映画評「ぼくのエリ 200歳の少女」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年スウェーデン映画 監督トーマス・アルフレッドソン
ネタバレあり

ホラー映画は観ないと宣言したばかりだが、紹介記事を読む限りさほど残虐場面はなさそうなので観ることにした。

お話は初老の男が逆さ吊りにした男から血を集めようとしているらしいところから始まる。そして、いじめられっ子のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)がある夜隣に越して来てばかりの少女エリ(リーナ・レアンデション)と知り合う。彼と同じ12歳という。彼女からいじめっ子に仕返しをしなとけしかけられ遂に実行した彼は、町で起きた殺人事件が彼女の父親らしき男の犯行であり、彼女が吸血鬼であることを知ってしまう。
 彼女は逮捕された庇護者たる男の血を吸って最期を見送り、孤独であることで通じ合う二人は互いのピンチに助け合い、最後は列車で旅立っていく。

手を変え品を変え吸血鬼映画は大量に作られているが、これほど静謐な吸血鬼ものは大昔のサイレント映画を別にすると見たことがない。北欧の寒々とした空気が生み出すところがある一方で、庇護者たる者が彼女が直接人間を襲わないように協力している(と僕は解釈している)という設定が生み出す静謐さである。

だから「小さな恋のメロディ」のようなほのぼのとした幕切れでも、エリが加齢していかないことを考えると、庇護者としてのオスカーはやがて加齢して映画の初めの状態に戻っていくと考えられるわけで、非常に切ない感情が湧き上がってくる。北欧らしくはったりのない秀作。

でも、吸血鬼はもう結構という気分もあるです。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年10月24日 07:25
日本には、萩尾望都さんの『ポーの一族』という名作漫画があります。ゴシックとエロチズムが合わさった静艶なる吸血鬼の話です。
アメリカの吸血鬼のように騒々しく下品なのはくたびれますですね。
オカピー
2011年10月24日 15:54
ねこのひげさん、こんにちは。

吸血鬼映画が今もこれほど作られているのは、ゾンビ映画の隆盛と無縁ではないはずです。思うに本来のゾンビと違って今のゾンビは吸血鬼映画の要素を取り込んでいるわけですからね。
しかし、ゾンビ系列よりはさすがに少ないものの、吸血鬼映画も多いですね。
ハリウッドが昨今作る吸血鬼映画は、オリジナルのルールをどんどん破っている為に何でもありになって却ってつまらなくなりましたね。ゾンビものもルールがめちゃくちゃになってきています。
シュエット
2011年11月07日 16:25
本当に北欧らしい秀作ですね。
ハリウッドリメイク「モールス」の方は、見ていない。
不必要に感情と言葉が入れすぎてるような気がして…これも偏見かな?
オカピー
2011年11月08日 10:11
シュエットさん、こんにちは。

ハリウッド(アメリカ映画)は昔から理に落ちてしまう傾向にあるので、オリジナルに比べて含蓄がなくてつまらなくなるのは否定できない現実ですよね。
「モールス」というのが実際どうなのか解りませんが、オリジナルが作られてこんなに短いスパンでリメイクをする神経が僕には理解できないなあ。
2012年06月24日 13:58
こんにちは。
本日の「モールス」記事で気づきまして
オリジナルのこちらの方へお寄りしました。
映画はみなそうですが特にこの手のものでは
雰囲気醸成の良否がかなりものをいいますね~
(リメイク作はWOWOWで観せてもらいましたが
特に感想を書く気持ちは起こりませんでした。)

トーマス・アルフレッドソン監督新作
「裏切りのサーカス」。
個人的に、舞い上がって大絶賛しております。
WOWOW放映を楽しみに待って下さいませね。(^ ^)

ところで、当方へのTB・コメントなのですがご面倒
でしょうし、きっとお忙しくてお忘れになったと
私理解しておりますところの以前の「RED」や「アンチ・
クライスト」などのように、これからは
TBのみで結構なんでございますよ~ほんとうに。
お話は、貴宅で充分させていただいていますし。


オカピー
2012年06月24日 21:45
vivajijiさん、こんにちは。

リメイクの「モールス」もアメリカ・オリジナルならもう少し持ち上げたんですが、優秀なこちらを先に観ているものだし、ちょっとした改変が余り気に入りませんで・・・。

>「裏切りのサーカス」
タイトルが実に面白そうな期待を持たせてくれますね。
最近の北欧は当たりが多いですし、WOWOWでは来年でしょうが、楽しみにしております^^

>TB・コメント
ちょっと父親の具合が思わしくなく、一方でどうなるか解らないという中途半端な状態につき病院に出かけることが多いので、映画を一本観て批評一本を書くともう一日が終ってしまいます。その合間に少々本など読んだりしています。
コメント返しもなるべくしたいと思いますが、実際微妙なところです。

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