映画評「火天の城」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・田中光敏
ネタバレあり

安土城建設秘話を扱う山本兼一の同名小説を田中光敏が映画化した時代劇。

天正四(1576)年、尾張・熱田の宮番匠(宮大工)岡部又右衛門(西田敏行)が、織田信長(椎名桔平)より安土城の建設を命じられるが、後日撤回されて指図(設計図)により名だたるライバルたちと争う羽目になる。又右衛門は巨大な吹き抜けを作るという注文を無視してプレゼンを行なった為に信長に激怒されるものの、吹き抜けが火災の時に大弱点になるという指摘が聞き入れられて結局総棟梁になる。

ここが最初の見せ場である。

やがて心柱となるべき大檜を求めて敵陣の中にある飛騨に向かい、杣師(緒形直人)と密約を結んで、大雨の降るまで檜が届くのを待つことになる。
 その檜から作った心柱を立てる場面は美術とCGを合体させて大したスペクタクルになっていて、昔観たハリウッド・スペクタクル「ピラミッド」(1955年)を思い出した。

しかし、続く大岩をめぐるシークエンスはかなりおかしな具合になっている。突然降って湧いたように信長暗殺に絡む活劇的場面が繰り広げられるのである。
 ここで大量の死人が出た為に棟梁が作事を休むことにした後やがて関係者が集まって一致団結するハイライトへの布石となっているのではあるが、布石にするなら信長暗殺未遂事件でなく事故で十分である。そのほうが地道に市井ムードで綴って来たお話のトーンが乱れず、ぐっと印象が良くなる。そこで展開する山本太郎と水野美紀のエピソードは不要。

結局本作の女性陣で真に登場する意味があるのは又右衛門の“糟糠の妻”たる大竹しのぶのみで、娘の福田沙紀すら作劇上積極的な意味がなくドラマ進行の邪魔になっている。

皆の衆が一致協力するに至る経緯もくすぐったい、といった具合に後半日本映画の悪い癖が次々と出てきて前半の好印象が吹き飛んでしまうが、素材の面白さを買って上記の星を進呈致します。

演技陣では、大竹しのぶが圧巻。

努力の結晶も数年の後に燃え尽きると思うとしんみりとしてしまいます。

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この記事へのコメント

2011年01月25日 00:24
こんにちは。
普段ならこういうベタな歴史劇はぼろくそにけなすのですが、この作品に関しては美術監督に敬意を捧げてしまった私でありました(笑)。
ねこのひげ
2011年01月25日 05:18
小説のほうでも、信長暗殺未遂とか、山本太郎と水野美紀の話は出てくるのですが、話が作り物めいてくるのでいらんなと思いました。
大工の棟梁たちの努力の話だけに集約して欲しかったですね。
よく調べて集めたものだと感心しました。
オカピー
2011年01月25日 20:32
kimion20002000さん、こんばんは。

>ぼろくそ
今までの評価傾向を観ると、意外な感じを受けましたが、映画には色々な要素があるので、作劇や演技がダメでもその他の要素で感動することもままありますものね。
この作品の美術は良かったですね。CG全盛時代に美術で勝負する映画は良いものです。
オカピー
2011年01月25日 21:56
ねこのひげさん、こんばんは。

>小説のほうでも
そうですか。
小説ではトーンの乱れというのは余り気にならないかもしれませんが、映画の場合は一目瞭然ですから、やはり信長暗殺未遂とそれに続く愁嘆場は要らないと思わざるを得ませんよね。

>努力の話だけに集約
そのほうが面白くなったはずなんですけどね。
あんな場面を用意してもしなくても観客動員数は変わるとも思えないのに勿体ない^^

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