映画評「コララインとボタンの魔女」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ヘンリー・セリック
ネタバレあり

英国のSF/ファンタジー作家ニール・ゲーマンが児童小説をアニメ作家のヘンリー・セリックが映画化したストップモーション・アニメ。

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新しい街に引っ越して来たばかりの少女コララインが、150年前に作られた家の中にレンガで封鎖されている小さなドアを発見する。このドアは夜になると穴があき、そこを通り抜けると、全く同じ家に辿り着き、自分のことを殆ど構ってくれない忙しい両親とは違う面倒見の良い両親に遭遇する。この両親の本物と違うところは目がボタンで出来ていることだ。本来の世界と往来を繰り返すうちにこちらの住人になっても良いと思うが、目をボタンと取り換えなければならないと聞いて躊躇すると、ボタンの母親は魔女の正体を現して襲いかかり、辛うじて元の世界に戻ると両親は向うの世界に連れて行かれた為、親しくなった黒猫の協力の下魔女に反撃を始める。

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大方感じているはずなのに指摘している人は案外少ないが、ゲーマンは「千と千尋の神隠し」(2001年)に本作の着想を得ているようで、新しく引っ越して来た町ですぐ近くにある異界に紛れ込み、両親を連れ戻すという構図は細かなギミックを換骨奪胎して作った印象がある。“キャロライン”と“コラライン”のアナグラムは“千”と“千尋”の関係を、黒猫は「魔女の宅急便」のジジをそれぞれ想起させる。「もののけ姫」の英語版脚本を書いた経験を持つゲーマンは宮崎駿をかなり研究しているのだろう。念の為に発表の年を調べてみたら、この原作は2002年の発表となっているので、その影響関係は間違いないところ。

しかし、このレベルであれば影響や学習と言うべきものであり、勿論僕はそれを問題にする気はない。もしこの程度の拝借が認められないのなら、僕らは未だに原始時代の音楽を聞いていなければならないだろう。そもそも「千と千尋の神隠し」も「不思議の国のアリス」をベースにしている。

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本作の問題点は、そこではなく、“安易に(甘言につられ)甘い夢を見てはいけない”という、お話を通して見えて来るメッセージが、直接話法的でないが故に気にならない人が多いと思うものの意外と説教臭いことである。宮崎アニメが実は大人向けなのに対し、見た目通り児童向けなのでしょう。「千と千尋の神隠し」も説教臭くないとは言い切れないが、一言で簡単にまとめられる教訓になっていないような気がしてはいるのだ。

「キャロラインとコララインの神隠し」でした。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年03月07日 07:20
アメリカなどのアニメが発達しなかったのは、アニメが子供のものという概念から抜け出せなかったことでしょうね。
アニメや漫画を子供教育の道具と思っているんでしょう。
20年ぐらい前のテレビ番組などで、外人が出てくると「いい年をした大人が電車のなかで漫画雑誌を広げて読んでいるのが信じられない!」とバカにしたように言っているのを盛んに取り上げてましたけど、いまやそれが世界でクールジャパンとか言われるようになってますね。
日本のアニメや小説は実写や小説より優れたのもありますからね。
オカピー
2011年03月07日 17:08
ねこのひげさん、こちらにもコメント有難うございます。

きちんと僕の記事の主旨を読み取って戴けましたね。

日本人は、自国の作品が勝手に使われることに腹を立てる潔癖症な方が多いですが、「アトランティス/失われた帝国」のように極度に悪質な場合を除けば、我が国の作品を外国人が取り上げてくれたことをその優秀性を認めてくれたと素直に喜ぶべきと思いますよ。それを作者が認めているかどうかなんて関係ないです。
同時に、日本人が外国文化から色々取り込んだことを忘れて貰っても困ります。日活アクションなんて凄いことになっていますから(笑)
2011年05月03日 23:29
こんばんは。
私は単に少女の冒険ものふうに見ていたので、説教臭は、してこなかったのです。
絵柄の独特な面白さも楽しかったです。
オカピー
2011年05月04日 18:43
ボーさん、こんばんは。

僕は1980年代くらいからアメリカのアニメ(当時は殆どディズニーしかなかったけど)は説教臭いと思ってきたので、余計感じるのでしょうね。
ディズニーほど露骨ではない為、そう悪い印象ではなかったです。

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