映画評「ヒーローショー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・井筒和幸
ネタバレあり

30年前島田伸介と松本竜介を起用した「ガキ帝国」で一躍有名監督になった井筒和幸は相変わらず若者の暴力に関心があるようで、長編映画としては「パッチギ! LOVE&PEACE」以来となる本作でも凄まじい暴力が観られる。

売れない漫才師・福徳秀介が前にコンビを組んでいた桜木涼介に誘われて子供向けのヒーローショーのバイトを始めるが、桜木の恋人を同僚の松永隼が寝取ったことから本番中に喧嘩沙汰になる。のされた形の桜木はチンピラの友人に援護を頼み、ここからお話は報復が報復を呼ぶ殺人事件に発展する。

というお話で、弱気な福徳は仲間を生き埋めにするなど強引に巻き込まれ、離婚女性と関係を持つ相手側の元自衛隊員で現在は配管の仕事をしている後藤淳平に引き回されるうちに二人の間に社会の底辺で暮らす者同士の共感めいたものが生まれて来る。

若者の暴力がテーマと言っても「ガキ帝国」や「パッチギ!」にはどこかフィクションめき良い意味で人工的な感じがあって後味の良さに繋がったような気がするが、本編では女性との幸福を漠然と考えている後藤がひどく痛めつけられ、芸人を続けるのを諦めたらしい福徳が故郷に帰って両親の手伝いを始めるところで終わる。
 観客には前者は死んだかどうか判然とせず(ドラマツルギー的には死なないと締まらない)、後者の心境は解るようでよく解らない。この半端さを現実的と解釈すべきかどうか僕には断言できないが、結果的に不愉快な後味しか残さないのである。

本作はリアリティに拘っているところが見受けられる反面、監督が思うほどリアリティのある作品とも思えない。不愉快な残滓だけが印象付けられる。プロの映画とはいかに上手に嘘を本当らしく見せるかで評価されるべきと僕は思っているが、その意味で井筒監督の出世作「ガキ帝国」ほうがずっと上等と言いたい。

なかなか好演している福徳と後藤は漫才師らしい。その点では「ガキ帝国」以上に上手く演出しているとは思う。

ユメもチボウ(キボウ)もないです。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年06月20日 04:16
井筒さんは、映画より毒舌解説のほうが好きだな。(笑
なんて言ったら、わめく井筒監督の顔が目に浮かびますが・・・・
映画を観ないで評論したりするので評判は悪いですが、関西人らしい無責任さというべきか・・・ですが、的を射てないこともない。
オカピー
2011年06月20日 10:11
ねこのひげさん、こんにちは。

色々評判は聞いているのですが、番組は観たことないです。
東京新聞で「『七人の侍』はラストの台詞が余分だ」と仰っていて、それ自体は全くその通りと思いつつ、それで作品を全否定をしてしまう極端なところが、ちょっと気に入りませんでしたね(笑)。

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