映画評「やじきた道中 てれすこ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・平山秀幸
ネタバレあり

落語に詳しい方ならピンと来るタイトルなのであろうが、僕には何のことかさっぱりだった。「やじきた」で時代劇コメディーであることは凡そ想像が付く。

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それはさておき、平山秀幸は現役の日本人監督の中で数少ないご贔屓監督の一人。しかし、責任は殆ど脚本の安倍照雄にあるとは言え、これは余り誉められない。

足抜けしたい花魁お喜乃(小泉今日子)が新粉細工職人の弥次さん(中村勘三郎)に頼んで偽物の指を二十も作って貰ってご贔屓客に送って費用を捻出しようとするが、待ち切れずに故郷の父親が危篤と嘘を付いて弥二さんと一緒に抜け出そうとした時「仮名手本忠臣蔵」で大失態を演じたのを恥じて縊死しようとする弥次さんの旧友・喜多さん(柄本明)を目撃、かくして三人での珍道中が始まる。

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というお話で、「東海道中膝栗毛」から弥次さんと喜多さんというキャラクターを借り、「てれすこ」など幾つかの古典落語の挿話を織り込んで構成されている模様だが、挿話の独立性が高すぎてぶつ切り的な展開は一応気になる。
 何故「一応」なのかと言えば、お話の流れでがっちり見せるタイプの作品ではないからである。ぶつ切り的だから出来が悪いと決めつけるのは杓子定規にすぎる。とは言うものの、挿話の総和(シャレではないですぞ)から何かを抽出したり昇華させたりするタイプでもないので、各挿話が終るたびに一々ブレーキを踏んでいるような感じでは、面白くなるものも面白くならない。

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その主因は挿話の芳しからぬ処理である。例えば、落語「狸賽(たぬさい)」から借用した部分では、子狸が針で刺されて正体がばれてしまったはずなのに一行が何もなかったように賭場から出て来るのは釈然とせず、これでは観客は拍子抜けする。或いは、弥次さんに怪魚“てれすこ”を食べさせる店の女将の思わせぶりな態度は作者の一人合点の印象が強く、彼が死んだ妻子と遭遇する幻想場面とスムーズに繋がらない。こうしたところをきちんとすれば、もっと鮮やかに人情の機微を表現することが出来たのではないかと思う。

落語がベースだけに【落ち】が欲しかった、と言ってみる。

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  • やじきた道中 てれすこ/中村勘三郎

    Excerpt: 「東海道中膝栗毛」の弥次さん、喜多さん珍道中物語に落語の「てれすこ」をミックスした人情喜劇です。ほのぼのと笑えるのはやっぱり邦画だよねぇということで、時代劇も久々だし ... Weblog: カノンな日々 racked: 2011-01-27 22:31
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