対訳が気に入らないので、ビートルズなどの歌詞の僕なりの対訳をHPに載せていましたけど、JASRACから文句が来ましたので、消してしまいました。誰が損するというの?(怒)
2011年11月21日 22:20
こんにちは。
どうでもいいことなんですが、「ノルウェーの森」の単行本を買った時、とても恥ずかしくて、足早にレジを離れたことを思い出します(笑)
ねこのひげ
2011年11月22日 06:12
ねこのひげも、ロマンチックな歌としか捉えてませんでしたけど、内容をしると違った意味も出てくるものだと思いました。

しかし、別の訳を書いたからといって文句を言ってくるとはあきれますね。
YouTubeでもそうですが、気に入ったCMやプロモなどを一般人が載せると、すぐに消去させるのはどうかと思いますよね。
心が狭いというか、不利益はないと思うんですがね。
オカピー
2011年11月22日 21:05
kimion20002000さん、こんにちは。

女性に大人気だったんですね^^
ベイ・シティ・ローラーズのレコードを買うみたいな感じですかね?
僕の喩えも相当古いですね。
オカピー
2011年11月22日 21:08
ねこのひげさん、こんにちは。

ビートルズはこの曲の入った「ラバー・ソウル」から辛辣な曲が大分入ってきました。
「ノーウェジアン・ウッド」も「ガール」も結構意味深長な歌詞でしてね。
2011年11月28日 22:46
オカピーさん、こんばんは。
実は、村上春樹は、わたしたちの青春時代の作家です。内容はほとんど、覚えてませんが、「1973年のピンボール」「風の歌を聴け」などが学生時代に流行っていました。わたしは、大江健三郎が好きでしたので、「万延元年のフットボール」をまねた表題が気になって購入し始めたわけです。
「ノルウェイの森」は、社会人になってから読みました。彼の小説はあまり印象に残らないんですよね。わたしはクォリティの高いライトノヴェルだと思っており、秋元康さんなどと同系の方かと思ってしまっております。ですから、何故、芥川賞作家なのか、何故ノーベル賞候補者なのか、未だに理解できないんです???
さて、映画ですが、こちらはなかなか素晴らしかったと思っています。オカピーさんの6点はちょっと残念(笑)。
正直にいうと、村上春樹は、ライトノヴェルではなく、文学なのかもしれないと、思ってしまったのが、この映画を観ての感想なんですよ。
過大評価でしょうかねえ?
では、また。
トム(Tom5k)
2011年11月28日 22:50
>芥川賞作家なのか
すいません。
かれ、とってませんでしたね。こちらも候補者でした。
オカピー
2011年11月29日 17:29
トムさん、こんにちは。

ご存知の通り現代文学は殆ど読まず、村上春樹もチャンドラーの翻訳ものと「海辺のカフカ」しか読んでいないので、小説については何とも言えないのですが、やはり純文学ではないですか?
戦後くらいから純文学と大衆小説の境目が徐々に曖昧になって、中間小説などという言葉も生まれたくらいで、敢えて言えば中間小説なのですかね。

監督もカメラマンもウェットな感覚な人なので、どうしてもこういう感覚になるのは解ります。彼らが作り出すムードは僕は気に入ったのですが、癖のある台詞がちょっと気になりましたね。僕らより10歳くらい上のあの時代のインテリはああいう感じの言葉を発したのかもしれませんけど、最近1970年前後に作られた現代劇を余り観ていないので、どうなのかな。

>6点
内容的にピンと来たとは言えないので(笑)。
もう一回観れば変わるかもしれませんけど、当座は観ないだろうな(笑)。

演技が酷評された水原奇子はタイプです^^

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