映画評「チェイサー」(1978年フランス版)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1978年フランス映画 監督ジョルジュ・ロートネル
ネタバレあり

WOWOWが変な特集を幾つも組んでいる為今月は不作で、先般NHK-BSが放映したアラン・ドロンの主演作品をぼつぼつ見直している。NHKには60年代のドロンの作品も是非お願いしたいくらい。

実業家ドロンが、友人の代議士モーリス・ロネから汚職がらみで脅迫してきたベテランの代議士を殺してしまったのでアリバイ証言に協力してほしいと頼まれるが、彼の証言を殺害現場に陣取っていた警部ジャン・ブイーズらは信用しない。
 その後ロネや彼の妻ステファーヌ・オードランらが相次いで殺されたことから殺人の容疑者となったものの、政治家の汚職を網羅したブラックリストの発見を第一に考える警部により殺人課より釈放されたドロンは文書を狙う輩が繰り出す様々なピンチを乗り越えて、ロネの愛人オルネッラ・ムーティから文書を手に入れ、ロネの部分を除いて写真に撮り、一部をマスコミに渡す。彼は残る文書を金銭的に利用しようとするフィクサー、クラウス・キンスキーの頼みも断ってロネ夫妻を殺した真犯人を発見して復讐するのに躍起になり、独自の調査を続ける。

30年ぶりくらいだから殆ど内容を失念していたが、“追われながらの犯人探し”に近い形式のスリラーとして、記憶にある以上にサスペンスフルに出来上がっていてなかなか楽しめた。
 コンピューターによる映像や編集とどんでん返しや時系列操作に頼りすぎて肝心の中身が空疎になり、カット割りもつまらなくなった現在の作品群に埋もれているから余計にそう感じるのかもしれない。特に、オルネラと彼を追う二人組を電話を使ってまく一幕などなかなかハラハラさせられる。

二回ほどあるカー・アクションもCG台頭以前の映画らしく派手過ぎず、却って素直にヒヤヒヤできる。

オルネッラのアップに1940年代の作品のように強めのソフト・フォーカスを掛けたのがあったのには驚いたが、彼女は上手く使われている。が、当時ドロンの恋人だったミレーユ・ダルクは実生活をオーヴァーラップさせる為の色添え的出演でつまらない。クラウス・キンスキーは出番は少ないながら迫力満点。

ドロン・ファンとしては、ロネと撮影監督アンリ・ドカエの「太陽がいっぱい」トリオが久しぶりに復活した点も嬉しい。

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この記事へのコメント

2011年08月24日 21:33
オカピーさん、こんばんは。
たてつづけてのドロン作品評、嬉しい限りです。
用心棒さんには、同じロートネル監督の「愛人関係」の記事アップを依頼しているところでして、たいへん楽しみです。

さて、この作品、ドロンの言によるとオールスターキャストで、それぞれの位置でそれぞれのスターが重要なポジションにいる、と当時のスクリーン誌か何かで読んだ記憶があります。
当時は、自分が主役を張っていながら、オールスターキャストは無いだろう???と、さすがに首をかしげていましたが、ドロンらしい発言でもあり、確かに「男の規範」をシンボライズしたヒーローを機軸にそれぞれの逸話が成立し、テーマ・ストーリーが時制ごとに展開していく構成となっております。
ドロンは、高級ホテル(グランド・ホテル)であり、高層ビル(タワーリングインフェルノ)であり、航空旅客機(エアポートシリーズ)であり、豪華客船(ポセイドン・アドベンチャー)であり、高級自動車(黄色いロールスロイス)であり、聖書(フランス式十戒)であったのでしょう。
そういう意味でわたしは、この作品には、オムニバスの天才、ジュリアン・デュヴィヴィエを思い浮かべてしまいますよ。ドロンも意識してたんじゃないかな?

では、また。
ねこのひげ
2011年08月25日 08:55
最近の作品はCG多用でド派手にしすぎの感がありますね。
自動車が崖下に落ちて爆発するのに、まるで1トン爆弾でも積んでいたのではないかのような爆発を見るとはなじらみます。
その点、渡辺健さんの『上海』は、むかしのハードボイルド作品のようで面白いですよ。
派手さがないので、いまの若い人には、不評のようですが・・・・大戦前夜の魔都シャンハイで起きる各国諜報員や軍人入り乱れての抗争劇。
上映時間も短くてよろしいかと。
オカピー
2011年08月26日 17:16
トムさん、こんばんは。

毎度の手抜き記事ですみません。
「太陽がいっぱい」なんかもっと精密に書くべき作品ですが、非常に曖昧な全体論を書いただけでここまで来ております。
新しい映画が余りにつまらないものばかりなので(vivajijiさんには最近採点が甘いのでは?と鋭く突っ込まれています。その通りなんです)、DVDやブルーレイ(場合によってはVHS)に録りためた旧作でも観て、四月から五月にかけて大いに痛み未だに治りきっていない心を癒そうと思っていますが、まだ新作鑑賞の日々は暫く続くのでしょう。

それはともかく、「チェイサー」は以前見たのは学生時代ですが、その時のイメージよりサスペンス映画として面白かったですね。
世間的な言い方をすれば、フランス映画伝統のゆったりとムードに流すタイプではなく、ハリウッド映画に近い作り方で、この時代のドロンの映画としては比較的万人向けだったような印象もありますが、如何でしょう?

>オールスター・キャスト
ふーむ、ミレーユ・ダルクを除けば良い配役だったかな。尤も彼女も適材適所と言えば、それ以上はないところです(笑)けど、サスペンス映画としてはなくても問題なかったです。

>テーマ・ストーリーが時制ごとに展開
そう言われればそうなのかな。最近結構うっかり見ていることが多いもんで。
トムさんがご指摘していた音楽についても、ああスタン・ゲッツだったのか、てなもんですよ。お恥ずかしい次第。

>オムニバス
そう言えば「黄色いロールスロイス」も監督は違いますが、リレー式のオムニバスでした。もう40年も前に見ただけで、内容はすっかり忘れちまいましたねえ。
オカピー
2011年08月26日 17:22
ねこのひげさん、こんにちは。

SFX時代、アクションの基本はスタントでしょ?
実際に俳優がやっているかどうかではなくて、人間が実際にやっているのが大事。
それを本人がやっているように上手く誤魔化すのがSFX。スタントは立派なSFXですよ。
本人であろうとスタントであろうと、実際に人間がやっていると思えばこそ、映画の内容に加えて手に汗を握ることになります。
いくらCGで派手にしようが、コンピューターで誤魔化されているのでは、見かけ倒しですよねえ。そこに気付いていない若い人が多い。錯覚は錯覚で悪いことではないですけど、僕はCGとカメラスピードで誤魔化した最近のアクションは好きでないです。

>『上海』
地味で大いに結構です^^
2011年12月20日 01:10
オカピーさん、こんばんは。
勝手にこちらのドロン記事一覧に直リンさせてもらっちゃってます。
お許しください。
用心棒さんに、無理な記事アップを引き受けていただき、それを参考にして、記事をアップした際に、
「愛人関係」が、いかに地味で関心を持たれない作品かの例示にオカピーさんのブログをリンクさせていただいてしまいました。
お気に召さない内容でしたら、削除いたしますので遠慮無く申し出てくださいませ。
では、では。また。
オカピー
2011年12月20日 19:04
トムさん、こんばんは。

お気遣いなく、どうぞご自由にお使いください^^
「愛人関係」は大昔に一度観てその時の感想は残っていますが、何しろ若輩ものの書いたもので、とても再利用できるものではありません。
余り面白かった記憶もないので、お金を払ってまで観る気にもなれないのも確かでして。
NHKでもWOWOWでもやってくれたら見ますけど、可能性は極めて低いですねえ。
蟷螂の斧
2016年08月27日 11:40
猪俣勝人先生の親戚である田山力哉氏の著作「ヨーロッパ・ニューシネマ名作全史」に、この作品の事が載っています。
「最近のドロン映画では、いい方ではないだろうか」と書いてあります。

>カー・アクションもCG台頭以前の映画らしく派手過ぎず、却って素直にヒヤヒヤできる。

それは当たっていますCGはアニメみたいなものですから。

>>「第二の双葉十三郎」
>金メダルは無理でも、参加くらいはできるかなあ^^;

銅メダルは如何でしょうか?

>>猪俣氏の「世界映画名作全史」特に戦前編
>これらはどうあがいても見られないものが殆どと思います。

今朝TSUTAYAで、あれこれ探しましたが、そのようです・・・
オカピー
2016年08月28日 10:46
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「最近のドロン映画では、いい方ではないだろうか」
当時僕もそう思いましたね。
ドロンの栄光もこの辺りまででしたが。

>銅メダル
も遠いですがねえ。有り難いお言葉です。
書く気の起こらない作品ばかりですが、これを励みに頑張ります。

>TSUTAYA
昔はNHK-BSが頑張っていて、ここでかなりの貴重品を観ましたが、最近はダラシナイですよ。
物凄く古く著作権の引っかからない作品の中には、Youtubeで観られるものがあります。しかし、英語はともかく、他の言語では理解もままならないので、果たして観たことになるか。
蟷螂の斧
2016年08月31日 20:56
>ドロンの栄光もこの辺りまででしたが。

この映画でどんな場合も「彼だけがはいつも奇跡的にカスリ傷も負っておらず」。
それが却って退屈だと田山氏が書いていますその通りです。

>物凄く古く著作権の引っかからない作品の中には、Youtubeで観られるもの

それより後の時代。1950年代・60年代のショーン・コネリー出演作品でもそうです。
でも和訳がないと無理ですね・・・。
オカピー
2016年09月02日 17:12
蟷螂の斧さん、こんにちは。

昨日レスしたつもりが、できていませんでしたTT

>却って退屈
1960年代以前の西部劇も大方そんな感じで、評論家はさすがにそれを批判していましたが、この時代ともなると、観客もリアリズムを求め始めたので、そういう意見が一般的でしょうね。

>著作権
一般的に1960年代の映画は著作権が切れていないわけですが、たまに著作権のない作品がありまして、何とかの名作「シャレード」がそう。だから、かなり前からワン・コインで買えました。

>和訳
そういう意味では、サイレントは映画本体の字幕が英語なので、何とかなりやすいですよね。
聞いて理解するのは、翻訳を仕事としていた僕でも、そう簡単ではないです。まして昨今の俗語交じりの訛った英語では。
蟷螂の斧
2016年09月03日 20:10
>翻訳を仕事としていた僕

そうだったんですか素晴らしいです
翻訳も他の人の訳に似てはいけないし、大変だと言う話を聞いた事があります。

>名作「シャレード」

著作権がないんですね。ワン・コインで買えるのを逆に不満に思う映画ファンもいるそうです。「あの作品は、そんなに安っぽくないぞ!」と言う感じで。

>ドロン映画

僕が見て出来が良いと思ったのは「さらば友よ」「ボルサリーノ」「シシリアン」かな?
オカピー
2016年09月04日 13:34
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>翻訳
半ば創作と同じですよ。
小説であれば、お話の設定やらを考える必要がないのが楽なだけで、なかなか難しいものです。
余程ご本体が難解なものでない限り、すらすら読めるのが良い訳と思いますね。

>ワン・コイン
その心情もわかりますけど、貧乏人には有り難いですよね。
目玉が飛び出るくらい高いビデオを何本も買った昔が懐かしいです。
現在はソフトを買わず、WOWOWかNHKのノーカット放送をハイビジョンで保存しております。

>ドロン映画
ご多分にもれず「太陽がいっぱい」「冒険者たち」を愛する当方ですが、挙げられた三本も素敵な作品。「シシリアン」はその中でも渋い。
「シシリアン」と「さらば友よ」は英仏語版が夫々あり、台詞のある場面は二回ずつ撮って作られたようですね。ドロンの英語は吹き替えですが、フランス語を吹き替えたのではなく、英語台詞を英米人がアテレコしたということになるようです。
蟷螂の斧
2016年09月08日 18:43
>英仏語版が夫々あり、台詞のある場面は二回ずつ撮って作られた

教えて下さってありがとうございました
役者さん達にお疲れ様・・・と言う感想です

>余程ご本体が難解なものでない限り、すらすら読めるのが良い訳と思いますね。

無学の僕なんぞがわかったような事を言ってはいけませんが、「罪と罰」や「赤と黒」は訳す人によって随分違うと言う話を聞いた事があります。
実際どうなのでしょうか?
オカピー
2016年09月08日 22:43
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>英仏語版
暇があったら、両バージョンを見比べてみたいと思いますね。
この情報を最初に教えてくれたトムさんは、やっているのかな?

>訳す人によって随分違う
違いますね。
日本で色々な方が訳されているシェークスピアなど、元が同じ文章とは思えないケースが結構あります。
句点を日本語として滑らかになるようにオリジナルと変える人もいますし、オリジナルに忠実な人もいます。句点が違うと印象が随分変わりますよ。どちらが良いか微妙なのですが、現在の僕の心境は句点を変えても読みやすいほうが良いと思います。
蟷螂の斧
2016年09月10日 05:43
>「冒険者たち」

まだ未見です・・・いつかは!

>句点を変えても読みやすいほうが良い

本格的ですね恐れ入りました。

>翻訳

「女王陛下の007」の冒頭。格闘が終わってテーマ音楽が始まる前にボンド(ジョージ・レーゼンビー)が「This Never Happen To The Other Fellows」。
1980年代後半にビデオソフトでみんなで見ていたら「変わった女だ。」
「本当にこんな事を言ってるのかなあ・・・?」
「和訳にも著作権があるかなねえ。他の和訳とそっくりでもまずいし。」
先輩同士の会話を思い出します
オカピー
2016年09月10日 20:35
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「冒険者たち」
今となっては古いかもしれませんけれど、何度見ても痺れますなあ。

>This Never Happen To The Other Fellows・・・「変わった女だ。」
面白いですね。映画の訳は、小説と違って、随時意訳が要求されますからねえ。こういう変化球も多い。

>著作権
勿論和訳にも著作権がありますが、同じ作品内においては再利用しても問題にならないと思いますね。リスペクトと理解されると言いますか。何度も翻訳された小説などを読みますと、後書きで翻訳者が「先輩諸氏の翻訳を参考させて戴いた。有難うございました」と仰るケースによく遭遇します。
蟷螂の斧
2016年09月11日 19:04
>同じ作品内においては再利用しても問題にならない

なるほど。勉強になります。

>「先輩諸氏の翻訳を参考させて戴いた。有難うございました」

謙虚で良い言葉です

>「猿の惑星」

お馴染みの日本語版では船長(チャールトン・ヘストン)と他の乗組員二人が「タメ口」で会話する。
ところがソフト版では二人が船長に敬語を使う。それもまた新鮮味があって良かったです

>当時ドロンの恋人だったミレーユ・ダルク

1970年代。映画雑誌「ロードショー」や「スクリーン」によくグラビアが載っていました。
きれいな人ですね。
オカピー
2016年09月11日 20:41
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「猿の惑星」
英語ではsirをつけると、訳者は大概丁寧語・尊敬語にしますけれど、いつもsirを言うわけではないので、訳者のセンスの差が出ますね。
字幕の場合は字数制限があるので、丁寧語・尊敬語を音数が少ない普通の言い方に留める場合も多いですよね。

>ミレーユ・ダルク
僕のタイプではなかったですが。
当方は、ドロンの前妻ナタリー・ドロンのほうが好みだったのです。
蟷螂の斧
2016年09月12日 21:09
>ドロンの前妻ナタリー・ドロン

「もう一度愛して」を思い出します
そしてふと思い出しました。ドロンの愛人と言われたニコール・カルファン

>字幕の場合は字数制限があるので、丁寧語・尊敬語を音数が少ない普通の言い方に留める場合も多い

なるほど
そして、当時の字幕は今とは違いました。例えば「日」と言う字を書く時は、どこが隙間を作らなければならなかった。

他にも書きたい事がありますが、月曜日の立ち上がり・激務でもうダウンです・・・
オカピーさん、いつもレスをありがとうございます
オカピー
2016年09月13日 19:05
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「もう一度愛して」
ドロン氏が神父になるコメディーでしたね。

>ニコール・カルファン
久々に名前を聞きました。
若い人、ご存じないでしょ^^

>字幕
昔はフィルムに直接ガリガリやっていましたからねえ。
たまに修正箇所が解る時がありましたよねえ。読みにくいんだ、これが。
明るい画面では白い字幕がこれまた・・・

「プラトーン」で初めてパソコン字体を経験、「読みやすいなあ」と思ったのを思い出します。
しかし、あの作品では画面の下だったので、前の人の頭が邪魔して「読みやすいけど、読みにくかった」という記憶があります。
蟷螂の斧
2019年12月23日 06:06
おはようございます。

「ビッグ・ガン」の記事で僕は

>1977年「チェイサー」は「ドロンが無傷のまま。ちょっと格好つけすぎ」と別の評論家が書いていました。

と書きました。
そして昨日「アラン・ドロンのゾロ」を初めて見ました。
ゾロが滅茶苦茶強すぎるスーパーマンなんですが、剣戟映画だからまあいいかと楽しんで見ました。

>加藤剛

昭和54年のドラマ「陽はまた昇る」。現在日本映画専門チャンネルで放映されています。誠実な外科医役です。

>>伊達三郎
>本当に悪役としてよく見ました。

「大魔神」では意外に良い方の役でした。
オカピー
2019年12月23日 21:37
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>そして昨日「アラン・ドロンのゾロ」を初めて見ました。
今日アップしましたので、よろしければどうぞ。
僕は二回目ですが、四十何年か前に観た時よりずっと楽しめました。
理由は本文にて。

>昭和54年のドラマ「陽はまた昇る」。
ドラマは見ていませんが、多分このドラマの主題歌であろう谷村新司の「陽はまた昇る」が僕は「昴」より好きですね。

>「大魔神」では意外に良い方の役でした。
そうだったかもしれません。

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