映画評「必死の逃亡者」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1955年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー
ネタバレあり

ウィリアム・ワイラーの傑作サスペンス。3度目の鑑賞と思う。マイケル・チミノが35年後にリメイクした「逃亡者」より数段面白いので、未見の方は是非ご鑑賞あれ。

脱獄したハンフリー・ボガート、デューウィ・マーティン、ロバート・ミドルトンの三人組が、中流階級の家に押し入り、ボガートの愛人から逃走費を手に入れるまで居座ると宣言する。家の持ち主はフレドリック・マーチで、妻マーサ・スコット、年頃の娘メアリー・マーフィー、小学生の息子がいる。
 ボガートはなかなか冷静沈着で、小さな自転車を発見したからこの家を選んだと言う。子供のいる家族は無理をしないと踏んだのである。

4メートルくらいの高さの俯瞰気味のカメラ(撮影リー・ガームズ)が家を捉え、何気なく横たわっている自転車をフレームに入れるタイトルバックの映像から誠に鮮やか。周囲から不審に思われるのを嫌ったボガートが妻以外の人物を普段通りに行動させることから、構成が非常に緩急のあるものになり、それをワイラーが自由自在に操り、最終的に強力なサスペンスが醸成され続ける。

ボガートそして警察の計算違いは彼の愛人が交通違反を犯してその場から逃走したことで、そのせいで一味は彼女からお金が届くまで日延べする羽目に陥る。その間に廃品回収業者、娘の恋人ギグ・ヤング、息子の担当教師が次々と訪れ、三人組をヒヤヒヤさせるが、こちらは彼らによりどうお話が進むかドキドキしながら観ることになる。

待つのを嫌がって家を出たマーティンが警官に発見されて殺され、マーチが匿名で書いた手紙が官憲に届いたことから、お話は急展開、ピストルや手紙といった小道具が上手く活用された終盤は正にサスペンス構成のお手本と言いたい出来映えである。特に序盤から繰り出されるピストルの扱いは後の映画で定石となるものも含まれる。ワイラーらしく階段もよく出て来るが、大活躍というほどではない。

戦前はギャング映画の傍役だったボガートがスターダムに乗った後正にその時代に戻ったかのような役柄を受けたのが役者の心境として興味深い。

今の映画の標準から言えば満点でも良いですな。

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この記事へのコメント

2011年08月01日 12:21
これは、WOWWOWで放送されたのですかな?
ご贔屓ワイラーの大好きなサスペンスです。
確か、実話を元にした舞台劇が元にあった作品ですね。
ミドルトンが、ご用聞きか何かを、拳銃で撃つシーンがあったと思うんですが、冷静に事を成す姿に薄気味悪さを覚えたような・・・。

リメイクもチミノの作品だったので、VHSのレンタルで観たと思うんですが、さっぱり覚えていません。
オカピー
2011年08月01日 20:53
十瑠さん、こんばんは。

そうであります^^)ゝ

>舞台劇
元は小説ですが、作者本人が舞台化及び脚色しているようですね。

>ミドルトン
That's right!
ご用聞きは即ち僕の書いた廃品回収業者ですが、小切手を受け取ってトラックに乗って走りだしたところを、肥満体形のミドルトンが乗り込むのですが、荷台から助手席に乗り込む際の素早さ! とてもあの体型からは想像できない運動能力でした(@_@;)
結局飛び降りた業者をミドルトンが冷静に撃つ・・・という流れですね。

>リメイク
右に同じく、僕も全く憶えておりませんです。
IMDbに投じた自分の採点を確認したら☆☆★(5点)でした。基本的に忘れてしまう点ですなあ(笑)
ねこのひげ
2011年08月02日 06:31
後の映画監督たちはこの作品をみなおすべきかと
ジョディー・フォスターの『パニック・ルーム』の三人組は同じ性格付けでいまいちで。三人三様だから面白いと思うんですけどね。
ハンフリー・ボガートの作品では『俺たちは天使じゃない』『サハラ戦車隊』『脱出』なんかが好きです。
『カサブランカ』はちょっとかっこつけすぎの感が・・・・
オカピー
2011年08月02日 21:31
ねこのひげさん、こんばんは。

>『パニック・ルーム』
なるほどなるほど。
挫折ものの定石的な終り方だけはクラシックで、ちょっと嬉しかった(笑)ですが。

>『俺たちは天使じゃない』
こちらは喜劇ですが、やはり脱獄囚三人組でしたよね。しかも同じ年に作られている^^

>『カサブランカ』
世間で言われるほどは評価していない作品ですが、実は一昨日観まして、最近の映画文法、映像言語がデタラメの作品ばかり観ているせいか、なかなかのものだとは思わされましたなあ。
格好付け過ぎでも、あれには男も惚れます(笑)
4,5日したらブログに出ますので、その時はまたヨロシク<(_ _)>
十瑠
2014年01月30日 21:35
好きな映画だったのでコメントしていたですね。
なかなかレンタルにもなかったのに、ブックオフで見つけて数十年ぶりの再会でした。
昔の吹き替え版のほぼ記憶どおり。CMのカットも何処だったか分からないくらいでした。

小説から戯曲、映画の脚本と何度も練られた本は、伏線もばっちりなら、無駄なシーンもなくて見事でしたね。

殆ど出演者の紹介に終わっていますが、MY記事TBしました。
オカピー
2014年01月31日 11:25
十瑠さん、こんにちは。

>吹き替え版・・・伏線
多分中学か高校の時、一緒に観ていた姉が何か指摘したことに「理解力あるなあ」と感心させられたことがあるのを憶えています。その時僕には解らなかったんですね。しかし、それが何だったのか全く忘却の彼方なんですが(笑)

ワイラーらしくタイトな展開で、画面もワイラーと撮影監督リー・ガームズのコンビネーションよろしく揺るぎがなかったですね。

ワイラーの映画を観ると、終わった後スキッとします。本当に良い監督だと思います。しかし、誰もワイラーのような監督になりたいとは言いません。
 そこで思い出すのは、7、8年前に日本における「ローマの休日」の著作権裁判で事実上ワイラーに著作権なし(ワンコイン・ビデオの販売有効)という判決。
 黒澤明やチャップリンの裁判では死後50年経たぬ限り無断利用できぬ、と判断された判決とは対照的で、映画作家としてのワイラーへの評価を考えると悔しいんですが、利用者としては有難いと言うべきなのか複雑な心境です。

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    Excerpt: (1955/ウィリアム・ワイラー製作・監督/フレデリック・マーチ、ハンフリー・ボガート、マーサ・スコット、アーサー・ケネディ、ロバート・ミドルトン、メアリー・マーフィ、デューイ・マーティン、ギグ・ヤン.. Weblog: テアトル十瑠 racked: 2014-01-30 21:15